断腸亭料理日記2005
6月19日(日)第一食
さて、久方ぶりであろうか、
池波正太郎レシピである。
鬼平犯科帳(十七)特別長篇 鬼火 で、ある。
長谷川平蔵の母の実家。
巣鴨村の大百姓・三沢仙右衛門(平蔵の従兄弟でもある。)に
教えられた、駒込・富士前町の富士浅間神社の鳥居そばの
「権兵衛酒屋」、である。
江戸の地図
昨日が、田端で、今日が駒込、で、ある。
駒込もこの界隈は、今は、六義園などもあり、
ちょっとよい感じの住宅街、あるいは文字通り、文京地区と、
いってよかろう。
この「権兵衛酒屋」と、いうのは、本来は名前のない居酒屋であるが、
名前がないので、名無しの権兵衛、と、いうことで、ある。
「酒は五合まで肴(さかな)は有合わせ一品のみ」と、
いう大きな木札が掛けてある。
そこで、出てきたのが
『その一品は蒟蒻(こんにゃく)であった。
短冊に切った蒟蒻を空炒(からいり)にし、油揚げの千切りを加え、
豆腐をすりつぶしたもので和えたものが小鉢に盛られ、運ばれてきた。
白胡麻の香りもする。』
鬼平犯科帳(十七)特別長篇 鬼火 池波正太郎著 文春文庫
これ、去年も作っている。
この時は、豆腐の田楽を作った余りで、白和えになったわけだが、
豆腐一丁もあると、大量にできてしまう。
豆腐は、ちょっとよい、半丁のものを買う。
蒟蒻は一枚。油揚げは二枚
ほうれんそう、も用意。
蒟蒻と油揚げは、横に半分に切り、さらに、幅5mmほどの短冊にし、
沸騰した湯で、軽く湯通し。(灰汁(あく)抜きと、油抜き。)
蒟蒻と、油揚げを酒としょうゆ、砂糖で炒り煮にするのだが、
間違えてしまった。
先の、池波先生の文章の通りにしなくてはならなかった。
どうしたのかと、いうと、こんにゃくと、油揚げを同時に入れて
炒り煮にしていたのであった。
蒟蒻の方が味が染みるのが、圧倒的に遅い。
油揚げは簡単に味が付く。
同時に入れると、油揚げはくたくたに煮えても
蒟蒻には、なかなか味が付かない、ということに、
なってしまったのである。
先生も書かれている通り、
この料理のポイントは、まず、蒟蒻であった。
余人(よじん)ではない。池波先生が、白和え、と書かずに、
書き出しが、蒟蒻、である。
つまり、まず甘辛の濃い味の蒟蒻が中心にあり、次に、油揚げが来て、
そこに、豆腐がからめられ、最後に、白胡麻の香りがする。
先生のイメージは、蒟蒻の料理なのである。
実は、筆者自身も、これは理解していた、、、。
しかし、どうしたわけか、たいして考えもせず、一緒に入れてしまった。
悔やまれる。
さて、豆腐も湯通し。
裏ごし。西京味噌を味を見ながら入れていく。
こちらは、味は、少し薄め。
今日は、ちょっと、ズルをして、白胡麻はペースト(実は芝麻醤)を使用。
胡麻ペーストは、さほどの量はいらない。小匙二杯程度か。
ほうれん草を堅く茹で、すぐに冷水に晒し、
ペーパータオルで、よく水を取る。
合わせる。
ミテクレは、まあまあ、であろう。
味は?。
やはり、こんにゃくの味が、もっと濃くてもよいし、
油揚げの食感も、もっとほしかった、、、。
全体としては、胡麻の香りもよく、まあまあ。
よしとしよう。
朝から、こんなものを作ると、もう、呑むしかない。
ビール。
ともあれ、うまかった。
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