断腸亭料理日記

菜飯(なめし)

5月3日(日)夜食
さて、休み中である。
この休み、基本的には、東京を離れぬ。

ふと、思い立ち、厨房に立つ。

菜飯である。
菜飯とは、きざんだ菜っ葉(通常は大根)を、
混ぜ込んだ飯(めし)のことである。

鬼平犯科帳などにも登場する。
菜飯田楽といい、豆腐の田楽(豆腐に八丁味噌を付けて焼いたもの)
と組み合わされることの多いものであった。
鬼平では下谷坂本(現、北上野付近)の奥州街道沿いに
「菜飯田楽を出す、気の置けない、飯屋」など、として登場する。

豆腐の田楽も、落語「味噌倉」などにも登場し、
江戸でも、一般的な食物であったのであろうか。

しかし、今、一般的には、どちらも、滅んでしまったメニュー。
(名古屋や、愛知県三河地方では残存しているが、
実のところ、筆者も、豆腐の田楽など、あまり食指をそそられるもの、ではない。)

しかし、菜飯である。

作る。
大根の葉は、今回は、よく洗い、細かく刻む。
それも、1mm以下の微塵切りである。
これに、塩をもみ込み、生のまま、白ごま、とともに、炊き立ての飯に混ぜ込む。

この、微塵切りで、生のまま、が肝要である。
以前には、5mm〜1cmに切ってみたこともあるが、これではいかにも
繊維が強(こわ)く、野暮ったく、「大根の葉」の存在感が強い。
また、この場合は当然、茹でる必要があろう。

食べる。
これは、うまい

微塵切りのため、繊維の強さもない。
また大根の葉の香りとともに、、ほんのり、大根の辛みも
感じられる。
白ごま、も欠かせない。

なぜか、春っぽい。

呑んだ、仕上げ、にはもってこい、である。

大根の葉の利用法は、様々にあるが、
この、菜飯は、最もうまい料理法ではないかと思う。
この、うまさが、なぜ、忘れられてしまったのであろうか。
 

 ホーム | 日記リスト4 | NEXT |BACK