断腸亭料理日記

神田須田町・あんこう鍋「いせ源」

3月20日(土)夕
地下鉄を乗り継ぎ、神田へ。

かねてより、計画していた、あんこう鍋である。
毎シーズン、一度は食べている。

桜も咲こうという頃。今が最後。
(店自体は4月まではあんこう鍋をやっている。)

ちょうどいい具合、というのも変だが、今日は冷たい雨が降っている。

妻とは店で待ち合わせ。

この界隈は神田藪など老舗も多い。
店は天保元年創業、150年になるという。
構えはさほど大きくはない。
格子戸を明けて入ると下足番のおじさんがいる。

「寒いですね。今日はお酒がおいしいですよ。」
ここは菊正宗である。

下足札を受け取り、黒光りのする梯子段(はしごだん)を上り二階の座敷へ。
個室ではなく、畳敷きに、ちゃぶ台が並べられた
いわゆる「入れ込み」という形式である。

近年、若干改築をしたが、古い作りの部屋も残っている。
窓のガラス戸は明治から大正といったたたずまい。
朱塗りのしっかりした窓枠にくもりガラス。

座るまもなく、鍋が運ばれる。
鍋はあんこうの身、ゼラチン質の皮、あんきも(一人前に一切れ)
野菜はうど、三つ葉、椎茸、銀杏、しらたき、など。
味付けはしょうゆベースの甘辛。例の割下味である。
(以前に書いた「軍鶏鍋」もそうだが江戸・東京の味付けである。)

今日、気が付いたが、しらたきに柚の風味がつけてある。
細かい、仕事、といったところか。

ビールから酒に代え、食べ進む。

1人前を追加する。

仕上げはおじや。
割下、出汁を足し、飯を入れ、たまご。

2人で飲んで食って\18,000は決して安くない。

やはり季節の風物詩である。

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