かねてより、計画していた、あんこう鍋である。
毎シーズン、一度は食べている。
桜も咲こうという頃。今が最後。
(店自体は4月まではあんこう鍋をやっている。)
ちょうどいい具合、というのも変だが、今日は冷たい雨が降っている。
妻とは店で待ち合わせ。
この界隈は神田藪など老舗も多い。
店は天保元年創業、150年になるという。
構えはさほど大きくはない。
格子戸を明けて入ると下足番のおじさんがいる。
「寒いですね。今日はお酒がおいしいですよ。」
ここは菊正宗である。
下足札を受け取り、黒光りのする梯子段(はしごだん)を上り二階の座敷へ。
個室ではなく、畳敷きに、ちゃぶ台が並べられた
いわゆる「入れ込み」という形式である。
近年、若干改築をしたが、古い作りの部屋も残っている。
窓のガラス戸は明治から大正といったたたずまい。
朱塗りのしっかりした窓枠にくもりガラス。
座るまもなく、鍋が運ばれる。
鍋はあんこうの身、ゼラチン質の皮、あんきも(一人前に一切れ)
野菜はうど、三つ葉、椎茸、銀杏、しらたき、など。
味付けはしょうゆベースの甘辛。例の割下味である。
(以前に書いた「軍鶏鍋」もそうだが江戸・東京の味付けである。)
今日、気が付いたが、しらたきに柚の風味がつけてある。
細かい、仕事、といったところか。
ビールから酒に代え、食べ進む。
1人前を追加する。
仕上げはおじや。
割下、出汁を足し、飯を入れ、たまご。
2人で飲んで食って\18,000は決して安くない。
やはり季節の風物詩である。