断腸亭料理日記2025
4764号
我が国の今の東京一極集中の原因について書いていた。
戦後の国策であると。
お隣の韓国は国が小さく、人口も少ない。国内マーケットだけでは
どうしても大幅な発展は得られない。それで、例えば、コンテンツ産業
その他、海外へ出るということを補助金を出し国策として行っている。
BTSの世界での成功は偶然ではない。韓国国策、大成功なのである。
日本の場合は、人口、マーケットも全国合わせれば韓国よりも多少大きい。
まずは、日本全国を一つのマーケットにし、国内で食えるようにしようと
焼け跡で考えたわけである。
これは、一説には吉田茂の片腕と呼ばれた、かの白洲次郎の仕事という。
彼は、戦後すぐ占領終了後の現経産省の前身商工省の外局の貿易庁の
長官になっているがここで、商工省を改組し、通商産業省にする
ことに関わっているというが、この時の彼の考えとも。
ともあれ、これは日本の戦後の成長を見れば、成功したといって
よろしかろう。
だが、これが、当然といえば当然だが、地方の空洞化という副作用を
産んでしまったわけである。
国もこれを認識し、一時期、首都機能移転も叫ばれたが、文化庁が
京都に移転した程度で立ち消え状態。
ちょっと考えたのだが、各地域のアイデンティティーが今も強力な
イタリアはおそらくこういうことをしてこなかったのであろう。
発想すらなかったかもしれない。
前にみたように、戦後まもなく、アグリツーリズムなど地域文化
を守る運動が始まっているわけである。
こんな制度もある。
イタリアにはDOP、デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・
プロテッタ/Denominazione di Origine Protetta、原産地名称保護
制度というのがある。地域の伝統的製法に基づいて作られている製品
ブランドを認証、保護するというもの。ただこれは、イタリアに
限ったことではなく、EUとして定められているもの。
ご存知のフランスシャンパーニュ地方で作られたスパークリング
ワインだけがシャンパンと名乗れる、といったものである。
(フランスだとこの制度、AOC、アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ/
Appellation d'OrigineControlee、というよう。)
実は、これ、地域のアイデンティティーということだけでも
ないようなのである。
歴史的にみると、ヨーロッパでは、それこそ16世紀のフランス、
ロックフォールチーズから始まっている運動、制度のようで、
かなり古い。
(ウィキ:欧州連合における地理的表示および伝統的特産品の保護)
イタリアに限らず古くから地域ブランドがあり、それは守られる
べきものであるという考え方自体が、伝統になってきたといってよさそう。
この背景には、他地域の産品との競争があったからであろう。
日本では、GI(giografical indication/地理的表示)制度と言っているが、
遅ればせながら、2015年にスタートしている。(農水省)
この違いはなんであろうか。
日本でも、思い返せば、昔から、産地ブランドというのは
ちゃんとあった。いわゆる本場物(ほんばもの)、というやつである。
さつまいもは川越、酒は灘の生一本、紀州のみかん、、、。
まあ、古くから産地ブランドはたくさんあって、皆に認知され、
また、信頼の証(あかし)でもあった。どこどこの物なら安心だ、と。
日本でこれを保護すべきものという動きになってこなかったのは
なぜであろうか。基本、日本は国内マーケットのみで、競合が
あっても産地ブランドは明確で、特に守ってもらわなくとも
皆が知っており、問題にならなかったからではなかろうか。
和歌山紀州みかんと箱に書いてあれば、愛媛の農家が真似をすれば
すぐにわかるし、真似しようとする者もなかった?。
これに対して、欧州は範囲が広く、競合が他国などにまたがっており、
いろんなことをする者が出てくる。どうしても必要なことだった
のではなかろうか。
つまり、当初は欧州はマーケットを守る意味が強かったよう。
ただ、もちろん地域のアイデンティティーを守る意味も当然同時に
持っていったと思われる。
今、農水省は食肉なども含めて農産物の海外輸出を奨励しているが
これも、GI制度の一つの意味合いになっているのであろう。
少し前から、日本の農畜産物が海外で広まるのはよいが、黒毛和牛、
りんご、いちごなどの果物その他、日本で品種改良したものが、
種や苗木、和牛など無断で持ち出され既に定着しているものもあるよう。
イタリアで見た、りんごのふじ、柿はなどはどうなのであろうか。
こういったものを抑える意味もある。
ただ、随分と遅かった。はっきりいって、あまりにぼんやりして
いたといえよう、農水省。長い長い鎖国状態?。
さて。ここまでみてきた東京一極集中、地方の空洞化、どうしたら
いいのであろうか。
国策で東京一極集中をしたなら国策で戻せばいいじゃないか、と。
それで、首都機能移転であったわけだが、首都機能移転も実際の
ところピンとこない。東京にあった方がやはり便利で効率はよい
のは自明である。だから成功しなかった。
TVの東京集中をやめる。このSNS時代に、今さらTVでもないか。
ただ、これも地方の動画配信などのバックアップは強力に進める
べきではなかろうか。国策として。
国内なのか、海外への展開なのか、というのもある。
国内マーケットを一つにして成功したことをやめる必要はない。
では、海外に出ればよいのではいか。韓国のように。
海外はわかりやすい。それも東京経由ではなく、地方がダイレクトに
海外へ出ていく。この取り組みに注力している動きも多数ある。
農畜産物など第一次産品も然りだが、日本酒、国産ワイン、さらに
南部鉄器など伝統工芸品もあるとも聞く。
実際に事例も増えており、成功もしてきているようにみえるが
どんなものか。。
伝統文化から生まれた製品には国際競争力はあり、また、農畜産物の
品種改良の技術とそれを細かい栽培技術で良質なものを実らせる
技術には、我が国は特筆すべきものがある。
この取り組みも一つ。
ただ、これも、国はどのくらい支援しているのであろうか。
韓国レベルに、国策として強力に推し進めすべきではなかろうか。
BTSのように世界制覇を目指す!程度に。
国策として、東京一極集中したのだから。
今も継続して、地方にあるものはまだよいのだが、うちには
なにもない、というところもあろう。これも問題。
忘れられた地方の伝統文化、産物、産品の掘り起こし。やはり
地道なことしかないか。
やはり、売り込む種がなければ始まらぬ。
産品と切り離せないが、地域のアイデンティティーそのものは、
どうであろうか。イタリアの各地域がずっと持ち続けてきた。
もちろん、みてきたように我が国の地方にもあったはずである。
例えば、旧藩にまつわるようなもの?。
わかりやすいところなら、地域の偉人。忘れられているがこんな
すごい人、偉い人がいた、男女問わず。
各地域、事情は様々であろうが、なにかきっと地域の哲学の
ようなことがあったところもあるのではなかろうか。年嵩の人は
まだ憶えているが、若い人に引き継がれていないようなこと。
つづく
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