断腸亭料理日記2025
4764号
引き続き、我が国の地方の独自性について考えているが、
どうも雲行きが怪しい。東京一極集中も然りだが、
それ以上に地方の東京化、逆に東京への地方の流入も
進んでいる。もう日本中均一化していくのでは、とも
思えてくる。さて、どんなものか。
次は、言葉、方言。
これも、例えば、青森など東北、鹿児島など南九州などなど、
以前は、他の地域の者は、聞いてもまったくわからなかった。
今は、80以上のお年寄りでなければわかる言葉になっている。
逆の例もある。地方の言葉が、東京に定着していること。
私などは多少苦々しくも思っているが、関西弁由来の言葉が、
若い人中心に東京で普通に使われていること。
私達の世代でも子供の頃使うと親におこられたが「カッコイイ」
「どまんなか」。これは随分前の関西弁の東京への流入。
(そうである、関西弁を使うと親におこられたのである!。
○○じゃん、も然り。これは中部、東海方言で横浜からの
流入といわれる。)
格好がよいのカッコイイだが、江戸東京だと、様子がよい、と
いっていた。どまんなか、ではなく、まんまん中が東京弁。
ど根性など、ド○○は皆関西弁である。
「メッチャ」はもうかなりの東京の人々で使われており、もはや
標準語。国立国語研究所のサイトによれば、
驚いたが「なんでやねん」「おとん」「おかん」なども広がって
いるよう。
これらはやはり、吉本興業など大阪芸人の東京進出が大きい
のであろう。
これ以外にも、○○させていただく。これはやはりアイドルなどが
よく使っており、若い人に広まっている。正しい謙譲語ではある。
関西人はよく使ってきたが、よほどのことがなければ東京では
使っていなかった。東京で使えば、へりくだりすぎ、むしろ無礼な
印象になっていたと思う。
油揚げをお揚げ、出汁をお出汁、などなど、これも違和感が強い。
多く女性が丁寧な表現として使うが、これは京都の女房言葉由来で
女性でも東京では使っていなかった。また、私はとても気になるが、
酒のつまみを、アテ、ということ。関西由来で、東京では聞いた
こともなかった。今でも聞きたくない。
イントネーションもある。
二月、四月。ニガツ、シガツだが、元来の標準語では“ガ”に
アクセントがくる。しかし、今、TVなどでは、さすがに
アナウンサーは使わないようだが、関東出身の声優、タレントなど
話す仕事の人でも、CMなどでも聞くが、頭の、ニ、シにアクセントを
付けて喋る。これ、とても気になる。なにか流行のようにもみえ、
もはやこれも標準語になりつつあるか。(これは必ずしも関西
だけでなく、東北?など、広い地域で元々使われていたか。)
やっぱり、地方の東京流入、言葉もキリがないのでもうやめよう。
もちろん、この逆。東京の言葉、標準語(?)が地方に流入、、
まあ方言が薄まる、方言が消滅に向かうということも進んでいる
といえるのであろう。最初に書いたが、まったくわからなった
津軽の言葉が世代交代によって次第に薄まっていくのは確実。
ただ、地域によって凸凹はあろうが。
これら皆、TVの影響といってよいだろう。
次に、地方の食べ物が東京に流入していること。
先に書いたように、讃岐うどんが普通に東京で食べられる。
まあ、これらは、東京の食べ物がなくなり、地方の物に
置き換わっているのではなく、全国のうまいものが、東京で
食べられるという、東京の飲食店のバリエーションが
増えているととらえるべきのものであろう。
ただ、置き換わっている例もたくさんある。お好み焼き。以前の
東京のお好み焼きは、もっとぺちゃっとしていた。まあ、たいして
うまくもない。これが今は大阪のチェーンなども進出し、ふんわり
厚いものになってきた。これは明らかに置き換わっているが、
うまい方に置き換わっているので淘汰といってよいだろう。
過去を振り返ってみても、関西からの流入で淘汰された例はある。
大正期から昭和初期に、関西の料理人が東京に流入し、関西割烹
料理が広まり、江戸甘味噌とともに江戸由来の料亭料理が、
滅んでいる。これも、関西割烹料理の方がうまかったから。
こと料理に関しては江戸・東京は京都、大阪など関西に比べて
劣っていた。東京、関東は赤土、関東ローム層でうまい野菜が
できなかった。これが一つ。もう一つ、うまみの少ない野菜を
補う格好になっているが、うまみの濃い濃口しょうゆが関東で
生まれたこと。この二つが江戸・東京の割烹料理が進歩しなかった
理由と考えられている。
また、毎度書いているが、おでんもそう。濃口しょうゆで
真っ黒く煮〆るのが、東京のおでんであったと思われるが、
これはほぼ消滅し、今は澄んだ関西風の出汁の煮込みに完全に
置き換わっている。
これら地域の文化という視点で考えると、一見よいものへの淘汰と
見えても、うまいかどうかは、個人の感じ方であり、私は、例えば
おでんは、濃い味の方がうまいと思うが、これも伝統的な地域
文化が消滅し他地域の文化に置き換わっている例と考えてよい
だろう。
大方、東京と、関西の違いを書いてきてしまった。
東京と関西は人も多く、影響力も強いので、変化が激しい
という側面はあろう。
東京関西以外の地域で、地域の文化がちゃんと継承されて
いることも少なからずあろう。ただ、みてきたように、
大筋では、全国均一化の方向に向かっていることは間違い
なかろう。
ではなぜ、東京一極集中に向かったのか。
これはある程度定説といってよいと思うが、国策として
戦後、東京一極集中を進めたから。
国の省庁は東京にあるが、例えば、各産業の業界団体の
本部のようなものは、官庁に合わせて東京にある。
官庁はそういう指導をし、その方が企業側も便利でもあるから。
関西発祥の企業で大阪に本社があったところも、上場会社は
東京本社を作ったり、本社を東京に完全に移しているところが
ほとんど。
また、これも大きいが、TV業界。民放はいわゆる在京キー局
などというが、地方局が傘下にありグループ化している。
そして、編成権というようだが、どういう番組を流すかを決める
権限は、在京キー局のみが持っている。だが、これ、あまり
表立って言われることがほぼないが、ある一定以上の割合を、
東京のキー局で制作しなくてはいけないようなのである。
実際に地方局で、地方局製作の番組は視ていてもわずかで
あるのは、皆さん経験的にご存知であろう。これは明文化
されている規定なのか、国の業界指導の範囲なのかは
わからないのだが。(おそらくNHKも東京製作の割合が
民放同様であろう。)
このあたりのこと、堺屋太一氏が2004年に首都機能移転問題で
国会で参考人として話している。
それで、芸能人が全国的人気を得るには、東京進出しなければ
だめ。吉本の大阪芸人はなんとしても東京進出を目指さなければ
ならないのである。
吉本芸人の関西弁が東京やおそらく全国に広まっているのも
ある意味、東京一極集中の産物といってよろしかろう。
ではなぜ、国は戦後、こんな政策を行ったのか。
戦後、焼け跡になった日本の経済発展のため、という。
日本を一つのマーケットとしたかったのである。
各地方毎に違うマーケットだと、国内の消費でもバラバラに
なってしまう。
つづく
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