断腸亭料理日記2025

断腸亭イタリアへ行く その25 ミラノ8

4754号

引き続き、ミラノ。
ガッレリアのミシュラン一つ星の[Cracco]/クラッコ。

牡蠣、鱒、ときて、パン。

パン、前回、最後の部分、内儀(かみ)さんの指摘で、ちょっと
誤りがあったのが判明した。訂正もしたのでちょっと合わせて読んで
いただきたいのだが。ただのパンではなくて、具が入っていた
のである。

切ったところを撮っておけば忘れなかったのだ。
この中に、具としてロンバルディア名物、ブラスキット、サイコロ角
に切った牛肉の煮込みが入っていたのである。まあ、具入りパン。
ポレンタと合わせて食べるものをパンの中に入れて、そのパンには
ポレンタの素である挽いたコーンをまぶしている。
(と、いうことで、具の味は、赤ワイン系のはずだが記憶は定かでは
ない、、。)ともあれ、このパン、ブラスキットとポレンタの
シェフ流アレンジということになろう。

さて、次は、これ。

crispy nori seaweed,mortadella and horseradish

パリパリ海苔、モルタデッラ、ホースラディッシュ。

モルダレッダというのは、いわゆるボローニャソーセージで
よいよう。ボローニャソーセージはお分かりであろうか。
日本ではそういえば最近あまり見なくなったかもしれぬ。
ちょっとサラミにも似ているかもしれぬ、ソフトなハム。
つまり、上に載っている薄く細かく切ったピンクのものが、それ。

その下に、ちょっとアスパラのように見えるが、日本の海苔を
細長く巻いて天ぷらのように薄衣を付けて揚げてある?。それで
パリパリ?。そして、白いソース。
なぜ日本の海苔なのかは、おいて置いて、不思議な組み合わせだが
サラダのような感じ。

そういえば、こちらで本場のボローニャソーセージというのは、
意識して食べていない。ボローニャ県は北部に入るようだが
距離的にはむしろ中部のフィレンツェに近い。

ボローニャソーセージ。どうなのであろうか、わりにマイルドと
いうのか、こうして細かく切ってあるとなおさらふんわり、
ソフトな印象。
内儀(かみ)さんが、なんか、日本のプレスハムみたい、と
つぶやいていたが、それは言っちゃだめでしょ、と。
そうなのである、プレスハムとはいわぬが、なんとなく弱い印象。

白いソースはこってり系で、マヨネーズ、サワークリームに味は
近いと思うのだが、酸味は強くない。私にはわからないが、なにか
名前のあるソース(ラーファノ・ソース?。ラファーノはイタリア語で
ホースラディッシュのことのよう)かもしれぬ。
ソースにホースラディッシュは刻んで入っている感じか。
辛みは強くはない。
ヴェネチアなど北東部ではホースラディッシュは作られている
ようで、ホースラディッシュの入った白いソースと生ハムを
合わせるのが定番のよう。

全体として、うまいし、まとまっている、食感もおもしろい。
こってり系のちょい辛ソースとふんわりハムと揚げた海苔の
組み合わせ。

日本人なので、日本の素材を使ってもらったのは、有り難いが、
やっぱり、海苔の使い方が、多少気になる。

イタリア人からすると海苔を使うこと自体が珍しく、新鮮
なのかと思う。また、日本人からすれば、なるほど、こういう
使い方もあるのか、と。だがまあ日本人の料理人ならイタリアンの
シェフでもこれはしないのではなかろうか。
海苔のうまさ、よさは、特に新海苔の、さわやかな強い香り。
(高価で季節限定だが、新海苔の干瓢巻など、最高である。)
揚げると海苔の香りは弱まる。
まあ、合わぬとは言わぬがもう少し他の合わせがあるのでは、
と思ってしまう。

さて、次。

“Trippa alla milanese”and giger

というのがメニュー上の名前。
ミラノ風トリッパと生姜、か。

これ、パスタ、で、ある。

トマトベースで柔らかく煮こんだトリッパに、パスタは
短くて細いショートパスタ。生姜が入っているようだが、
これはよくわからない。トリッパも上品に小さく切られている。
かなりこってりで、うまい。

Trippa alla milanese、トリッパ・アラ・ミラネーゼも
その名の通り、やっぱりミラノの名物料理のよう。
特に冬、らしい。
イタリア語ではbusecca/ブセッカといって、豆類が入るのが
決まりのようで、野菜との煮込み。
生姜とあえて挙げているので、普通は入れるものではない
のであろう。シェフのオリジナルなのであろうが、やはり、
元を知らないと、これまたなんのことやら、で、ある。

そして、肉料理。

細長い棒一本。
これまた、なんじゃこれ、な、一品。
見た目が、ユニーク。

Braised oxtail,cumin and coriander

訳すと、牛テールの煮込み、クミンとコリアンダー
コリアンダーはもちろんパクチー、香菜。

特に違和感もなく、うまかったと思う。
写真ではテールの肉でなにかを巻いているようなのだが
なんであったか、思い出せない。
柔らかく煮てから薄く切ったのか、あるいは逆か、
わからぬが、ともかくもシート状の柔らかい牛テールを
筒状に巻いている。

日本では今はあたり前になったパクチーもクミンも意外に
イタリアンやフレンチ、欧州人は、伝統的にも、今でも
あまり使わないものかもしれぬ。そういう意味で、
ここでは、やはり斬新な一品になるのであろう。
あ、そうである。(これもなにかミラノ料理のアレンジ、
かと、ちょいと考えると、実はこの日の翌日食べている
後述するが、オッソブーコ/Osso buco、というミラノ名物の
牛の煮込み料理が前提にあるのかもしれぬ。)

以上ここまでで、料理は終了。

流石、というべきか、デザートは、席が変わる。
隣のバーカウンターのある小さめの部屋に案内される。
ソファー席、で、ある。

灰皿もあって、聞くと、喫煙可のよう。
流石ヨーロッパ(?)。

ウェイティングにも使っているようで、この時刻からディナー
という、いかにもミラノで働いているらしいお洒落な大人の
男女が談笑していたりする。
そう、一応、私は上着を着てきたが、ここ、ジャケット、
ネクタイ、ドレス、といったドレスコードはないよう。
それこそデニムを履いている人もいる。ミラノのファッション
関係だったり、の人々はこんな感じなのかもしれぬ。

 

つづく

 

Cracco

 

 

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