断腸亭料理日記2024

浅草弁天山美家古寿司 その2

4588号

引き続き、浅草[弁天山美家古寿司]。

つまみ二品、にぎり、平目昆布〆、すみいか、
鯛、しまあじ、まで。

次は、光物。

小肌、から。

四本の飾り包丁。

小肌というのは、うまいものである。

おそらく、江戸前のにぎりの中で、最もうまいし、
江戸前にぎり鮨をらしいにぎりと考える。
これを粋という。

小肌(鮗・このしろ)というのは鰊(にしん)の類だが、
東北南部が北限のようで、比較的温かい内湾、汽水域に
いる。東京湾にも今でもいるようだが、流通はしていない
のか。

光物だが、皮をむかずに〆て、にぎる。
皮のグラデーション模様の姿も美しい。

小肌の酢〆ならなんでもうまいのかといえば、
やはり〆具合も大切。半生もいけないが酸っぱすぎても
いけない。また、魚も身の薄い小型のものでなければ
いけない。

なにがうまいのか。これはなかなか文字にするのが
難しい。小肌の酢〆の味としかいいようがない。

さて、次の光物はこれ。

鯵。
格子に飾り包丁。
見た目、生のようだが、やっぱり〆てある。
今時、鯵を〆るのは時代錯誤、とも思われる
かもしれぬ。鮮度のよい生のものがいくらでも
手に入るし、東京のほとんどの鮨やが生をにぎって
いるだろう。
生もうまいが、こうして軽く〆たものも別のもの
として、うまい、のである。
これはこれで、あり。
一度食べていただきたい。現代でも鯵を〆る意味は
十分にある。

そして、海老。

さいまき海老。もちろん、おぼろをはさんでいる。

江戸前仕事は、ただゆでた海老、ではない。
それとわかる程度の味の甘酢に漬けてある。
ゆでたままだと水分が抜けてパサパサになる。
甘酢に漬けると、ぷりぷりのまま。

おぼろをにぎりにはさむのは酢のものだから。
従って、小肌などにもはさんでよいのである。

そして、次はこれ。

蒸しあわび。あるいは、鮑の塩蒸しともいう。
これは初夏から夏、今のもの。これは食べるべき。
蒸し、といっているが、実際には塩で柔らかく煮ている。
これを滋味、という。

引き続き、貝。

平貝。薄く切るのが、ノーマルなのか。
厚いのが好きだったのだが、最近、薄いのも
よいように感じるようになってきたのが不思議。

次は、これ。

蝦蛄と、とり貝。
とり貝は内儀(かみ)さんの希望。
蝦蛄もあまり食べていなかったが、最近うまさを発見した。
ここの蝦蛄はゆでただけではない。出汁に漬けてある。
これがうまいのだが、昔からの江戸前仕事、なので
あろうか。あまり、他の店でも食べてこなかったので
わからないのだが。

そろそろ終盤。

まぐろヅケ。

それも、中とろ。
いつもあるわけではないが、ノーマルな赤身
よりも、中とろの方がうまかろう。
いや、別のうまさ、といってよいか。
赤身は赤身で、なにもしないものに、まったく違う
あまみが加わる。これはこれで、捨てがたい。

そして、内儀さんの、

玉子とおぼろ。

以前、玉子がまだ貴重品であった頃、明治中頃あたりまで
かと思うが、鶏卵だけでなく嵩(かさ)増しに海老や
白身のすり身などを入れて焼いたもの。
今となっては、こちらの方が手間とコストがかかる
わけだが。
味としては、伊達巻に近いかもしれぬ。
ここはこのタイプだが、カステラタイプというのか
ふかふかで厚いものを焼くところもある。

そして、最後は巻物。

海苔巻といえば、かんぴょう巻。

それも、私はわさび入り。
ずっとこれを食べているが、うまいもんである。
濃い甘辛のかんぴょうにわさびは合う。
不思議なもの、で、ある。

以上ここまで。

いつも通り、うまかった。
ご馳走様でした。

勘定は二人で26,730円也。

 


弁天山美家古寿司

台東区浅草2-1-16
03-3844-0034

 

 

 

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