断腸亭料理日記

神田 藪蕎麦

11月7日(日)
今日は、たまっていた買い物である。

浅草橋で、定期券。
秋葉原でLANカード。(これは妻。)

少し、小腹が減った。
なにか食べよう。

ここでは「じゃんがら」、という、てもあるが、今日は、そばにしよう。

神田須田町界隈。
いわずと知れた「まつや」と「神田 藪」、である。

久しぶりに歩くと、なにか、博物館に来たような感覚になる。

残念ながら、「まつや」は休み。
「藪」にする。

「神田 藪」は、数ある、「藪蕎麦」の暖簾のなかでも、元祖の流れに最も近い、という。

料亭風のたたずまい。
昨日の、「尾花」同様、門を入って、玉砂利のある、庭を通り、玄関へ。

日曜の夕方、並ぶほどのこともなく、座れる。

車のため、酒はやめる。
だいぶ寒くなってきた。鴨南蛮の季節である。

隣のテーブルで、志ん生師匠のような、和服を着た爺さんが呑みながら、
そばをすすっている。

この店の、調理場へ注文を通す、声は、有名である。

「13番さん、鴨南二杯」(ニハ〜イ〜)と、節を付ける。

昔は、どの店でも、このような、節を付けていたのだろうか?

落語「居酒屋」(先代 三遊亭金馬)でも、

客が入っていくと、小僧が
「いらっしましぃ〜〜〜。」
と、間抜けな声を出す。

「鴨南」がとどく。
大きく切って、煮込んだねぎ、と鴨肉。
鴨の脂が出た、汁。
これからの季節には、ぴったりである。

ここは、汁そばでも、蕎麦湯が出る。(浅草 並木藪も同様)

妻がこれを、見て、驚いていたが、
また、落語を思い出した。

先の「志ん生師匠」の「付き馬」の枕である。

自分が若い頃、吉原へ行ったときの話として語るが、

金もなく、飯も食わずに、腹を空かせて吉原へ。
馴染みの女郎に、頼み込んで、上がる。

と、その、女郎が、ラーメン(支那そば)をとってくれる。
「ありがてぇ」と思っていると、
たまたま、通りかかった、同僚の女郎に、
『あ、俺の支那そば、、、』と思いながら
食べられてしまう。

と、志ん生は
「その、(汁の入った)どんぶり、貸してくれ」
「なにするの?」
「お湯入れて、飲むんだから、、」

と、いう一こまである。
(文章で書いても、この、おかしさは伝わらないと思うが、、
飄々とした、志ん生の語り口は、とてもおかしく、聞かせる。)

ま、いずれにしても、
麺類は濃い目の汁で、薄めて飲む、習慣があったようで、ある。

昨日の、「尾花」、今日の「神田 藪」と、下町老舗シリーズになってしまった。
こんな世界が、筆者の、落ち着ける、ところである。

※平均点  2.500      合計 32人

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