断腸亭料理日記2006
9月17日(日)第二食
さて、日曜日。
第一食は、ざるそば。乾麺である。
先日の、浅草千束の路麺、ねぎどん、での生卵まぶしのざるそば、
その池波原典は、大蒜(にんにく)うどん、で、あった。
つゆにそのまま、おろしたにんにくを、少し入れるだけであるが、
なるほど、これも、なかなか、うまかった。
さて、第二食。
今日はステーキを、食おう、と、考えた。
ステーキというのも、ときに食べたくなるものである。
ソースはどうしようか。
と、思い付いたのが、シャリアピン・ステーキ。
7月、妻とともに、日比谷の帝国ホテルへ、伝統のメニュー
シャリアピン・ステーキを食べにいったのであった。
シャリアピン・ステーキは、今、日本中の洋食やなどに
あるメニューであるが、元祖は帝国ホテル。
昭和11年(1936年)歯の悪い、ロシア人の声楽家、シャリアピン氏
のために、帝国ホテルで考えられたもの。
さて、レシピ。
すりおろした玉ねぎに漬けておく、というもの。
特別なものはいらいないようである。
出かけたついでに、ハナマサでステーキ肉を捜す。
二枚で¥500ちょっとに値引きされているもの。
オーストラリア産もも肉、脂はさほどない。
二枚で400g程度。
いろいろあるが、これにする。
帰宅。
作る。
まずは、おろし玉ねぎ。
これはミキサーで作る。
1/2個ほどを、軽く切る。
レシピにはなかったが、にんにくも一かけらほど。
ミキサーに回しやすくするため、水もほんの少し入れる。
肉は、厚み、1.5cm、直系15cmほどで丸い。
両面の筋を切り、
片面に格子状に細かい切れ込みを入れる。
こちら側が表面。
これをパッドに並べ、表面におろした玉ねぎをかける。
このまま30分。
そして、焼き上がり後、肉にのせる玉ねぎ。
1個分をみじん切り。
バター2かけら、サラダオイル少し、テフロンのフライパンで
弱火で炒める。
狐色まで、と、いう。
狐色といっても、どのくらいであろうか。
インドカレーなどの場合、水分がほとんどなくなるまで
炒めるのだが、そこまではいかなかろう。
玉ねぎの食感が残っているくらいであろうか。
ただ、色は付いている、そんな感じだろうか。
弱火であるが、時折、火を強め、軽く焦がしながら炒める。
よいかな。
塩胡椒。
肉。
おろし玉ねぎを取り、両面、塩胡椒。
同時進行で、付け合せのフライドポテト。
揚げ鍋に、サラダオイルを入れ、加熱。
冷凍のポテトを入れる。
付け合せは、これだけである。
ステーキには、鉄のフライパン。
一度、煙が出るまで熱し、冷ます。
バター、2かけら、同様にサラダオイル少し。
ここに、肉2枚を、切れ目を入れた(表)面を下にして入れる。
強火から、弱火。
漬けておいたおろし玉ねぎが、多少表面に残っていたので、水分が出る。
焦げ目をつけるため、強火に戻し、煮詰めるように、焼く。
フライパンを時折ゆらしながら、側面が8割程度色がつくまで。
よいかな。ひっくり返す。
返してから、30秒〜1分ほどであろうか。
今一つ、タイミングがわからない。
あまり、火が通り過ぎても、いけなかろう。
あげ、皿にのせておく。
ポテトもよさそうである。
あげて、塩をふっておく。
この肉を焼いたフライパンに、炒めた玉ねぎみじん切りを移し、
煮詰まりつつあった、肉汁と合わせて軽く炒める。
OK。
肉の上に玉ねぎを薄く広げる。
どうであろうか。ミテクレはよさそうだ。
切ってみる。
ミディアム・レア、という感じであろうか。
帝国ホテルのものは、もう少し肉が薄く、
また、もう少し火も入っていた、記憶がある。
厚みを考えると、このくらいでも可、か。
しかし、シャリアピンは、比較的火が入った方がよい、ような気もする。
さっそく、食べる。
うお。これは、うまい。
帝国ホテルのものとは、ちょっと、いや、だいぶ違うが、
これはこれで、うまいぞ。
肉の厚みがあったので、おろし玉ねぎの、肉を柔らかくする効果、と、
いうものが、どれだけあった。よくわからないが、
炒めた玉ねぎみじん切りの甘さと、香ばしさが、
肉全体に染みている感じ、である。
どんどんと、あとを引く味、で、ある。
よくをいうと、ほんの少し玉ねぎが炒め過ぎ。
気持ち、玉ねぎの食感もあってよかったような、気もする。
また、最初に表面に入れた切込みは、1mm程度であった。
これも、思い切ってもう少し、深くてもよかったような気がする。
より、おろしと炒めた玉ねぎのうまみが染み込み、かつ、
柔らかい感じになったような気がする。
しかし、初めて作ったものである。これで十分満足せねばなるまい。
帝国ホテルの名作、を思い出すと、むろん、べらぼうに、うまいのだが、
正直の感想は、ハンバーグ、で、あった。
ほんとうは、これは筆者なりの誉め言葉のつもりでもあった。
柔らかさと、ステーキらしい肉のうまさと香ばしさ、を追求し、
研ぎ澄まし、たどり着いた完成品。
肉がほんとうに柔らかく香ばしくうまく、玉ねぎの甘味と旨み、、。
しめて、ハンバーグ。
今回の筆者のシャリアピンは、それとは、
肉の厚み(むろん質も違うであろう)、
柔らかさ、火の通り加減、香ばしさ、玉ねぎの炒め方、などなど、
随分違い、同じ料理とは、到底思えない。
しかし、十分うまかった。
味としては、玉ねぎとバターと塩胡椒。
ステーキのソースとしては、シンプルである。
そして、筆者の初めての、拙い料理でもここまで
うまいものができた。
シャリアピン・ステーキの度量の広さというのであろうか、
拙さも吸収してくれる、シンプルな中に、とてつもない奥の深さを
持ったメニューではあるまいか。
さすが、帝国ホテル伝統のオリジナルメニューである。
断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |
2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |
2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15
2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |
2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月
(C)DANCHOUTEI 2006