断腸亭料理日記2006
9月15日(金)昼
今日は昼からビッグサイトへ。
昼飯はどうしようかと、考える。
有明、ビッグサイト付近で食べるか、、。
途中下車して、銀座にしよう。
銀座といえば、なにがよかろうか。
久しぶりに、三原橋交差点のナイルレストラン。
東京のカレー好き、であれば、まず知らない人はいなかろう。
東京のインド料理店の草分けといってよいのだろう、
創業は戦後すぐの1949年。
二代目の頭の薄くなった江戸弁を喋るへんなインド人、
ご主人G.M.ナイル氏はTVにも出ることがあるので、
顔を見たことがある方もおられよう。
また、カレー通として知られる、コメディアンの関根勤氏のイチオシの
カレーがなんと、ここ、と、いうことを知っている方はあろうか。
さて、ナイルレストランの前に、この界隈についてちょっと触れておく。
数寄屋橋があって、海に向かって今の晴海通り。
銀座四丁目までしかない、今の中央通り。
そして、三十間堀が、中央通りに沿って流れ、ここに架かる橋が、三原橋。
そのワンブロック先あたりが、江戸の頃には当然ないが、
現代の地図では昭和通りがやはり平行して走る。
今、この晴海通りと昭和通りの交差点が、三原橋の交差点。
旧町名では、木挽(こびき)町。
三原橋の跡は、地下に映画館シネパトスなどがあるビル。
ちょっとへんな裏通りがあるので、ここが橋であったことが
想像できなくもない。
昭和通りと、この三十間堀、いつできて、いつなくなったのか。
これは、同じ頃であった。
ついでにいうと、木挽町やら、尾張町やらの町名がなくなり、
すべてが銀座、今の銀座八町になったのも同じタイミング。
いつかというと、関東大震災後。
三十間堀は、震災で崩れた銀座の瓦礫(がれき)を埋めた、と、いう。
そして、震災の復興事業として、昭和通りができた、
ということなのである。
復興事業は昭和5年まで続いているので、このあたりには
昭和通りもできていたのであろう。
そんな昭和通り沿い、三原橋交差点から京橋方向へ向かって左側。
数軒目が、ナイルレストラン。
(この店の創業が戦後すぐ。当然昭和通りはもうあった。)
昼前、もう既に賑わっている。
一階は一杯で、二階へ。
二代目のご主人G.M.ナイル氏は一階にいらっしゃる。
トン、トン、トンと階段を上がっていった二階には、
三代目の善己ナイル氏がいた。
(この三代目は、お母様が日本人なのであろう。
お店でも、このお母様、女将さんを見かけたことがある。
とてもあたりの柔らかい、いかにも銀座の古い店の
接客をしていたような記憶がある。)
窓際の席に座り、迷わず、
「ムルギーランチ!」。
ここではもうこれしかないだろう。
さほどに待つこともなく、運ばれる。
テーブルで、インドの方と思われるウエイター氏が
骨付きチキンをほぐし、骨を取っていってくれる。
銀色の皿に型抜きされた、黄色いご飯。
キャベツなどのカレーで煮られた野菜。
そして、ほぐしてくれた、チキンとカレーソース。
これらがワンプレートで出てくる。
食べる。
特に、辛くしてくれ、とは頼んでいない。
この店のノーマル。
日本人が普通に食べられる、辛さであろう。
また、他の香辛料もとくに目立ってはいない。
だが、これ、なんともいえず、うまい、のである。
カレーソースは、まあ、インド料理やであるから、
粘度は高くはない。汁の量はそこまではいかないが、
イメージは、今流行のスープカレーに近いものである。
野菜は、キャベツだけでなく、
ポテト(マッシュポテトのようなもの)も入っている。
これもうまい。
筆者、このムルギーランチは、初めてではない。
以前にきたときも、食べている。
いや、二代目に、これを勧められた。
(時によっては、これ以外オーダーできないくらい、
あのキャラクターで強引に勧められることもある。)
そして、このムルギーランチなるものは、
¥1400。
安くはない。
このあたりが、二代目のキャラクターと相まって、
まあ、初めての人間には、なにか、“妙な”感じをかもし出す。
関根勤氏が勧めるように、かなりうまい、と、いえるが、
公平に見て、この味で、このミテクレで、
¥1400は、高い。
以前に、読者の方に、麹町のアジャンタは、高い。
もっと安くて、ボリュームのある店、ということで、
日比谷の某店を紹介されたことがある。
(そういえば、この日記でアジャンタは書いていなかった。
最近いっていないのである。)
確かに、アジャンタでなくとも赤坂モティ、他、
東京の老舗、有名インド料理店は、安くはない。
ナイルレストランが、アジャンタやら、モティとまったく同じジャンル
(本格インド料理店?)かどうかは別にして、
価格設定は、なんとなく、近いところではなかろうか。
先に、公平に見て、高い、と、書いたが、
アジャンタもモティも、そして、ナイルレストランも
ネームバリューもあり、そのくらいの価格であると、
筆者なども、刷り込まれている。
いや、刷り込まされている、といえよう。
最近できた、インド料理店はもう少し安い価格設定のところも
少なくはない。(たとえば、ジャイヒンド)
結局のところ、それだけ価格差があっても、アジャンタやらモティやら
そして、このナイルレストランに、いく価値を見出せるかどうか。
筆者は、ある、と、結論づける。
老舗であるという、ブランドはその一つ。
歴史も含めた、その店の雰囲気。
(麹町のアジャンタは、なにか、あの怪しげな雰囲気が好きである。)
そして、ここ、ナイルレストランは、それらに加え、ずばり、
二代目G.M.ナイル氏のキャラクター。
どうも捨てがたい。
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