断腸亭料理日記2006

味噌おでん

5月5日(金)第二食
ちょっと、こんにゃくの味噌おでん、が食いたかった。

これは、亀戸の天神様へ、藤を見に行った際に、
出ていた屋台にあったのを見て、食いたくなっていたのである。

いい天気で、さわやか。
ビール片手に、赤い顔をして、串に刺したこんにゃくを
ほうばっているおじさんがいたのである。
これは実にうまそう。

こうしたお祭りなどの、屋台の食いものというもの、
食べてみると、さのみうまくはないのだが、実にうまそうに、見える。

たこ焼き、焼きそば、お好み焼き、鮎の塩焼き、さざえの串、
サツマイモのフライ(大学芋のようなもの)、、、。
そんなものがうまそうであった。

さて、こんにゃくの味噌おでん、で、ある。

味噌おでん、と書いているが、賢明なる読者貴兄はご存知であろうが、
いわゆる、おでん、ではない。
こんにゃくに、甘い味噌を、付けただけのもの。
田楽という漢字をあてた方がむしろよい。
池波作品にも登場し、筆者も何回か作ってみているが、
豆腐の田楽が、近いメニューであろう。

しかし、こんにゃくの味噌おでんは、
全国的にある、あるいは、あったメニューかどうか。

今、そういえば、こんなものは、
こうした屋台でしか見かけないメニューかもしれない。
居酒屋のメニューにも、家庭でもないかもしれない。

昔、筆者の子供の頃には、豆腐の田楽はなかったが、
こんにゃくの味噌おでんは、東京、あるいは、東京近郊でもまだあった。

思い出すのは、遠足や家族で行った、
郊外の特に全国的に有名なところではない、
ちょっとした観光地や、神社仏閣(具体的には狭山湖だったり、
深大寺、だったり、、そんなところ。)の茶店というのだろうか。
小屋がけに近いような、、そういうところにあったように思う。
子供にとっては、甘いものなので、わりあい好きだった。

しかし、まあ、今考えると、特に技術もいらぬし、また、安い。
本当になにもないところで、なにか、とりあえず、出せるもの、
腹にもたまるし、酒を呑むこともできる。
そんな、ものだったのであろう。

こんにゃくの産地といって、思い浮かぶのは、やはり、山の中。
関東であれば、群馬の下仁田。
下仁田こんにゃくで、ある。
農水省の統計を、ちょっと調べると、なんと、国内生産の90%を
関東甲信越地方が占め、さらに80%は群馬県で日本一。
次いで、栃木、茨城、長野の順。
この他にも、福島県、高知県、広島県、大分県など、作られている
ようである。(平成15年)

と、なると、そもそも、こんにゃくは、どこのものであろうか。
関東のものであろうか。
こんにゃくというかなり、身近な食いものであるが、
意外に、こんなことも知らない。

下仁田町のHPによると、こんにゃくという植物は、
もともとは、インドシナ半島など、東南アジアが原産であるという。
里芋なども、食文化としては、南方系で、南へ行くと、
ご存知のように、タロイモ、と、なる。日本のいわゆる稲作以前からある
食文化である。先日出てきた、雲南などの生活文化ともつながるという、
縄文のころの食文化。そういえば、雲南でもこんにゃくは、
食べられるという。
こんにゃくも、縄文からある古、い日本の食文化なのであろう。
そして、京都を中心とする進んだ食文化から離れた地域である
関東などに、残った、と、考えられるのかもしれない。
(調べながら書いていて、気が付いたのだが、
これ、学生の頃、授業で習ったような気がしてきた。嗚呼。)

ともあれ、こんにゃくの味噌おでん、で、ある。

味噌はなにがよいのだろうか。
先の屋台などは、八丁味噌、などと、書いてある。

子供の頃の茶店で食べた味噌は、よくおぼえていないが、
赤くはなかった。信州味噌か、西京味噌であろうか。

西京味噌と、信州味噌を半々に、酒、砂糖を入れ、
水で少し伸ばす。

こんにゃくは、串に刺せる短冊に切り、湯がく。
石灰水に浸かっているため、灰汁抜きである。

温めながら食うのがよかろう。
カセットコンロに、土鍋、湯を張り、食卓へ。
湯がいたこんにゃくを串に刺し、土鍋に入れる。

冷(ひや)で菊正宗。
山うどの塩もみ、も出す。

食べてみる。信州味噌はいらなかったか。
ちょっと、塩辛かった。西京味噌だけでよかった。
砂糖を足し、さらに水で伸ばす。
OK。

まあ、こんにゃく、で、ある。
素朴で懐かしい味、というのだろうが、
まずくもないが、やはり、さのみ、うまくもない。
こんなものである。

今まで、書いていなかったが、うどの塩もみ。
これは、池波作品にも登場する、気の置けない、つまみ、であるが、
こちらの方が、まだ、多少は、乙、で、ある。


【断腸亭よりのご連絡】

※本当にやるのか?『第一回・断腸亭落語会』開催予告!

日時を決めないと、どうも、稽古に身が入らないので、決めました。
まだ、仮、ですが一応、梅雨のさなかの、6/25(日)PM。
場所も同じく、未定ですが、考えているのは、
拙亭近所、天ぷら屋・蔵前いせやの二階あたり。
天ぷら付きで落語を聞いていただく、ということで
気軽なものにしたいと思っています。
お店への予約の都合もあり、メール等での事前予約制。
詳細決定次第、再度ご案内いたします。
乞うご期待!?

                         筆者



断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月



BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2006