断腸亭料理日記2006
6月4日(日)第二食
さて、日曜日。
朝、スカパー、日本映画専門チャンネルで
鬼平を見ていると、「明神の治郎吉」をやっていた。
原作では、8巻。TVの鬼平、吉右衛門版では第1シリーズ。
岸井左馬之助(江守徹)のもとに、盗賊、明神の治郎吉(ガッツ石松)が、
信州小田井で急死した、左馬之助の旧友宗円坊の遺品をわざわざ届けに来る。
これに感動した、左馬之助は疲れているであろうからと、自ら荷車に乗せ
寄宿していた押上村の春慶寺から、本所二つ目の軍鶏鍋屋五鉄まで
連れていき、たらふく、ご馳走する。
いや、この江守徹と、ガッツ石松が、
軍鶏鍋を食うシーンがうまそうなこと。
また、酒がうまそうなこと。
しばらく、軍鶏鍋はやっていないが、
妙に食べたくなった。
鬼平といえば、軍鶏鍋。
誰がなんといっても、軍鶏鍋にとどめを刺そう。
筆者が軍鶏鍋を作り始めたのは、99年。もう6年も前のことになる。
この日記を書き始め、作品に出てくる軍鶏鍋を再現してみたのであった。
この軍鶏鍋のポイントは、軍鶏、と、いうことではない。
以前の、朝日新聞AERAの取材の時にも聞かれたが、
軍鶏、と、書いているから、軍鶏でなくてはいけない、のか
というと、必ずしも、筆者はそうでなくともよいと思っている。
いや、もっというと、肉はなくともよい。
ポイントはモツを使う、と、いうことなのである。
そして、元々が、庶民の安い食い物である、ということ。
(ちなみに、鶏モツも、昔から食べる習慣があったのは
確かなことである。落語、藪入り。先代、三代目三遊亭金馬は
藪入り(小僧など年季奉公に出ている者に与えられる年二回の休み。)
で久しぶりに帰ってくる子供に、あれも食わせてやりたい、
これも食わせてやりたい、という中に
「軍鶏も買っておけ、モツ混じりで!」と、いっている。
どのくらい昔かわからぬが、庶民でも、ご馳走というランクに入ろうが、
モツ混じりの軍鶏(この軍鶏も、鶏であろう。)を食べていたのである。)
で、あれば、モツ、普通の鶏レバーで、十分。
(軍鶏や、高級な地鶏のレバーと普通の鶏のレバーのが
どれだけ違うのかわからぬが、、、。)
しかし、一つ、これだけは落とせないというのが、鶏皮、で、ある。
これは、筆者の好みでもあるのだが、
この鍋も脂があった方が、断然うまい、ということである。
レバーからも多少脂は出るが、鶏皮からこってり出したい。
この脂は、同時に入れる牛蒡(ごぼう)と、とても相性がよい。
さて、午後、例によって、稽古のため歩く。
今日は、他の用もあり、蔵前方面へ。
(今週は蔵前はお祭りであった。先週は上野であったし、
本当に、この時期は上野浅草は毎週どこかで、お祭り、で、ある。
そして、最後になるが、来週は、待ちに待った、我々の鳥越祭り。)
帰りにハナマサで鶏レバーと、鶏皮、牛蒡を買って帰宅。
ちょいと、軍鶏鍋をやってみよう。
牛蒡を笹がきに切って、水に晒し、レバーは洗って切る。
鶏皮も一口程度に切る。
撮影用に買った、直系15cmほどの鉄鍋。
ちょいと、軍鶏鍋には、絶好である。
まずは、ガスレンジで、鶏皮を炒め、脂を出し、広げておく。
そこへ、レバーを入れ、酒、しょうゆ、砂糖を直に入れ煮る。
そこそこ火が通ったところで、食卓へ。
冬であれば、火鉢、なのであるが、さすがに、この季節は
カセットコンロである。
食卓で、笹がき牛蒡を入れ、さらに、煮る。
またまた、茶碗酒。
だしの、鶏皮は食べてもいいし、食べなくともよい。
軍鶏鍋は、原作でも、「新牛蒡の笹がきと」、と、出てくるので
イメージはこのくらいの季節。
午後、3時頃。ちょいと、軍鶏鍋で茶碗酒2〜3杯。
よいものである。
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