断腸亭料理日記2006

ふぐ

2月18日(土)夜

さて、ふぐ、で、ある。

筆者にとって、東京でふぐは、高価であり、
多くの東京人と同様かと思うが、
食べた経験も少なく、世の中でいわれるほどの
存在感を感じるものではなかった。

先シーズン、一念発起し、チェーン店

そして、地元浅草の有名店、三浦屋へ、行き、ことに、
三浦屋で、ふぐ、というものの、うまさ、に開眼することとなった。

今シーズンは、この日記には書いていないが、
旧臘(きゅうろう)、会社の忘年会を、三浦屋でやっていたりした。

そして、今日、都内某所、ここに場所は書けないのであるが、
“1人1万円で、四人集めれば、本場の本物、天然とらふぐを、食わせてやる”
ということで、友人夫妻を誘って、ふぐを食うことと、なった。

まずは、刺身。


これで、1人前、である。
まず、切り方が厚い。
そのせいかどうなのか、実に、しっかりした食感である。
普通、皿の文様が透き通るほど、薄く切るもの、と
思っていたが、そうではない。
モチモチとした、食感。
そして、クセのない、旨みのある味。
「これがホンモノの味」と、いう。

なるほど、、、。確かに、違う。唸る。


さて、鍋。


これで、四人前。


骨付きの部分と、普通の身の部分とある。

鍋になると、養殖でもそこそこ、うまい、のであるが、
普通の身の部分が違ってくる。
特に、煮過ぎないのが、ポイントである。
プリプリで、味が濃い。

骨付きのゼラチン部分がうまい、のは、いわずもがな。

これはもう、堪えられぬ。
夢中で、食べ進む。
(それにしても、量もたっぷり。)

そして、忘れてはならないのは、ゼラチン質の付いた皮。
今回、刺身だけでなく、鍋用にも皮が用意されていたのだが、
これも、もう、言葉がない。
あんこうなど、鍋でも、ゼラチン質の多い魚は多いが、
皆、ある程度のクセが、ある。
しかし、ふぐという魚は、まったくクセがない。
このあたりが、鍋といえば、ふぐ、と、いわれる所以
ゆるぎない地位を持っているところであることを、実感するのである。

〆は、お約束の、おじや。


まったく、塩などの味を付けなくとも、充分。

腹に染みわたる。

十二分に堪能。

これが、本物の天然とらふぐの味であったか、ということである。

今、東京で、本物の天然とらふぐコースは、
最低でも、1万5千円から。
近所だが、下谷の老舗、にびき、では1万6千円。
筆者は、もちろん、行ったことはない。

今回は、幸運にも安めの値段で、聞いてみると、
四人で、とらふぐ二本。量も、随分とあった。
こんなことは、まあ、普通ではなかろう。

希少なものを、必要以上にありがたがるのは、
日本人の悪い癖ではある。
また、高価ではないと、ありがたみがなく、見えてしまう、
というのも、いけないところである。
また、それを煽る、グルメマスコミ。
筆者も、心しなくてはいけない。

しかし、一方で、本当の本物の味は知っていて、損はない。
また、知らなければ、この価格でこの味、適正なのかどうなのか
見る目、も養えない。

そして、そもそも、筆者が縁もなかった“ふぐ”を食べてみよう、
と、思ったのは、浅草というところの、ふぐ屋の多さからであった。
庶民には縁はないが、これも浅草(東京下町)の板前職人の
文化であることは、間違いなかろう。
そういう意味でも、筆者にとっては勉強でもあった。

また、三浦屋も、手頃な値段で、そこそこの味が
食べられる、という意味では、充分ありがたい店ではあろうかと思う。



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