断腸亭料理日記2005

焼き茄子の味噌汁

9月16日(金)深夜

***池波正太郎「味と映画の歳時記」より 

「七月 茄子と白瓜 

 前略・・・・

  いまも、塩もみの白瓜と、焼き茄子の味噌汁だけの夏の朝飯を、

 冬の最中(さなか)に思い浮かべている私なのだ。

  小さめの茄子を軽く焙って皮をむき、濃い目の味噌汁にするのは、

 まったくたまらない。

 ・・・・・後略。」

***「 味と映画の歳時記 」池波正太郎著 新潮文庫

酔っ払って、夜、腹が減った。
なにか、汁かけ飯、でも食べたい。

なにがよかろう、と、考えていると、
冒頭の、焼き茄子の味噌汁を思い出した。

先週、わさび漬けと、焼き茄子を作ったが、茄子が余っていた。
これでいこう。
焼き茄子の味噌汁の、ぶっかけ飯。

池波先生は、この焼き茄子の味噌汁、というのが好きであった
ようである。茄子の味噌汁、は飲んだことはあるが、
焼き茄子の味噌汁、と、いうのは経験がない。

飯がない。PM10時、米を研いで、10時半、炊飯開始。
11時半、炊き上がり。

まずは、出汁を取る。
鰹削り節で、濃厚に。

またまた、例によって、読み返しもぜず、
作り始めてしまったが、濃い目の味噌汁、と、いうのだけ、
頭に残っていた。

茄子を焼く。
魚焼き用のグリルがよかろう。
細く切る。

裏表を比較的よく、焼いてみる。

同時進行で、取った出汁に、濃い目に味噌を溶く。
焼いた茄子を入れ、軽く、火を入れる。

炊き上がった飯を丼に入れ、
味噌汁をかける。

うまい。

「うまいよーー!」
妻に、食わせて見る。

ん?

先の、池波先生の文章を妻が読み、、、、。
これ、『焙って皮をむき』じゃない。

え?、、、皮をむくの?

うーむ。確かに。
うまいのは、冷静に考えると、焼いた茄子もうまいが、
呑んだ後の、濃い味噌汁が、うまい、というのが、まず第一である。

焼いてから、皮をむく、と、いうことは、
焼く意味、はなんであろうか?
それも、軽く、、?
軽ければ、火など通らない、、、。
まあ、いずれにしても、皮は入れない、のであった。

茄子と、いうもの、なにがうまい、のか。
茄子には二つしかない。皮と、身。

漬物、などは、紺色の色と相まって、
皮、が、まずうまい、のであろう。

もともと、茄子、という野菜、身にはほとんど味はない。
茄子の田楽、などは、よく油を吸わせ、味噌をかける。

もともと、味が少ないため、油や味噌、しょうゆ、なんでも
味を吸い、なんにでも合う。

そして、マリネなどにしたりもするが、
この場合は、酢と油を吸って、クタクタになった、身が、またうまい。

味噌汁も、これではなかろうか。
どちらかというと、煮込んで、正体なく柔らかくする、、のか?。
しかし、それにしても、焼く意味、は依然として、解決されていない。

ともあれ、もう一度、焼き直し、皮をむき、
味噌汁が濁るので、長く煮込むのはやめ、茄子は、
軽くレンジ加熱し、味噌汁に入れる。

こんな感じである。
どうも、茄子はパッとしない、、ような気もする。
これならば、最初の皮が入った方が、まだよい、か?。

食べ終わり、ちょっと調べてみると、
焼き茄子の味噌汁は、どうも、懐石(?)料亭(?)系の
メニューでもあるようである。

築地の問屋さんのページにこんなものがあった。

これは、なんと、20分以上焼き、煮ない。
(また、これは、味噌が、八丁味噌である。
やはり、ここでも思うのであるが、茄子の身は、蒸し焼きで、
どうせ、皮をむいてしまうのであるから、焼く意味は
今、あまりなかろう。レンジ過熱でよいのでは、、。
と、すると、筆者が作った二杯目のものは、
実際の「焼き茄子の味噌汁」に近いもの、であるかも知れぬ。)

ともあれ、どう考えてもどちらか、であろう。
よく焼いて、煮ないか、軽く焼いて、よく煮るのか。
でなければ、生になってしまう。
ひょっとして、池波先生の記述が違うのか、、?!
先生が、生の茄子をお好みであったのか?まさか、、!

しかし、茄子の濃い味噌汁は、うまいことは確かである。




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