断腸亭料理日記2005

浅草駒形・鮨・松波 その3

【続き】

浅草・駒形の鮨・松波。
昨日は、つまみ、鯵まで。

ここで、にぎりに代わる。
酒はやめ、お茶に。

まずは、大トロ。1個ずつである。

これは、蛇腹、と、いうらしいが、脂の筋の入っているところ。
大トロ、であるのだが、ギトギト、の、脂ではない。上品。
うまいなぁ。
(ここも、にぎりは、すべて、煮切りやツメを塗ってから出される。)

新子。
3〜4cmで、あろうか。
ここでは、6月頃から出している、と、いう。

天神下の一心で、『あんまり小さいのは、酢の味しかしないでしょ』、
と、いわれたことがあったが、確かに、過去、そんなものにも
あたったことは、ある。

しかし、ここのもの、
『なるほど、新子、とはこういう味か、、、。』
で、ある。

とても、繊細で、やさしい。

新子、または小肌でもよいのであるが、の、うまさ、とは、
香り、なのではなかろうか。
むろんのこと、酢だけの香り、ではない。
ほんわり、とした、魚のよい香り、、。

適当な言葉が、思い浮かばない。
小肌(新子)という魚が持つ、なまぐささになる前の、
独特の、さかなくささ、とでもいったらよいのであろうか。
この香りは、酢の香りとの戦い、であろう。
なまぐささを消すための、酢、では、きっと、いけなかろう。

これも、昨日の鯵のところに書いた、素材である魚が、
どんな状態であるのか、それを、どういう風に、こしらえ、
どう仕上げ、客の口に入る時に、どんな味になるのか、
どんな味にすればよいのか、、、、。

すべてを計算し尽くし、
微妙なバランスの上に出来上がった、もの、であるまいか。

ご主人、こんなことも仰っていた。
「寿司屋は、魚臭い匂いがしちゃ、だめなんですよ。
 酢の匂いがするのは、いいんですがね。」

なるほど。

それから、ここのにぎり、酢飯が大きめで、四角い。
筆者にはそのまま。妻には、半分に切って出されていた。
(もしかすると、酢飯の量も違うのかも知れない。)

むろんのこと、握られた姿は、ことのほか、うつくしい。

ご飯について、もう一つ。

「南部鉄の釜」を使って、炊いている、というのは
そこここに、書かれている。
それに加えて、お櫃(ひつ)のこと。
ここは、藁櫃(わらびつ)と、いう、藁で編んだものに
お櫃を入れ、保温をしている。
ほとんどの時間はふたは閉じられており、
握る時にだけ、開けられる。

さて新子、に続いて、赤貝、青柳、鳥貝。
正直に書くと、筆者、この三品には、多くを語れる
言葉を持たない。
もともと、ヒモ(赤貝)と、小柱(青柳)は好物なのであるが、
不思議なもので、本体である赤貝と、青柳には、
さほどの思い入れがない、と、いうのがその原因である。
完全に、お好みで食べる場合は、頼まない場合も多い。

貝も光物同様に、なまぐささ、というのか、
貝くささ、というようなもの、がある。

唯一、ここの、この三品でわかることは、そうした、
くさみ、のようなものも、なく、水っぽくもなく、
柔らか過ぎることもなく、かたくもなく、、、。
なにも気が付かずに、すっと、食べてしまう。
そんな三品である。

穴子。
東京で、そこそこ以上の寿司屋であれば、
その出来が注目される、もの、であろう。

ここのものは、まずは、もともとの、煮た色が薄い。
また、塗られる、甘だれも、色は薄い。
そして、あぶらない。

あぶられる意図は、香りと脂を出す、と、いうことらしい。

ここの穴子は、そんなことをしなくとも、十二分にその状態で
煮上げられている、ということ。

まさに、口中で、とける。

色が薄い、のは、しょうゆが少ない、ということ。
しかし、甘味は強め、で、あろう。

さて、ここで、たまご、が出て、
「他に、ほしいものはありますか?
 海老、うに、キャビア、、、」
(キャビアは、ここの売り、らしい。)

と、ひとまず、おまかせは、終わりのようだ。

目の前のざるの上にあって、気になったいた、すみいか。
新いか、と、いうには、少し、大きい。
おすすめ、ではなかった、のかも知れぬが、もらう。
しかし、もちろん、充分、である。うまい。

「なにか、巻物、、、、、。ひもは?」と、筆者。
「巻物だったら、“ぜし”、かんぴょうですよ。
 これを、食べていただたかなくちゃ。
 海苔に一番合うのは、かんぴょう、ですよ。」

失礼、いたしました、、。
そうである、海苔巻といえば、かんぴょう巻き!。
なにを寝ぼけたことをいってしまったのか、、。

これも、しょうゆが、極端に、薄い。
ほわーん、とした、かんぴょうの味と香り。
なるほど。上品でやさしい。
また、かんぴょうの歯触りが、シャキシャキとしっかりしている。

(前に、筆者、自分でもこんなことを書いていた記憶もある。
子供の頃から、どこへいっても、そうであった。
いや、今でもそうだ。和菓子屋ではなく、甘味や、というのか、
搗き米や、というのか、餅や、というのか、、、。
いなり寿司、赤飯、大福、まんじゅう、なんぞを売っている店でも、
海苔巻といえば、かんぴょう巻き、である。)

(しかし、これも正直に書くと、半分は、筆者、こっそり、
気持ち、わさびとしょうゆも、付けてしまった。
好みである、しかたがない。
かんぴょう巻き、にわさび、はうまい、のである。)

やはり、もう一回分かかってしまった。

【続く】


HP





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