断腸亭料理日記2004

浅草・おでん・大多福

12月21日(火)夜
ここも、書いておかなければならない店のうちの一つ。

おでんであるが、お多幸
とは異なり、関西風の澄んだ、出汁である。

田原町から、国際通りを北上、言問い通りを左に曲がり、右側。
界隈には、元祖・恵比寿ラーメン、そして、例の、路麺、ねぎどんが、ある。

大正四年創業。

もともとは、大阪から、この地に移ってきた、と、いう。

間口は一間ほど。
提灯がぶる下がっている。

左右に植込みのある石畳が数メーターあり、玄関となる。
入ってすぐ右側に長く奥へカウンター。

ここまでかと思うと、左に折れ曲がり、
さらに、奥には、座敷もあり二階もある。

一人の場合は、カウンター。

お酒、お燗。

おでん。
「つみれ、ちくわぶ、すじ」

「江戸っ子だね。」
「これは、江戸っ子だよ。」
と、ご主人。

苦笑。


おでん屋であるが、安くない。

おでんだけであれば、さほどの事はないが、
他の、つまみでも頼もうものなら、随分といってしまう。

先のものに、焼き豆腐、いも(里芋)、がんもどき、
酒二合で、それでも、¥3000超。
お多幸の、倍にはなろうか。

また、お多幸のような、関東風の濃い味でもなく、
浅草の老舗としては、まだまだ新しい。

しかし、この店、捨て難いのである。

なぜであろうか。

もちろん、味はよい。

薄味であるが、おでんはうまい。
高いつまみも、値段だけのことはある。

しかし、それだけではない。
なにかがある。

雰囲気なのか、存在感のようなものなのか、
居心地が、よいのである。

ねぎどん、元祖恵比寿ラーメン、千束五叉路、その他色々。
界隈とひっくるめて、大好きである。

浅草・おでん・大多福。
よい店である。


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