断腸亭料理日記2004
11月29日(月)昼
路麺である。
先日は、水道橋の東京最強の立ち喰そば「とんがらし」を書いた。
今日は、オフィスの近所の立ち喰そばである。
ここも、かなり不思議な、場所にあるが、
大久保通り沿い、である。
まだ、タクシードライバーが寄るのであろう、と、想像ができる。
大江戸線牛込柳町駅から、原町方向に坂を上がる。
黄色い看板。
(ついでだが、こうした、路麺と呼ばれる、立ち喰そば屋、
黄色い看板が多い。黄色にスミ(黒)文字。)
タクシードライバーの目に止まりやすいからだろうか。
(ついでだが、あの、ラーメン二郎、も、黄色である。
これには、そういう意図が、あるのかどうか、、。)
時間もなかったのである。社食の「そば」とも、思ったが、
多少、歩いても、どう考えても、こちらの方が、うまい。
片道10分。往復、20分。食べている時間は、5分。それでも行く。
40を過ぎると、日に一回は、人間、死ぬことを考えた方がよい。
と、池波先生はおっしゃっている。
そう考えると、毎日の一食一食を、おろそかにはできない。
筆者の場合、味のわかるうちに、少しでも、うまいものが、食いたい、
と、なるわけである。
漫然と、社員食堂の定食に、文句を言いながら、食うことは、
やめにした。
ここ、立ち喰そば屋であるが、うどんの方が、よい。
ご亭主がおっしゃっていたのだが、つゆに、しょうゆを入れていない。
関西風、と言ってもよいのではなかろうか。
(白河とは、なんであろうか?福島県の白河ではないのか。)
色の薄い、つゆである。
うどんも、若干、平べったい、ものである。
きざみ、という、油揚げを刻んだもの、(これも、関西風であるように
思うが)、が、あり、これがうまい。
また、ここは、揚げ玉もサービスで入れてくれる。
(ますます、関西風である。)
筆者は、いつも、これに、生卵を落とす。
さて、ワカメである。
ここ、わかめも自動的に、のってくる。
ワカメを入れている、立ち喰そば屋は、多い。
しかし、このワカメ、断りたいくらい、まずいところが、多い。
前出の筆者の会社の社食など、その典型。
ご丁寧に、ラーメンにまで、入れる。
思うに、どこぞの、水で簡単に戻る、わかめではなかろうか。
明らかに、食感が違い、当然ながら、味も違う。
もともと、そばに、ワカメを入れる習慣は東京にはない。
栄養のバランスか、なにかわからぬが、なぜ、まずいものを、わざわざ
入れるのか?
(ここで、社食の文句を言うのは、やめなくてはいけない。)
ここのワカメは、きちんとした食感もあり、味もある。
水戻しワカメではない。これであれば、OKなのである。
つゆの味。
色は、薄いのであるが、甘味もあり、完全な関西風でもない。
微妙なところで、東京人にも食べられるようにしたのか、
違和感なく、食べられる。
何軒かまわり、うまい、立ち喰そば屋に、共通するものに気が付いた。
簡単なことである。作る一杯のそばへの愛情である。
文字に書くと、簡単であるが、どれだけ少ないか。
ここのご亭主、筆者が、生卵入り、を頼むと、
つゆを、麺の上に掛け入れる際に、この、生卵の上から
ゆっくりと、流し込む。
これで、どれだけ、仕上がりに、かわりが出るかわからぬ。
わからぬが、しかし、伝わってくるものは、間違いなく、ある。
「おろそかに」しない、という、ことでは、なかろうか。
五十格好の白髪交じりの髪を後ろにまとめ(よくある、小さなちょんまげ)
喫茶店のマスターにいそうな、風貌である。
どういう経歴で、今、ここで、立ち喰そば屋をやられているのかわからない。
しかし、「白河そば」。
うまい立ち喰そば屋である。
東京都新宿区原町2-6-7
きざみのうどん、である。この澄んだつゆがうまい。2005/11
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