断腸亭料理日記2004
11月26日(金)夜
吾妻橋。
こういう場所にある得意先というものは、
筆者にとっては、ありがたい。
前にも、書いているが、
営業が、ある程度気を利かせてくれていたり、また、
たまたま、という場合もあるようだが、
18:30、吾妻橋の得意先終了。
営業とわかれる。
ここには、いつも、一度、家に寄って、自転車で来る。
さて。
ビールでも一杯。
敷地内にある、江戸前ビアホール。
ここで醸造している、という、東京地ビール。
毎度、通るたびに、一度入ってみたいと思っていた。
「リバーピア」という薄い色のもの。
なにか、香りをつけてあるのか、フルーティーな感じである。
今日は、お酉(とり)様。三の酉である。
浅草も、北方面は混んでいる、か。
また、お酉様に、一人で行くものでもない。
そば屋、という手も、ある。
並木藪、いっそ、吾妻橋藪、はたまた、尾張屋。
洋食、でもよい。ヨシカミ、グリル・グランド、、、。
様々考えるが、
結局、太助、に落ち着いてしまった。
腹が減っている、魚が喰いたい、である。
吾妻橋は、隅田川に架かる、浅草と本所を結ぶ、
江戸の頃からある橋である。
もうこの時間、真っ暗である。
しかし、三の酉にしては、暖かい。
吾妻橋を渡り、雷門。三の酉であるが、このあたり、
思ったより、人出は多くない。
(景気がよくなってきた、といっていたが、またまた、
そうでもなくなってきた、のか。)
国際通りを渡り、合羽橋本通りから、
新堀川通り(合羽橋道具街通り)を超え、太助寿司。
今日は、宴会が複数入っているようで、大いそがし。
いつもながらうまいのだが、
今日、うまかったもの。
白身は、平目。
鯖。(三陸)
鯵。(鹿児島・串木野)
太助は、光物もうまい。
光物の、本当のうまさを教えてくれたのも、
太助の大将である。
もともと、筆者、光物は大好き。
鯵にしても、鰯、鯖も魚屋で買って、自分でさばき、
食べてもいた。
まあ、大抵は、生臭い。
そんなものであると、思っていた。
大方の、すし屋でも、そんなものであった。
また、それでも、充分うまかった。
しかし、それ以上のもの、もあるということ。
太助の鯵は、生ぐさみは、ほとんどなく、旨み、脂も充分にある。
思うに、生ぐさみと、旨み、脂とは、大抵は
同じもの、なのではなかろうか。
つまり、光物は旨みや脂があれば、それは、取りも直さず、
時間の経過などによって、すぐに、生ぐさくなってしまうのであろう。
生ぐさくないと、旨み、脂もなく、水っぽい。
そんなものも、少なくない。
獲れた場所、鮮度、下拵え。
聞いてみると、どれも、充分に吟味されていなければ
うまい、光物には、ならない、ようである。
手間と値段もだいぶんに、かかる。
かといって、値段が取りにくい。
しかし、そんな、やっかいな、光物をおろそかにしない。
太助の大将は、いつも、鯵を自慢する。
これも、江戸前寿司職人の気概であろうかと思う。
おいしかった。
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