断腸亭料理日記2004

有楽町

カレー&パスタ・ジャポネ

1月14日(金)昼食
午後イチ、銀座の取引先。

昼飯は・・・、どこにしよう。

昨年からの懸案であった。
有楽町、ジャポネ。
一度、読者の方に勧められたところでもあった。

ラーメン二郎・三田本店に負けず劣らず、
B級グルメの、別格大本山、といった趣きであろうか。

場所がまた、ヘン。

きれいなファッシビル、銀座インズ3

首都高の汐留から、枝分かれをし、
新橋、西銀座を低い高架で走る、
片側一車線通行の盲腸のような、路線がある。

この下が、「銀座ナイン」に始まり、新橋からずっとテナントになっている。

その、数寄屋橋交叉点のあたりが、西銀座デパート、
さらに外堀通りに沿って、北側が銀座インズ。

そして、銀座インズもいくつかのブロックに分かれている。
その一番北側。東京駅寄り、といえばわかりやすいであろうか。

そして、そのまた一番はじっこ。
オフィス・デポの奥である。

カウンターのみ。

その後ろに、長い列ができている。古いからか、年配の方もいる。
この雰囲気も、ちょっと、書き尽くせない。
二郎ほどではないが、やはり、ちょっとした、緊張感のようなものも、ある。

回転は速い。

12時ちょうどに着いたが、10分待ち程度。

メニューは、ナポリタンなどを中心に、いわゆる、太麺の
昔の喫茶店のスパゲティー。
(カレーもあるようであるが、あまり話題にはなっていない。)

ジャポネ、ジャリコ、チャイナ、インディアン、
などなど、謎のメニュー達があるが、壁に写真入りで説明されているので
並んでいる間に、考えられる。

どれも、普通盛りで、¥500ちょっと、今時ない安さ。
サイズは、この上に、大盛、横綱などある。
(例によって、その上もあるらしい。)

また、サイドメニューとして、カップ入りの
生野菜のサラダ、ポテトサラダ、などもある。

もっと不思議なのが、牛乳。
瓶入りのいわゆる、普通の、白牛乳である。

オーダーすると、瓶のまま、ほい、っと出されている。
また、オーダーしているおじさん、などがいるのが、もっと、おかしい。
(駅のミルクスタンドなのか?ここは。)

空きが出ると、先頭から順に呼ばれる。

しょうゆ味のジャリコ(¥550)、というのを、頼んでみる。
初回でもあり、様子見で、普通盛り。

調理されているのが、ご店主と見られる方と、もう一人程度。
息子さんとお見受けする、似た顔の、若い方もいる。
また、なかなか、強力そうな、おば様(奥様であろうか。)もいる。

座ってからも、席数も多いためか、出てくるまで、
7〜8分はかかったかと思う。

具材は、小松菜、豚肉、小エビ、アクセントに大葉(青シソ)。
先の、写真入のメニューにはしょうゆ味、としてあるが、
太い麺が、「よくわからない味」で、味付けされている。

しかし、しかし、である。

これが、滅法うまい。
掟破りのうまさ、である。

とにかく、あとを引く。
例によって、普通盛りでも、そこそこの量であるのだが、
どんどんと、食べられる。
どうにも、とまらない、うまさ、である。

冷静に、味を分析してみると、しょうゆ味の筈であるが、酸味がある。

食後、数時間考えて、思いあたった。

これ、ナポリタンの味である。
ナポリタンは、ケチャップだけでなく、缶詰のマッシュルームの味が
ポイントであると思うが、この渾然一体となった、「味」。
この味が、ジャリコの味の奥に、存在するのである。

ここ、フライパンを洗わない。
拭くだけ。

長年、染み付ジャポネ味のフライパン

これが、隠し味、というのか、
なんというのか、、、。
一種、独特の味を作り上げていると、思われる。
(ひょっとすると、意図されて、いるのではなかろうか。)

一気に完食。

近所に、やはり、不思議なカレー屋、ニューキャッスル
もあるが、同様に、曰く形容しがたい。

銀座というよりは、有楽町や、
大手町などの古いビル地下にありそうな気もするが、それだけでは、
書き尽くしていない。

なにか、やはり、様式美、というのか、様式味、というのか、そのあたりの
境地にまで、達しているような気がする。

真似ができそうで、きっとできない。
秘密のフライパンであろう。

南千住のうなぎ尾花
とは別の意味で、お客を含めた、雰囲気込みで、
東京昭和の外食文化を代表する、
重要無形文化財的価値が、あるのではなかろうか。

ジャポネ TEL 03-3567-4749
〒104-0061 東京都中央区銀座1丁目1−1


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