断腸亭料理日記2004

ふぐ

1月4日(火)夕食
筆者、特段、ふぐに思い入れがない。

これは、東日本の人間だからであろうか。
ふぐといえば、関西。
とくに、大阪、瀬戸内から門司や博多なのであろうか。
また、季節のもの。冬の風物詩でもある。

鍋は、西のふぐ、東のあんこう、などともいう。

九州も含め、関西で季節に、もっともうまい、ふぐ、を、
食べたこともない、からであろうか。
しかし、まったく食経験が皆無かといわれると、そうでもない。
どうでもよい、居酒屋だったりするのだが、博多で
鍋、刺身、唐揚げなど一通りは、食べたこともある。
しかし、特に印象に残っていないのである。

また、東京で、ふぐといえば、かなりの高級品でもあり、
あまり、庶民の口に入るものでもない、というイメージも強かった。

松茸、鱧(はも)などと似たような、ポジション。

西日本の季節感を顕した高級な、食物、といったところ。
本音を言うと、それほど、大騒ぎをするほどのものなの?、である。

江戸時代、ふぐは、あたるもので、武士は、たしなみとして、
食べてはいけないものであった、ということは有名である。

得意の落語でも、あまり出てこない。

「らくだ」という噺がある。
ここに出てくる、死体である「らくだ」こと「丁の目の半次」というヤクザもの。
こやつ、ふぐを手料理して、あたった、という設定であった。
これをみても、この頃(幕末〜明治初め)も、あまり、
高級なものではなかったようである。

また、ふぐ調理師の免許が、全国一律に決められたのが、
昭和28年ということで、やはり、さほど、古いものではない。

これ以前は、店毎に、許可が出されていたということである。
ちなみに、許可の第一号は、下関の老舗割烹旅館、春帆楼だそうである。
ここは、日清戦争後の、下関条約が結ばれたところとして、有名である。
このとき、宿泊していた、伊藤博文首相が、シケで他に魚がなく、
仕方なく、当時も禁制品であったふぐを食べ、うまさに感心をし、
許可を与えたという。

関西では、ふぐのことを、鉄砲、というそうな。
これは、文字通り、あたる、からである。
(そこから、てっさ、てっちり、という言葉が出ているのは、有名。)
一説では、正式な許可を得ていない、店を、鉄砲、と言った、
ということである。

東京での許可一号は、人形町の「かねまん」。(創業は明治13年。)

ともあれ、、今(でも?)、浅草には、近隣では有名な、三浦屋をはじめ、
ふぐ料理を看板にしている店が、集中している。なぜであろうか。
東京人は、元々あまり食べなかったのでは、ないのか?
いつ頃なのか、流行ったことがあったのであろうか。
ともあれ、これらが、軒並み、高価である。
コースで7〜8千円は安い方、1〜1.5万円超、まごまごすると2万〜。
浅草ふぐ料理組合

なかなか、入ってみようとは、思えなかった。

この冬、少し勉強をしよう、と、思い立った。

いきなり、老舗高級店は、敷居も高いし、リスクも高い。
最近増えている、チェーンの格安ふぐ料理屋へ行ってみることにした。

最も高価なのは、天然のとらふぐ、、、らしい。
そして、格安チェーンは、泳いではいるが、養殖、、、らしい。

『とらふぐ亭』というところの、上野御徒町店。

刺身、鍋、唐揚げ、雑炊など、一通り付いた、
泳ぎとらふぐコース、というので、¥4980。

皮刺し。小鉢で、千切りにされた皮が、あさつきと、ぽん酢で和えられている。
ぽん酢の味と、食感を楽しむものであろう。

刺身。てっさ、である。
直径、20数cmの皿に、比較的小さめ、幅2cm、長さ3〜4cm程度に
切られたものが丸く盛り付けられている。
やはり、ちょっと貧弱な印象は否めない。
これもやはり、ぽん酢。
もっと、大量に、食べなければ、わからない、のか、、。
今一つ、ピンとこない。

鍋。てっちり。
薄い身よりも、骨に近い、コリコリした部分が、うまい。
ゼラチン質と、上品な旨味、であろう。

まとめる必要もなかろうが、ほとんどすべてが、ぽん酢の味である。
やはり、ぽん酢の良し悪しが気になる料理であろう。
自家製、であるかどうか、が、一つの看板にもなっていると
聞いたこともある。
(ここのものは、濃い、感じがした。)

ともあれ、一度は、リスク承知で、
いいところで、食べてみなければならないか・・・。
あるいは、他にもある格安チェーンを回ってみるか・・・。
本場で、安くてうまいものを食べないとだめか・・・。

食べ慣れないと、わからないことは、確かであろう。

本当に、うまいものならば、
食わず嫌いで、敬遠しているのは、もったいない。

とらふぐ亭


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