断腸亭料理日記2024
4678号
11月15日(金)夜
今日は曇り。最高気温17.7℃(19時48分)。
ちょっと暖かいといえようか。
さて、また、鍋。
これも、池波レシピ。
「蛤の湯豆腐」「鶏と大根の鍋」とくれば、
これも出さねば。
「浅利むき身と大根の鍋」。
これも仕掛人梅安シリーズ。
「梅安最相傘」。
という一篇に出てくる。
季節は、春先、、まだ雪もちらつく、、今の
二月下旬あたりであろうか。
針医者をしている梅安は、品川台町、今の五反田あたり、
の自宅兼針の医院で、患者の帰った後の遅い時刻、
焜炉の上に鍋を掛け、この鍋を冷酒で食う。
蛤にしても浅利にしても、貝の旬は、春先というのが
一般的であろうか。
初夏になると産卵期で食べられなくなるが、それ以外で
あれば、年中食べられるであろう。
浅利のむき身と千六本に切った大根を、やっぱり、
薄味の出汁で煮て食う。
まあ、これもかなり簡単なものである。
浅利むき身というのは、江戸東京の庶民にとっては
身近なおかずであったといってよいだろう。
町々に、魚やが売りにきていた。
値段も安いものであったろう。
私の子供の頃食卓にも小松菜と浅利むき身をしょうゆで
煮た、煮びたしがよく出ていた。
浅利むき身は、今、見つけることの方が難しく
なっている。スーパーにはまずそんなものはない。
浅利の値段よりも、むく人件費の方が高かろう。
ゆでた冷凍ものもあるが、こればかりな生でなければ
意味がない。まったく別物である。
生からでなければ、よい出汁がでない。
幸い、吉池には、ありがたいことに、生の浅利むき身を
ほぼ必ず置いている。
買いに出ると、やはりあった。
韓国産、1パック300円ほど。
少量なので、3つほど。
それから、大根。
先日の反省を生かして、今日は一本の大根。
それから、粉山椒。
薬味である。切れていたので、購入。
浅利むき身。
韓国産は、浅利もむくのも韓国なのか、むくのは
国内か、わからぬが。
戦後まで東京の貝のむき身は、浦安あたりで
女性たちがむいていた、と聞く。
この値段であれば、もはや庶民のものではなく、
立派な高級品である。
中身は変わらないのだが、妙なものであろう。
大根は一本で買ったので、先の方。
千六本という言い方は、今はあまりしない。
千切り、である。
やはり大根の千切りは繊維方向に長く切りたい。
大根の先、5cmほど切り皮をむく。
先に板状に薄く切り、さらに細く切る。
煮えやすいので、今日は薄く、1mm程度に
してみる。
むき身は、洗うだけ。
これで、むき身は2パック分。
やっぱり、火鉢。
炭を熾し、火鉢に埋けておく。
ステンレスの小鍋に水を張り、大根とむき身。
しょうゆを少し。
これも作品では、薄味の出汁と書かれているが、
しょうゆを少し入れる。
先の鶏と大根の鍋の大根は大きく切っているので
味が染みるまでにはいかない。
それで、食べる時にしょうゆを多めに掛ける。
この違い、で、ある。
このまま、煮立て、煮る。
むき身も大根もあっという間に煮える。
火鉢へ。
暖かいものあり、今日は、ビール。
小鉢に取る。
山椒を振る。
浅利というのは、身は、微かに苦みがある。
つゆにこれが出ないのが不思議、で、ある。
ともあれ、それで粉山椒はほんの少しでよいが
掛けたい。
そのままの味、といってしまえば、そのままなのだが、
浅利もうまいし、大根もうまい。
やはり大根は切ったもののではなく、1本で買うと
味は違うよう。
そして、また、なにより、つゆがうまい。
先に書いたように、つゆには苦みは出ない。
おそらく浅利のはらわたなのであろう。
3パック、全部平らげてしまった。
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