断腸亭料理日記2024
4600号
7月13日(土)第一食
さて、連休。まあ、私にはあまり関係はないのだが。
今日は内儀(かみ)さんの希望で、末広町の
ひつまぶし[美濃金]。
先日一人で、初めて行ってみた。
名古屋名物かと思うと、岐阜にもあったひつまぶし。
私も30代の頭に3年弱、名古屋に転勤で住んでいた
ので、好きでよく名古屋で食べていたが知らなった。
よくあちらでは、愛三岐(あいさんぎ)といって
愛知、三重、岐阜の三県がセットで同じ文化圏と
いわれる。ただ、微妙なのは三重県で、津、伊勢
だったり、西、あるいは南へ行くと、多少関西圏
寄りになるよう。駅の立ち喰いうどんのつゆにも、
名古屋のしょうゆの色から透明な関西風になる
ラインがある。ひつまぶしにも、なくなるラインが
ありそうであるが。
ともあれ。
[美濃金]は東京でちゃんとしたあちらのひつまぶしが
食べられることが分かった。
調べると、他にもなん軒が東京にもあるようだが、
近くで食べられるのは、有り難い。
夜行くので予約をして、18時に。
テーブルに掛け、例によって、スマホから注文。
今日は、前回食べた肝付きが売り切れのよう。
やはり、肝というのは、そう多くは取れないので
夜にはないことが多いのかもしれない。
注文は、ビールとノーマルなひつまぶし並。
浅漬けがくる。
名古屋の味噌煮込みや[山本屋本店]でもご飯を頼んだ
場合であったか、うまい漬物が先に出て、途中、お替り
もできたりした記憶がある。
なにかあのサービスを思い出させる。
そして、きた。
肝焼きがのっていないだけで、前回とまったく同じ。
お櫃の中はご飯と蒸していない、パリパリの短冊に切った
うなぎ蒲焼。
出汁巻き玉子に海苔など、各種薬味類。肝吸い。
うな茶用の出汁。
そういえば、今日気が付いたが、出汁があるので、
肝吸いは、いらないのかもしれぬ。
そして、奈良漬けと昆布の佃煮。
前回書かなかったが、そう、奈良漬け。
東京のうなぎやでは、お新香、中心はぬか漬けで
奈良漬けを出さないところがほとんどであろう。
名古屋圏にも名物の長い大根の守口漬けという
粕漬がある。
やはり、うなぎ蒲焼に瓜の粕漬、奈良漬けを合わせるのは
名古屋以西の習慣といってよいのか。
それにしても、なぜであろうか。
東京だと濃い味の蒲焼にはさっぱりしたぬか漬けで、
私はこちらの方が、慣れているのもあるが、合うと思うが。
ともあれ。茶碗によそって、
そのまま食べる。
やはり、このパリパリの甘い蒲焼も、うまい。
むろん、東京の人間なので、蒸したふんわりの
蒲焼がスタンダードであるが、不思議と違う
食感の西日本式も拒否感なく、うまい。
やはり、それだけ特に名古屋圏の焼きの技が
素晴らしいのであろう。
薬味掛け、うな茶も食べ終わる。
と、お茶がでた。
これ、岐阜県の白川茶というお茶らしい。
なかなか濃い。いわゆる深蒸し茶かもしれぬ。
静岡掛川のものだが深蒸しは私が家で飲んでいるもの。
東京の鮨やで出される濃いお茶は深蒸しが多い。
掛川では深蒸しが多く作られており、ここのものを
買っているわけである。調べると白川茶でも深蒸しはあるよう。
それにしても、岐阜でお茶の作られているのは
私は知らなかった。これも意外である。
白川茶の歴史は、鎌倉、室町までさかのぼれるらしい。
お茶の歴史というのはそういえばよく知らない。
調べてみたので、余談だが、書いてみる
隣の愛知県にも西尾茶というのがあるのは知っていた。
ここもやはり同程度の歴史があるよう。
お茶の原産地は中国南部の雲南あたりの山地。
それで、もちろん中国渡来だが、古くは奈良、平安には
入ってきていたようだが、本格的に国内で栽培されるように
なったのは、禅宗の入ってきた鎌倉、室町期から。
愛知や岐阜のお茶の栽培が始まるのもちょうどこの頃になる。
お茶の産地は気候的に今も西日本中心だが、九州の八女茶、
中四国の茶産地も同じ、鎌倉、室町期に始まっているよう。
ついでに、ご存知の京都の宇治、静岡も同じ頃から。
鎌倉、室町期に今も作られている茶産地の多くで同時に
栽培、生産が始まっていることになる。
喫茶は当初はやはり寺から。その後戦国時代にかけて武士、
文化人に広まり、ご存知のいわゆる茶道が始まるわけである。
信長、秀吉に仕えた千利休はあまりにも有名であろう。
江戸期には将軍家、各大名家では同朋衆などと呼ばれる、
茶道を役割とする家来を多く抱えていた。いわゆる茶坊主である。
江戸府内には下谷同朋町、神田同朋町、湯島同朋町などなど
各地に茶坊主の拝領屋敷由来の町名が多くある。
下谷練塀町のお数寄屋坊主、河内山宗春はで講談、芝居
になって有名だが、こいつも実在の茶坊主。江戸城内に出仕
している大名に茶を出したり、案内など身の回りの世話が仕事。
これがいわゆる表の、表坊主で200名。将軍周辺の茶道が
奥坊主でこれが100名もいたよう。
悪役になることが多いのは、大名のまわりにおり、情報を
持って暗躍する者もあったからのよう。
茶坊主自体で「権力者に取り入り出世や保身を図る者の
侮蔑的比喩」(ウィキ)にも使われるようになったわけである。
なぜ、彼らが剃髪した坊主なのかというと茶道というのは
隠世した者のすることとされていたからとのこと。
江戸期はこんなことで茶はまだ高価なもので、宇治茶を
将軍に献上する、お茶壺道中は有名。「♪ずいずいずっころばし
ごまみぞずい〜」である、
お茶の話、思いがけず長くなってしまった。
まだまだあるが、今日はこんなところで、お仕舞にしようか。
千代田区外神田6丁目14-3 VORT末広町II1階
03-6806-0328
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