断腸亭料理日記2024

浅草橋三丁目・洋食・一新亭 その2

4605号

引き続き、浅草橋三丁目、洋食の[一新亭]。

ここの営業は、夜はなくて昼のみ。

11時半〜14時半まで。

13時半前、到着。

入ると、そう広くない店内。
新しくはないが、もちろん清潔で小ぎれい。
こんなちょっとずれた時刻でも先客あり。

洋食やなので、以前はもう少しメニューがあったようだが、
今は、カレー、ハヤシライス、オムライス。
その組み合わせ。さらに豚のカツレツをのせたもの、
三食ライスカツ付き。
これで、1500円。

せっかくなので、一番高いこれを頼んでみよう。

ご主人、奥さん、娘さんであろうか、
三人でやられているよう。

ちょっと調理場をのぞくご主人は、白髪で、
もうだいぶお年を召しているか。

きた。

三食ライスカツ付き。

なるほど、これはすごい。

どこから食べようか、考えてしまう。

カレーは、ノーマルな家庭のカレーに
近いのではなかろうか。

カツはやはりカレーとともにカツカレーとして
食べよう。

そして、オムライス。
もちろん、オムレツではなく、
中にケチャップライス入り。

見た通り、フワトロではなく、私の好きな
しっかり玉子を焼いたタイプ。

そして、中のケチャップライス。

これが、かなりうまい。
なんというのであろうか。
油がラードであろうか。
ただのトマトケチャップだけではないような
懐かしい(?)、なんだかクセになる味。

そして、ハヤシライス。

ハヤシライスというのは、実際のところ、その味は
幅広いのでは、なかろうか。
デミグラスソース系、トマト系、、、。

そもそも日本のデミグラスソース自体も
その味は幅広い。

ここのものは、デミグラスソース系。
それも、ちょっと苦みのある、ビーフシチュー
といってもよい味ではなかろうか。
肉も牛か。
おそらく、手間はかなりかかっているのではなかろうか。

そして、食べながら壁を見ると、写真集の貼り紙。

「東京懐かし写真帖」

「東京レトロ写真帖」

実は、ご主人、秋山武雄氏、ご本人はアマチュア
と書かれているが、立派なプロ写真家であろう。

1937年(昭和12年)生まれ。御年87歳。
ここの三代目。
もちろん、ここで、生まれ育たれた。

15歳の頃から写真を撮り始めたという。

二代目、お父様が若くして亡くなられ、若い頃に
この店を継がなければ、いけなかったと。

この店を続ける傍ら、界隈や東京下町の街並み、
特に、人々を、昭和30年代からずっと撮り続け
てこられたのが、前記の写真集で、氏の独白調の
エッセーが添えられている。
読売新聞の東京版に連載されていたもの。

家庭の火鉢にあたる老夫婦。
道路でベーゴマに興じる子供達。
日本橋の都電の電停・車通りが多くまったく
安全でない“安全地帯”で鈴なりになって待つ乗客。
まだあった頃の、佃の渡船。
千住のお化け煙突。
などなど。

私は書いている通り、元浅草に住んでおり、
ここと同じ、鳥越神社が産土神。
(ちなみにここは、浅三町会。浅三は浅草橋三丁目。)
離れていはいるが、同じ鳥越祭。

この写真集には、昭和30年代からの鳥越祭風景も
モノクロの写真で載せられている。
今と同じ千貫の本社神輿と高張提灯の宮入りのもの。
私の住む七軒町の、色は分からぬが、今と同じ印の
染め抜かれた半纏の後ろ姿も見つけられた。

そんな祭風景の一枚に、たまたまであろうか、店前に
出した椅子に腰かけている在りし日の着物姿の古今亭
志ん朝師の写真もあった。(これ、他界される直前
だったよう。)

ご主人、ご高齢なので、ご健康が心配である。

ご馳走様でした。
おいしかったです。

 

03-3851-4029
台東区浅草橋3-12-6

 

 

 

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