断腸亭料理日記2023
4306号
3月24日(金)夜
さて、今日は赤坂[四川飯店]。
報道されていたが、先般、先代の建一氏が亡くなられた。
享年67歳、お若いといってよいだろう。
私などからすると近いが少し上の世代になる。
神のような日本四川料理の祖を父に持ち、若くして鉄人
としてキッチンスタジアムに登場する、同時に深夜まで
店の厨房にも立たなければいけない。
自ら語られていたが、当時、心身共に苛烈なストレス下に
置かれていた、と。さもありなん。
こんなことも建一氏の死を早めたのかもしれない。
明るくさっぱりとしたメディアでの語り口、また厨房で
中華鍋を華麗に振られる姿を今でも好感とともに
清々しく思い出される。
謹んでご冥福をお祈りする。
少し前に内儀(かみ)さんが予約をしていた。
17時半、やっぱり内儀さんとは店で待ち合わせ。
雨。
今日は、有楽町線の麹町から歩いてみることにした。
外に出ると、雨はやんでいる。
意外に暖かい。薄いレインコートを羽織ってきたが
歩くと薄汗が浮かぶほど。
花は満開だが、もう少しもちそう。
都道府県会館の角を左に曲がると、偶然内儀さんが
歩いていた。合流し店へ。
エレベーターで昇って[四川飯店]へ。
名乗って、奥のテーブルに案内される。
この時刻まだ広い店内はまばら。
今日のテーマ、目当ては、酸辣湯麺。
サンラータンメン、もしくはスーラータンメン。
酸っぱ辛いスープの麺。
酸辣湯麺も四川料理であったはず。
ここではまだ食べていなかった。
やはり四川料理の大本山での酸辣湯麺は
食べてみなければ、で、ある。
それから、よだれ鶏。
拙亭元浅草のご近所、今は休店中の[白燕]では
スペシャリテで、かなりうまい。
あれも、四川料理であったろう。
内儀さんの希望で、蒸しなすの生姜風味。
そして、定番の麻婆豆腐も。
ビールはサッポロ。
ここは黒ラベル。
よだれ鶏からきた。
取り分けてもらう。
青いのは、香菜、シャンツァイ。
中国なので、パクチーではなくシャンツァイと
呼ぶべきである。(ものを書くものの礼儀と私は
考えている。)
書いている通り、私はだめなので、内儀さんに。
見た目ほど辛くはない。
たれは、よだれ鶏としてはいたってノーマルな
うまい、よだれ鶏である。
[白燕]のものは、かなりクセになるなにものか、
があるのだが、そういうところは、ここのものには
ない。
先般のNHKBSの「マエストロたちの晩餐会」で
四川料理をやっていたのを視た。うろ覚えで
恐縮だが、日本の四川料理店というのは、やはり
ほとんどがこの店の系統という。で、このよだれ鶏
だけは、この店の系統生まれのものではない、と。
まあ、それだけ今も建民翁の影響はもの凄い、と
いうことなのであろう。
蒸しなすの生姜風味。
黄色いのはレモンスライス。
レッドオニオンのスライス。
なすなので淡泊。
中華ではあるが、まるで和の割烹料理のよう。
いつもの[四川飯店]の麻婆豆腐。
取り分けてくれて、さらに、白いご飯いかがですか、
と、お嬢さんが勧めてくれたのでもらった。
辛味もありながら、濃厚さもある、
バランスの取れた[四川飯店]伝統の麻婆豆腐、
で、ある。白いご飯に合うのは言うまでもない。
最後に、酸辣湯麺。
これも取り分け。
ご丁寧にこれも香菜付き。
ん!。
これ、黒酢である。
なめらかで上品。
うまい、酸辣湯麺。
私が、酸辣湯麺というと、なぜか中国飯店の
ものを思い出すのである。
市ヶ谷にあったのでよく食べていた。
万人の口に合う高級中華といった位置付けで
あろうか。
ここのものは、黒酢の印象はなく、卵、筍、
金華ハムなどの細切り。
やはりなめらかで上品、うまみ濃厚でうまかった。
そもそも、これ、四川でよいのだろうか。
出自、で、ある。
やっぱりこれも、この店発祥ではない、のかも
しれない。
知らないことは多い。
今度聞いてみようかしら。
ともあれ、うまかった。
ご馳走様でした。
会計は12,210円也。
千代田区平河町2-5-5 全国旅館会館5F・6F
03-3263-9371
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