断腸亭料理日記2023

浅草・弁天山美家古寿司 その2

4469号

引き続き、浅草[弁天山美家古寿司]。

 

 

 

 

にぎりに入って、おぼろをはさんでくれた
平貝

今日、ケースの中の平貝をよくよく見て
気が付いたのだが、これも生ではない。
酢に漬けているよう。

若親方は、内儀さんの好きなおぼろを
たっぷり挟んでくれた。

平貝は、サクサク。

おぼろというのは、毎度書いているが内儀さんは
なぜか好んでいる。
芝海老や白身をほぐして甘く味付けをしたもの。

子供の頃に弁当などの定番で、どの家庭にもあった、
でんぶに近いが、あそこまでは甘くない。

本寸法の江戸前鮨を標榜する鮨やでは今も
作っているところも多くはなかろうがあることは
ある。
海苔巻に入れたり、小肌などの酢〆のものに
はさんで握ったりする。

やはり、平貝も酢に漬けてあるのでおぼろが
登場する、というわけであろう。

ただ、平貝から酢を感じるのはほんのり。

今日は、なんだかあるねた食べ尽くし。

次は、これ。

煮いか。
先の、塩辛になったするめいか。
生のいかをにぎり鮨で食べるようになったのは
意外に新しく、明治になってからと聞く。
おそらく江戸前のすみいかであったのだろう。
火を通した煮いかはやはり古い形といってよいのだろう。
派手でもなく、置いている鮨やも多くはない。
通常、この甘いたれを塗る。

そして、ぶり。

これは、生であろう。
江戸前正統を看板にするこの店でぶりは正しいのか?。

ぶり、というのは、基本は西日本の魚であった。
民俗学では正月の儀礼魚。東日本の鮭、西日本のぶり。
お歳暮に送られていた。
東西の境界はこの場合は、糸魚川構造線。

今は温暖化で北海道函館などで大量にあがっているが
以前でも東京湾、房総あたりでも獲れないことはなかった
と思われる。
まあ、東京でにぎりの鮨にすることもあった、のであろう。

内儀さんの絶大なる希望で海老。

これはゆでて甘酢に漬けてあり、やっぱり
おぼろをはさんでよいたね。

ゆで置きして時間が経つと、パサパサになる。
この状態で流通をもしているので、気を付けないと
いけない。
甘酢に漬けるとしっとり、ぷりぷりが長持ちする
ということか。
完全にゆで立てで粗熱が取れたらにぎるところも
あるのだが、それが最もよいのかもしれぬ。

そして、これ。

なんであるか、おわかりになろうか。煮はま。

煮蛤。
煮はまはやはりこのくらい大きくないとにぎりには
ならない。ご承知のようにかなり値が張る。

今日は、塗った甘いたれがかなりうまい。
思わず、若親方に聞いてしまった。出来立て?。
その通り、とのこと。香りが違う。

まぐろ。中とろ。

見た目、赤身かと思ったら中とろとのこと。
柔らかく、あまく、極上。

そして、づけまぐろ。

おお。
これも、中とろ。
あまく、溶けるような脂。

ここでもそうだが、最近づけは中とろのものを
用意しているところも増えているよう。
本来、づけというのは、赤身をしょうゆ漬けに
するものであった。元来は足の速いまぐろの
日持ちをよくするため、幕末、馬喰町あたりの
鮨やが始めたと聞く。
冷蔵設備が普及し、次第にづけは見なくなった。
だが、再度、今度は、日持ちではなく、
うまいからづけにされるようになった。
しょうゆのアミノ酸が加わり赤身がねっとりと
あまくなるのである。

そして、拵え方のよる優劣もあろうが、もったいない
ようだが、さらに中とろの方が、確実にうまい。

さて、終盤。

海苔巻。

干瓢巻。これにも毎度のこと、
おぼろを入れ、右のものには、先ほどの
出来立ての甘いたれを塗ってくれた。

そして、これも内儀さんの希望の玉子焼き。

もちろん、これにもおぼろ。

なんだかおぼろばかり食べにきたよう。
こんなにおぼろの好きな客というのは、
この店でも、なかなかいなかろう。

玉子焼きは、もちろん江戸前鮨の玉子焼き。
鶏卵が貴重だった頃、嵩(かさ)増しのため
海老やら白身をほぐしたもの(味を付けていない
おぼろの繊維をさらにほぐしたもの。)を
混ぜて焼いた。
味は、お節の伊達巻が近かろう。
むろん、今はご存知の嵩増ししない厚焼き
玉子焼きが主流。

以上。
まさしく[美家古寿司]堪能。

勘定は26,620円也。
ご馳走様でした。
今年は、最後かな。よいお年を。

 

弁天山美家古寿司

台東区浅草2-1-16
03-3844-0034

 

 

 

※お願い
メッセージ、コメントはFacebook へ節度を持ってお願いいたします。
匿名でのメールはお断りいたします。
また、プロフィール非公開の場合、バックグラウンドなど簡単な自己紹介を
お願いいたしております。なき場合のコメントはできません。

 

 

 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5|

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |

2018 5月 | 2018 6月| 2018 7月| 2018 8月| 2018 9月| 2018 10月| 2018 11月| 2018 12月|

2019 1月| 2019 2月| 2019 3月 | 2019 4月| 2019 5月 | 2019 6月 | 2019 7月| 2019 8月

2019 9月 | 2019 10月 | 2019 11月 | 2019 12月 | 2020 1月 | 2020 2月 | 2020 3月 |

2020 4月 | 2020 5月 | 2020 6月 | 2020 7月 | 2020 8月 | 2020 9月 | 2020 10月 | 2020 11月 |

2020 12月 | 2021 1月 | 2021 2月 | 2021 3月 | 2021 4月 | 2021 5月 | 2021 6月 | 2021 7月

2021 8月 | 2021 9月 | 2021 10月 | 2021 11月 | 2021 12月 | 2022 1月 | 2022 2月 | 2022 3月 |

2022 4月 | 2022 5月 | 2022 6月 | 2022 7月 | 2022 8月 | 2022 9月 | 2022 10月 |

2022 11月 | 2022 12月 | 2023 1月 | 2023 2月 | 2023 3月 | 2023 4月 | 2023 5月 |

2023 6月 | 2023 7月 | 2023 8月 | 2023 9月 | 2023 10月 | 2023 11月 | 2023 12月 |

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2023