断腸亭料理日記2023
4403号
8月27日(日)夕
さて、日曜日。
今日は浅草[弁天山美家古寿司]を予約してある。
二週間といっていた夏休みももう終わっている。
日曜は夜の営業はない。
最後の16時半から。
タクシーもなかなか捕まらないので、歩いて向かう。
夕方だが、歩くとやっぱり暑い。
元浅草の拙亭から、浅草弁天山までは歩くと
15分から20分。
弁天山は店の名前に入っているが、地名である。
浅草寺の境内南東の端っこにあるちょっと小高いところに
弁天様のお堂と、浅草の時の鐘が江戸の頃からある。
この小山が弁天山。
[美家古寿司]はその表側、馬道通りに面してある。
従って[弁天山美家古寿司]。
ずっと以前は[みやこ(都)寿司]という
屋号であったらしい。
到着すると、汗だく。
店に入って、若親方にご挨拶。
テーブルも含め予約で満席。
例によって、つけ場にはこの時刻は親方の姿はなく、
若親方と、今日は若い衆も握っている。
カウンター中央に掛ける。
瓶ビール、キリンが出る。
お通しは、まぐろの佃煮、か。
つまみは、、、と、、、
若親方が先に、今日、たこありますよ、と。
おお!、それはそれは。
つまみには、たこ、といつも思っているのだが、
なかなか、ない。
幸運、で、ある。
では、たこと、鰹。
たこは、塩で。
これが、この店の、たこ。
色が違うのがおわかりになろうか。
臙脂(えんじ)というのか、ちょっと濃い。
普通のたこははもう少し鮮やかな赤であろう。
普通、たこは産地でゆでて流通している。
多くの鮨やはそういうものを使っている。
ここでは、よい生のまだこを買って江戸前技でこしらえる。
それで、こんな色になる。
色だけでなく、うまみも増し、柔らかさも増す。
香りもよい。
東京湾のまだこは、三浦半島付近だが、
やはり例によって、なかなか獲れないよう。
入荷も少ない。
それでなかなかお目にかかれないのである。
だが一方で、珍しいものが、今日は食べられたから、
よかった、と喜んでばかりではいけないと思うのである。
東京湾の穴子も然りであるが、たこは資源保護という
観点で考えられているのであろうか。
なぜ獲れないのか、わかっているのか。
持続可能な、江戸前鮨でなくてはいけなかろう。
食べる側の意識も大切と考える。
東京湾で獲れなくなった、オリジナルの江戸前鮨の
種は少なくない。芝海老、車海老、白魚も然り。
これらは江戸前の代名詞であった。すみいかは
東京湾に生息していると聞くが、流通はしていないよう。
せめて残っていたものは大切にしなくてはいけない。
さて。
鰹。
それから、おまけで、ゆでたすみいかの下足も
出してくれた。
今のすみいかを新いかという。まだ子供の特別柔らかいもの。
鰹、たたきは辛子じょうゆ。香ばしく、脂もある。
ここでは、なぜか生の方が多かったように
思って、たたきは珍しい?と、若親方に聞くと、
そんなことはない、と。
たまたまで、あったよう。
つまみは、ここまで。
ここからにぎり。
まずは、いか。
(ちょっとピンボケ)
ゆでた下足で出たが、すみいかの子供。
このにぎり一つで、一杯分。
生まれたばかりで、ごくごく柔らか。
新いかは、昔から心待ちにされてきた。
この季節だけのもの。
次は、白身。
しまあじ。
白身に入れるかどうかは議論があるかもしれぬが、
うまいもんである。
ちょっとプリっとした歯触りとよい脂、香り。
そして、平目。
もちろん、ここなので、昆布〆。
昆布〆というのは、生とは明らかに別の食べ物
で、ある。昆布が水分を吸い、かつ、うまみを
加える。
味噌汁を出してくれた。
いつも出してくれるが、海老の頭の出汁。
海老だけではなく、通常の出汁も取っている
のであろう、濃厚。
つづく
台東区浅草2-1-16
03-3844-0034
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