断腸亭料理日記2023

浅草・弁天山美家古寿司 その2

4404号

引き続き、お馴染みの浅草[弁天山美家古寿司]。

つまみ、たこと鰹。
にぎり、白身、平目昆布〆と、しまあじ。
それから、すみいかの子供、新いか、まで。

ここから、光物に。

まずは、やっぱり、小肌。

小肌の新子。
新いか同様、小さな小肌。
長さはあるが、身は薄い。

もっともっと小さい、メダカのような大きさのものも
売られ、微細作業のようにさばいて〆て、なん匹も合わせて
にぎっている鮨やがあるが、まったくナンセンスである。
そんな小さいものは、酢の味しかしない。
小さければよい、というものではないのは明らか。
本末転倒であろう。
出す方も出す方だし、喜んで食う客もどうかしていよう。

次の光物は、きす。

きすといえば、一般には天ぷらだが、江戸前鮨では
〆て、にぎる。
以前はあまり価値がわからなかったのだが、
最近は、なくてはならぬものと思うようになった。
もちろん、うまい。
特に、今日のは、よい。
肉厚で、適度にしっとり。
やはり、〆すぎはよろしくないのか。

まだ、光物。
鯵。

これも軽くだが、〆てある。
鯵こそは、どこの鮨やでも今は、生をにぎる。
鮮度管理ができている現代においては、ものがよければ
生の方がうまい、と思ってきたが、やはりこれも
別物として、うまい、と。

貝。

内儀(かみ)さんの希望で、赤貝。
書いている通り、私は平貝以外あまり貝類は食べない。
これも気持ち甘酢に漬けてあるか。

そして、蒸し鮑。

これは、貝類でも別格。
江戸前鮨では、夏のもの。
従って、この夏は、随分食べたが、もうそろそろ
お仕舞。

こうした火を通した鮑をにぎるのは江戸前鮨
だけであろう。一般には生。
鮑の塩蒸し、などともいう。
蒸し、といっているが、実際は塩で柔らかく
煮て、もう一度煮汁を染み込ませるという
かなりの手間をかけているのである。

次は、海老。

内儀さんの好物。
若親方は、気を利かせて、おぼろを
多めにはさんでくれた。

次は、まぐろ。
まぐろヅケ、と頼むと、
赤身か、中トロ、大トロ、と。

大トロもあるのか?。
では、大トロ。

この姿、凄い。

もちろん、うまい。

ヅケ、というのは、元来はまぐろの日持ちのために
幕末、馬喰町あたりの鮨やであったか、発明された。

だが、まぐろの身にしょうゆのアミノ酸を加え、
うまくなる。
基本は赤身で行われてきた。もったいないようだが、
大トロでもむろん、よりうまくなる。
これは大発見。

しょうゆと書いたが、実際にはしょうゆに酒を入れ
煮立てて冷ました、鮨やでいう、いわゆるニキリに
漬ける。
このニキリの濃さと、漬ける時間が肝。
染み込みすぎると、食べられない。
自分でもやったことがあるが、思ったより
早く染み込むのである。
また、即席漬けでは不要だと思うが、普通は
表面を炙ってから漬ける。
赤身をしょうゆに漬けると黒くなる。
これを防止するという意図と、染み込みすぎを
防止するといういともあるのであろう。
むろん、これらが職人仕事。

中トロ、大トロのヅケ。
もっと一般化、定番化していくのかもしれぬ。

さて、トリは、海苔巻。

頼んだわけではないが、これを
巻いてくれた。

玉子焼きと、おぼろの細巻。

もちろん、内儀さん好み。
まったく、不思議と内儀さんは、このおぼろが
好物、で、ある。

今、東京の鮨やで、このおぼろを用意している
ところ、というのはどれだけあるのであろうか。
ここでは、芝海老と聞いたが、加熱し、ほぐし
味付けをする。
手間もかかる。
江戸前を看板にしていても必ずしもあるとは
限らなかろう。

江戸前鮨での使い道は、こういう海苔巻に入れたり、
先に出たように酢〆、酢漬け系のものに
はさんでにぎる。
私は小肌にはさむのが好きである。

ともあれ。

今日は、ここまで。

うまかった。

勘定は二人で合計、23,540円。

ご馳走様でした。

 

弁天山美家古寿司

台東区浅草2-1-16
03-3844-0034

 

 

 

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