断腸亭料理日記2022

浅草・今半別館 その1

4095号

5月23日(月)第一食

さて、今日は、浅草[今半別館]。

もちん、すき焼きの店。
浅草には[今半]はいくつかあるが、どれも別の店。

[別館]はその建物、部屋が戦後のものだが
東京には珍しい凝った数寄屋造りで素晴らしい。
これが好きで通っている。
もちろん、肉もうまいが。

今日は、内儀(かみ)さんが、すき焼き、ではなく、
しゃぶしゃぶが食べたいといって予約した。
すき焼きやには、むろんしゃぶしゃぶもある。

18時の予約。
雷門門前までタクシー。
降りて、仲見世の右脇の裏路地を浅草寺方向へ。
新仲見世も越えて、浅草寺の少し手前に
[今半別館]はある。

店の玄関左側に玄関とは別に、予約なしで入れる
ホール席がある。ちょいとのぞくとこちらも
そこそこの人のよう。

右の玄関に入り、名乗る。

松の間、とのこと。

お姐さんが、案内に立ってくれる。
松の間もなん度もきている。
階段をあがって二階、一番手前の座敷。

畳の座敷だが、黒塗りのテーブルと椅子。
最近の和食やは、もうこれが定着している。
私などはまだ、畳にちゃんと座れるが、
やはりそれでも椅子席の方が居心地がよい。

松の間は

松がテーマ。

この彩色された欄間の彫刻がすごい。

太い松の枝とつがいの二羽の鳥。おなが、か。
今であれば、一体どのくらいするのであろうか。
なん十万なのか、なん百万なのか。
桁もわからないが。

床の間の掛けじ。

いつも違うものが掛かっているが、これは
なんであろうか。
絵としては小さい。
名があるが、読めない。
丸いところに竹と右上は蛙。
つるの植物は、なんであろう、萩、か。
梅雨らしい。

奥の障子窓。

ここだけは、松ではなく、瓢箪。

入って左側、鴨居上の額。

書と竹の絵。
地は金箔?。であればかなりの豪華なもの。
右から、羅漢妙典禅尼、は読める。
書いた人の名か。

禅宗の尼さんのものということか。
であれば、禅画でよいのか。
その次の四文字二行はまったく読めない。
漢詩なのか。
書か、古文書を勉強しておくのであったと、
こんな時にはいつも思う。
その次は読める。昭和十六年辛巳。戦前のもの。
その後が、これを書いて進呈した人の名前のよう。
たくさん読む、見るのが勉強の方法なのだろうが、
今からでも勉強してみようかしら。

さて。
注文はしゃぶしゃぶの安い方のコース。
7,500円也。上は12,000円。違いは安い方が、肩ロース。
高い方がサーロイン。肉はどちらも産地非限定の和牛。
肩ロースの方が硬い。

ビールはここは、スーパードライ。
アサヒのお膝元なので、浅草は伝統的にアサヒが多い。
スーパードライも今年味が変わったといっているが
やっぱりよくわからない。
まあ、あまり呑まないせいだろう。

先付け。

すき焼きでも、しゃぶしゃぶでも、ここは
最初は、料亭メニューが出る。

緑色の胡麻豆腐のよう。
お姐さんは、えんどう豆の絹寄せ、胡桃のソース
といっていた。のっているのはアーモンドと
クコの実。

目にも鮮やか。
胡桃のソースも濃厚で、なかなかのもの。
えんどう豆というと、いわゆるグリーンピースと
同じものでよいのか。

えんどう豆は今が旬。
国産の生のグリーンピースは実えんどうというようだが、
これがそれ?。
売り場であまり見ないような気がするが、業務用にでも
まわっているのであろうか。

前菜。

左から、海老のみぞれ煮、白瓜の酒盗和え、
穴子押し寿司、姫もろこし海老餡かけ、あんずチーズ。

海老の頭のみぞれ煮。
みぞれ煮というのは、大根おろしで煮たもの
だと思うが、おろしらしさはあまりない甘辛煮。
うまい。

白瓜の酒盗和え。
瓜は先日、はぐら瓜の鉄砲漬けを作ってみたが
おそらく塩もみをした瓜と酒盗を和えたものであろう。
瓜のこういう食べ方もあるのか。
なかなか乙な酒の肴。

穴子の押し寿司は、小さいがまあノーマルなもの。

姫もろこし。
とうもろこしなのだが、この大きさで一本分。
ほんの小さなもの。
味はヤングコーンのようなもので海老の味噌
であろうかと、合わせてある。
かなり上品で乙。

あんずチーズは文字通り、チーズ味のゼリーに
あんずを入れたもの。

 

つづく

 


今半別館

03-3841-2690
台東区浅草2-2-5

 

 

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