断腸亭料理日記2021
3866号
5月30日(日)第二食
さて、日曜日。
今日は、内儀(かみ)さんの希望で、
浅草寿町の、とんかつ[すぎ田]。
前回は去年の11月なので、ちょっとご無沙汰。
なん年連続かわからぬが、今年もミシュラン
ピブグルマン認定。
簡単なことではなかろう。
たいしたものである。
むろん、とんかつやで、私もとんかつを
食べに行くのだが、内儀さんの目当ては、
ロースソテー。
豚ロースのソテーだが、ここのものを
気に入っている。
洋食やには必ずあるメニューだと思うが、
他のものではなく、ここのがよいよう。
昼、TELを入れてみると、以前は予約ができた
と思うが、今は受けていない。
(昼の営業もしていなかったような気もするが
今はやっているよう。)
夜は17時からのはずだが、17時半からと
言っていた。
17時半を目指して、歩いて出掛ける。
5〜6分、きてみると、既ににぎわっている。
え?、やっぱり17時から開けていた?!。
ただ、幸いカウンターにはまだ空席があり、
座ることはできた。
ちょうど、ご主人、揚げ鍋の前。
どうも、10人前というオミヤの注文がこの時刻に
あって、30分後へずらして言っていたよう。
まあ、そういう事情なら、致し方なかろう。
座れたのだから文句はない。
注文。
ロースのとんかつ(2200円也)と、ロースソテー
(2400円也)。
それから、海老フライ(2900円)。
もうなん年もここへくれば、この三つ。
海老フライも特大のもので、名物といってよい
だろう。
それから、ノンアルビール。
なんだか、昨年から随分と店の様子が変わっている。
カウンターの中、調理補助というのか、
若い男性が二人入っている。
お弟子か。
こんな時期だが、攻めの姿勢。
お母さんは相変わらず、お元気で出ておられる。
ご主人一人では、やはりたいへんであった。
先代が亡くなられて、当代になりしばらくたったが、
先に書いたようにミシュラン連続。
脂が乗ってきたというところかもしれない。
見た感じも、少し貫禄がでてきたかもしれぬ。
先代はガタイも大きく髭がトレードマーク。
お客には柔らかいが、大きな声で、個性的な
頑固親爺であった。
当代は背はそこまでは高くなく、ちょっと見には
優しく、ともすれば頼りなく見えていた。
以前からの有名店、これを継ぐのは、荷が重かろう
などとも見えた。しかし、店を継いでも肩肘張った
ところはなく、等身大でやっていこうとも、
話をされていたように思う。
実際のところ、晩年の先代よりも、継がれてすぐでも
既にむしろ上手かったように記憶している。
ノンアルビール。
お通しは、先代の頃から変わらない。
飛子の入ったうにクラゲ、で、よいのか。
これ、昔よりもうまくなっているように
思うのだが、気のせいであろうか。
混んでいるが、意外に早くきた。
ちょっと、気を使っていただいたのかもしれぬ。
ロースのとんかつから。
切り方、盛り付け方が美しい。
そして、切り口を見せてちょっと扇型に広がって
いるように見える。これも、以前から少しずつ、
変わってきているように思う。
衣はこんがり狐色。
切り口はやっぱりほんのりピンク。
そして、多すぎず、ちょうどよい量の脂身。
もちろん、最初は塩で。
油切れ、衣の状態、肉のうまみ、その他、
文句の付け所は見当たらない。
極上のとんかつといってよいだろう。
そして、海老フライ。
特大だが、ただ大きいだけではない。
プリプリ。タルタルソースもうまい。
内儀さんのロースソテー。
あまり頼んでいる人はいないと思う。
だが、うまい。
肉は、とんかつのロースよりも脂身が多いのでは
なかろうか。
ウイスキーで目の前でフランベしているのを見ている。
完全に飛ばし切っていないのであろう、香りは
かなり残っている。バターにしょうゆも入っているか。
濃厚。
これが他にはない[すぎ田]のロースソテー。
あらかた食べ終わり、今日はご飯と豚汁ももらう。
生姜の香りが漂う豚汁。
味噌は濃厚。
ちょっと厚めに切った大根がうまい。
十分堪能。
ご馳走様でした。
うまかった。
やはり二代目、磨きがかかっているだろう。
益々、愉しみ。
台東区寿 3-8-3
03-3844-5529
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