断腸亭料理日記2020
9月23日(水)第一食
さて。
昨日、鰈のムニエルを作ったが、同時に吉池で
開いた生の小肌を買っていた。
いつも、というわけでもなさそうだが、対面コーナーに、
早い時刻であれば、開いたものがあるようである。
きす、小肌、小鯛、、小さな魚を開くのは、かなりの手間。
実際に、技術的にもむずかしい。
小肌の開いたものがあれば、もちろん、にぎりになる。
1枚70円。10枚買ってきた。
これ。
出すとこんな感じ。
塩をする。
美しく、開かれているではないか。これで、2時間。
身が薄いので、鯖などよりも見てわかるほどは
水は出ない。
2時間までなくともよいのだろう。今は鮨やでも、浅めに
〆るところもあるが、きつめに〆るのが好みでもあり、
安全でもある。
一枚ずつ、酢で洗う。
これは、透明な穀物酢。洗った酢は捨てる。
新しい穀物酢:水、1:1、半割の酢に漬ける。
これも二時間。
毎度書いているが、塩抜きも兼ねている。
塩抜きを兼ねない、普通の漬け方であれば、30分でも
よいのだが、このくらいは必要のようである。
と、この間に、昨日の鰈のムニエルを焼いて、
食べ終わっている。
忘れて、二時間以上経ってしまった。
だが、きつめに〆るので、これは問題はないだろう。
3日でも置けば違ってこようが、2時間が4時間でも、
酢が入る量はあまり変わらないと思われる。
酢から上げて5枚だけ干す。
10枚は一度に食べる量としてはやはり多い。
半分はこのままラップで包み、冷凍してしまう。
初めてやるが、酢〆は冷凍可と聞く。
鯖の酢〆などではあまりやらないと思うが、小肌は
江戸前仕事では、干すという工程をとる。
水分を飛ばし、落ち着かせるという意図であろう。
落ち着かせるというのは、ぼんやりした表現だが、
より強く〆まり、味が熟(な)れる、という感じで
あろうか。
このまま冷蔵庫へ。
翌朝、様子を見る。
やはりこのまま、夜まで置くと、表面が酸化して
色が変わってしまう。
これはこれで、よろしくないだろう。
ラップで包んでおく。
夕方、飯をカタメモードで炊き始める。
例によって、飯台にも水を張っておく。
ラップに包んだ、小肌を出す。
このラップの中でも、水分が出ているのが、わかる。
ペーパータオルではさんで水分を取る。
にぎる準備として、半身に切り、頭側などに残っている鰭を
取っておく。
また、生わさびもおろしておく。
飯が切れたら8分蒸らし、一合分に、赤酢の鮨酢を合わせる。
合わせたら、ここも8分置く。
そして、にぎる。今日は、ここだけ動画。
どうであろうか、だいぶうまくなったとは思われまいか。
もちろん、トウシロウの域は出ないが。
出来た。
左三つにしょうゆをたらしている。
アップ。
この皮目、美しいではないか。
一番手前のもの。お気付きであろうか。十字の包丁目入れてみた
のであるが、残念ながらなんの効果も発揮していない。
ビールを抜いて、食べる。
おお!、これ、我ながらかなりうまい。
酢〆もうまくいった、ということ。
もちろん、赤酢の酢飯とも絶好の相性。
うな重を食べるときに、たまに書いているが、
東京に生まれ育った者としての悦びを感じる。
なんと、うな重と、同じような感覚を今日は、感じた。
鮨やでも感じなくはないが、好物なので五個六個、食べたい。
だが、さすがに店ではそれはできない。それこそ野暮。
にぎり鮨は江戸・東京発祥で、いわば私にとってはうなぎ蒲焼
もそうだが、郷土料理である。
なかでも、小肌は、No.1、別格であると思っている。
むろん、うまいからではあるが、考えてみると、小肌という
小型のコノシロをここまで、磨き上げて、うまいものに
しているのは、江戸・東京固有のものであろう。
今日の小肌はどこのものか書かれていなかったが、
熊本天草あたりか。小肌、鮗(このしろ)は東北以南の
日本中の内湾におり、食べているところも多かろう。
だが、こんな小さな魚にさばくにしても、〆るにしても
細かで丹念な手間をかけて、さらに私はできないが、東京の
鮨職人は実に美しく、粋に、にぎる。ここまで磨き上げられた
小肌、鮗料理は他にないのではなかろうか。
それだけ、小肌が江戸・東京のにぎりのずしに合っていた
ということであろうし、それを江戸・東京人は長年愛して
きたのである。
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