断腸亭料理日記2020
6月5日(金)第一食
さて、昼。
久しぶりに、御徒町のとんかつ[とん八亭]に入ってみることにした。
とんかつは、ほんとうは[ぽん多本家]
でビールでも呑みながら、で行きたい。
しかし、夜はまだまだ心配。
昼は気を付けながら少しずつ。
それで[とん八亭]。
ちなみに、この二軒のとんかつ店はともにミシュラン
ピブグルマン。
どちらにしても、早く日常が戻ってきてほしいという思いは
皆同じであろう。
時刻は12時すぎ。
昼の御徒町の人出は、以前よりは気持ち少ないかもしれぬが
ほぼ戻ってきているか。
春日通りの北側。松坂屋の反対側。
中央通りから一本目の、本当に一、二間の細い路地。
路地の入口は[文久堂]というまむし店。
以前のこのあたりの雰囲気が想像される。
路地には名前がある。
「たぬき小路」。
路地の入口上にも看板がある。
由来はなんであろうか。
果たして、営業しているかどうか、わからなかかった
のであるが、とりあえずきてみた。
暖簾が出ている。
やっている。
戸を開けてみる。
狭い店であるが、席数を減らしているのかわからぬが、
人は入っている。割に不愛想なご主人が、大きな声で、いらっしゃい、
こちらへ。と、カウンターを指す。
あいている、カウンターの手前へ。
品書きを見る。多少メニュー数は減らしているのか。
1900円のロースを頼む。
ここ、注文から出てくるまで、そこそこ時間がかかる。
とんかつやにくる場合は、ほぼ必ずビールをもらう。
それで待ち時間が、つなげる、ということは
あると思う。
ここに限らず、とんかつやは、店の規模によらず
揚げているのは一人が多いような気がする。
その上、厚い肉を揚げるので、時間はそこそこかかる、
のである。
昼でもビールという選択肢もあるが、やはり、どうも
そんな気にはならない。
ややあって、きた。
外で、とんかつを食べるのはほんとに久しぶり。
自分で揚げたりもしているが、まあ、もちろん似て非なるもの。
アップ。
揚げ色はここは薄め。
切り口は、ほんのりピンク色。
ここは、脂身もしっかり入っている。
[ぽん多本家]などは、ほとんど取っている。
どちらもあり、ではあるが、ロースといえば、
脂身のうまみをたのしめるのも、うれしい。
薄い揚げ色というのは、低温で長く揚げているのであろう。
[ぽん多本家]もこのタイプである。
低温でゆっくり揚げるのは、かなりむずかしい。
私の昨日のかき揚げではないが、油温が低いと、油切れが
わるくなり、ベトっとした口当たりになるのが普通。
どうしているのかまったくわからぬが、
これをすっきり揚げるのが、技。
キャベツにはとんかつソースだが、
かつにはここも、迷わず、塩。
いやー、うまい。ここもラードであろう。
豚肉のうまみ。
少し前に、自分で揚げて、肉が薄くペラッペラになってしまった
のを書いた。
この時、このとんかつの豚肉のうまみというのは、薄くては
得られないものであることに気が付いた。
ソテーのような焼いたものとも違う。
衣の中で、ちょっと厚めの豚肉が、蒸されているような
状態になっているのではなかろうか。それで得られる豚肉のうまみが
とんかつの本体であろう。
やはり、天ぷらの職人仕事のような、微妙は仕事が
なされて、初めて生み出されているのであろう。
本来は洋食であったはずだが、優れて日本的な、素材を
突き詰めて、生かす考え方と技が発揮された料理であろう。
そして、脂身の部分には、辛子もつける。
これもよい。
そうである。
このご主人の技であれば[ぽん多本家]程度の、
もう少し厚くて大きいロース肉も食べてみたい。
値段は上がるであろうが。
ともあれ。
やはり、このとんかつが食べられるのは、ありがたい。
今回のことで、虚飾ではない真の価値というのか、ほんとうに、
うまいもの、うまい店、そして自分が食べたいものが、
取捨選択されたのでは、なかろうか。
皆様も同様に思われているかもしれぬ。
03-3831-4209
台東区上野4-3-4
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