断腸亭料理日記2019
11月25日(月)、30日(土)第一食
ここ、ご存知であろうか。
浅草橋の[水新菜館]。「水新」は、すいしんではなく、
みずしんと読む。私は、ずっとすいしんだと思っていた。
中華料理店である。
元浅草の拙亭からは、近所というのは少しあるが、
自転車で10分ちょいである。
以前から知っていたし、入ったこともあった。
うまい中華の焼きそばが食べたいと思い、ここに行き当たった。
私にとって、中華の焼きそばといえば、長らく有楽町の
[慶楽]であった。
[慶楽]は池波レシピでもあったが、焼きそば、春巻き、
牛肉バラかけご飯、なんというものが、抜群にうまかった。
しかしここも昨年、閉店してしまった。
最近、どこの街にも以前はあった、中華料理店、町中華流行り
であるが、焼きそばというメニューは、町中華ではない。
いつもお世話になっているご近所小島町の[幸楽]
でも、ちょっとない
いや、うまい店もあるのかもしれぬが、これ微妙なところ。
もう気持ち、本格寄り、のような感じではなかろうか。
だがまあ、ヌーベルシノワなんという、ハイポジションの
ところでもない。
[慶楽]同様池波レシピの神保町[揚子江菜館]
なども、うまい。
中華の焼きそばは、こんなポジションの店であろう。
と、いうことで、少し前に昼、行ってみたのだが、
これが、行列。
はー、こんなことになっていたのか。
古くからあるところで、うまい店ではあったが、
TVにでも出たのか、なにかブレイク中、のようである。
開店が11時半なので、水曜日、目がけてきてみた。
場所は、旧町だと浅草瓦町。江戸通り(蔵前通り)沿い、蔵前に
向かって左側。信号のある交差点の北側角。交差点の角地なだからか、
ちょっと斜めになっている。
開けた直後だがカウンターに座れた。
むろん、ほぼ満席。
迷わず「あんかけ焼きそば」900円也を注文。
ここは、眼鏡を掛けた、ちょっと太ったマスター(ご主人)が名物。
はい、アンヤキー、と、注文を通す。
聞いていると、半分はアンヤキ、かもしれぬ。
昔からではないと思うのだが、看板になっているよう。
人気メニューだからか、すぐにきた。
具だくさん。
白菜、にんじん、きくらげ、メンマ、ふくろだけ、豚肉など。
麺は?。
固まっているが、焦げ目も入っている。
ちょっとオイリー。
いや、これは決してマイナス、ではない。
焼きそばはやはりこうでなくてはいけない、というのが
私の好み。
これには、酢。
酢をかけ回して、食べる。
いやー、うまい、うまい。
びっくりする、というものではないのだが、正しい
あんかけ焼きそば、で、ある。
さて。話題の「アンヤキ」だけではいけなかろうと、
もう一回。夜に予約を入れて、こようかと思ったのだが、
金土と一杯とのこと。
昼だけでなく、夜もブレイク中のよう。
であれば、もう一度、土曜の昼。
今度は、店内の貼紙で気になった「イベリコ酢豚定食」950円也。
アップ。
イベリコ豚は最近は、スーパーにも並んでいる。
たまに食べる。
歯ごたえはあるのだが、柔らかい、独特の食感と、濃いうまみ。
そんな感じであろうか。
酢豚自体は、酸味強め。パイナップルなどのフルーツは
入っていない、いたってノーマルなもの。
この店、やっぱり、マスターがキーなのであろう。
愛想がよい。いい感じ。
明治30年(1897年)の開業とのこと。
マスターの曽祖父(ひいおじい)さんの頃。
このマスターの前まで、フルーツパーラーもある、
果物店であったという。
その曽祖父さんが新次郎で、水新の屋号になったらしい。
水は水菓子の水なので、スイ、ではなくミズと読む。
マスターは昭和24年生まれ70歳とのこと。予想通り、団塊世代。
今の中華店はマスターが大学卒業後すぐに継がれて、
当時好評であったラーメンと焼きそばに焦点を当て、
中華に転換したという。
(80C・ハオチー 2017)
さらに、これによればやはりポイントはサービスという。
「お釣りは両手でそっと握手をするように渡します」と。
確かに、マスターはそうしている。
マスターだけでなく、娘さんなのか、お姐さんも。
この記事が2017年だが、この頃既にあんかけ焼きそばは
人気No.1であったよう。
つまり、昨日今日のブレイクではない。
むしろ、迂闊であった。
03-3861-0577
台東区浅草橋2-1-1
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