断腸亭料理日記2018

麦とろ・まぐろやまかけ


10月28日(日)夜

麦とろ、で、ある。

昨夜、なにかのTVでやっていた。
私が食べたいのもあるが、半分は、内儀(かみ)さんの希望。

麦とろというのは、麦飯にとろろ。

浅草にはご存知の方もあろうがその名も[麦とろ]という
料理やがある。
我々もたまに行っている。

麦とろ、うまいものである。

昨年であったか、とろろ汁で有名な東海道丸子宿の江戸からの老舗
[丁子屋]さんのクラウドファンディングに参加し、大和芋など
送っていただき、うまさを実感した。

浅草の[麦とろ]も大和芋。

長芋もうまいが、断然大和芋。
粘りも強いし、うまみも濃厚。
もちろん、値段も高いのだが。

[丁子屋]さんから送っていただいたものを食べ終わった後、
やはり通販で取り寄せたりもしたが、それは妙にアクが強かったりし
なかなかむずかしいものであることもわかった。

今日は、近くで売っているものでやってみようと、
考えた。

先に麦飯の準備。
米を研いで、押し麦を入れ、水加減をしておく。
米二合に対して、麦90gほど。

大和芋は自転車で出たついでに、浅草松屋で調達。

棒状でそう大きなものではなくて、500円程度。

麦とろだけではさびしいので、マグロも調達。
そこそこよい中トロのサクとお安いバチマグロ赤身
切り落としを購入。

帰宅。

大和芋、群馬産である。

これはもちろん、切ったものであろう。
1/3くらいであろうか。
産地から取り寄せると一本ものの長いもので値段も
それなりに張る。このくらいの長さで十分である。

まずは、鰹削り節で出汁を取る。
量いらない。
常温に冷ましておく。

大和芋は洗って、ガスの火でひげ根を焼き切る。

皮ごとおろし金でおろす。

これは内儀(かみ)さん。

かなりかゆくなるようである。

そして、すごい粘り。
これが、大和芋、で、ある。

ここに、鰹出汁、全卵1個、酒、しょうゆ、わさび(チューブ)。

静岡県の[丁子屋]さんのレシピは味噌であったが、
やはり私は濃口しょうゆ。

出汁の量をどのくらい入れて、どのくらいにゆるめるのかの
塩梅がなかなか難しい。

この量で100cc、カップ一杯程度入れているが
このくらいでちょうどよさそうである。
また、全卵を入れると薄まる方向ではなく、むしろ
堅くなる方向のようである。

時々味見をしてしょうゆを足す。

よしよし、なかなかうまいものが、できそうである。

麦飯を炊き始める。

先に、山かけ。

中トロのサクを切って、かける。

ブツでよかったが、これは贅沢。
生の本マグロ、中トロ。

マグロにはまったく、とろろはよく合う。
そしてまた、やっぱり大和芋のとろろは、格別。

マグロ山かけ。
「マグロの山芋かけ」の省略形ということになろう。
“山かけ”は蕎麦でも使う言葉であるが
省略形として定着していたわけである。

これはいつ頃のことであろうか。

山芋をかける料理は、マグロが最も代表的といってよいだろうが、
実際にはもっとある。精力が付くという連想からかうなぎ蒲焼
にもかける。また、豆腐、納豆あるいは、ぶりの照り焼きなどに
かけたりするのは和食の定番である。
山芋自体はもしかすると、それこそ狩猟採集生活をしていた
米以前の縄文時代から食べていたのではなかろうか。
日本列島の長い長い歴史の中で様々な食べられ方がされていたことは
想像にかたくない。

ただマグロについていえば、定番の魚として流通に乗り、ちゃんと
食べられるようになったのは明治以降のことだと思われる。
蕎麦の山かけは江戸期には既にありそうだが、
マグロ山かけはそう古くから食べられてきたものでは
ないのではなかろうか。

ともあれ。

麦飯が炊きあがって、麦とろ。

青海苔を散らすべきであった。
だが、もちろん、うまい。

やはり、大和芋、単に長芋の粘り気を
強くしただけではなかろう。
味というのか、うまみというのかが、濃厚になっている
と思うのである。

うまい、うまい。

食べすぎぬよう、注意、で、ある。

 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5
|
2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 |2018 1月|2018 2月|2018 3月|2018 4月|

2018 5月 | 2018 6月| 2018 7月| 2018 8月| 2018 9月| 2018 10月|

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2018