断腸亭料理日記2018

鳥越祭2018 その1

6月9日(土)

年に一度のお祭りがやってきた。

私の住む台東区元浅草、町会名は七軒町。
元浅草からは少し南の方にある鳥越神社の氏子範囲で
住んでいて、町内会に入っていて町会費を収めて入れば
七軒町ではお祭りに参加できる。

毎年、お祭りがあって、その都度書いているが、
歴史がある“ちゃんとした”お祭りに参加できる
というのは、個人的にはとっても幸せなことであると、
思っている。

私自身、大学で民俗学を学んだということもあるが、
生来、お祭りというものが好きなのである。

お祭りというのは、どこに住んでいても必ずある
というものでもない。皆様も、参加するかどうかはともかくも
住んでいるところにお祭りがないところの方が
多いのではなかろうか。

古くからのマチやムラで、神社があれば普通はある。
ないのは新興住宅地。あるいは、過去はあったが、
神社への信仰心がなくなったり、地域の結びつきが薄れ
お祭りをするモチベーションがなくなった、金銭的な理由も
あるかもしれぬ。いろいろな理由があって途絶えた
ところもあるだろう。
いずれにしても、日本社会、どこにでもここにでも
漏れなくあるものではないわけである。
なんだか、これだけで論文が書けそうではある。

そして、これも毎度書いているが、幸せなことに
東京下町、台東区、にはほぼ漏れなく、お祭りがある。
住んでいるところによって、びっしりとどこの神社の氏子かが
決まり、そこの神社ではほぼ、お神輿の出るお祭りがある。
東京でもかなり例外的な地域なのではあるまいか。

神社があって氏子範囲がはっきりしていても
必ずしも、神輿が出る祭りが行われているとは
限らない。概ね山手は出ないところも少なくないだろう。

明治以降、山手は武家屋敷がそのままお屋敷町になり
お祭りに積極的に参加するような人が少なかったところ。
あるいは、オフィス街になり、担い手がなくなり
途絶えたというところもあろう。

江戸期から町であって、町人が多く住んでいたところ、
かつどちらかといえば山手ではなく下町、ということで
よいのか。

一方で江戸を代表する祭といえば、まず二つ。
神田祭と山王祭。これにあと二つ、浅草の三社祭と
深川の深川祭を加えて四つが江戸を代表する祭であろう。

神田明神と日枝神社は江戸の鎮守。
浅草を加えるのは歴史の古さ、規模の大きさか。
深川もやはり規模の大きさか。
これ以外にも、我々の鳥越のように江戸を代表する
というような言い方はされないが、歴史もあり、氏子範囲も
それなりに大きい祭はいくつかあって、さらにそれらの
神社の狭間にある、氏子が2〜3の町内だけで成り立っている
ような小さな祭まで。下町にはびっしりと祭があるわけである。

それらが、まれに秋のところもあるが多くは
5月から6月の土日を中心に行われる。

なぜこの時期なのか、というと、おそらくほぼ意味はない。
民俗学的な意味でも聞かれそうだが、実のところ、
江戸期にお上の都合で時期は移されており、
もともとどの時期に行われていたのかなど、
もはやわからなくなっている。

例えば、春の田植え、夏前の厄払い、京都の祇園祭などは
このあたり。あるいは八朔などといって、旧の八月一日。
これは台風シーズンを控えて無事と豊作を祈る。
(八朔は豊作を前もって祝う、予祝(よしゅく)なんという
言い方もされる。)
そして収穫に感謝する秋祭り。これが最も多いか。
もっともっと祭のタイミングはあるが、基本的には農耕に
合わせたものが多いわけである。
まあ、東京下町の祭は、ほぼ祭だけが独立して
存在しているといってよいだろう。

さてさて。

土曜日、AM。


歯医者の予約があり、外に出ると、こんな感じ。
実際には、前日の夕方から町内では準備は始まっているが
目に入るのは、このあたりから。

町内の神酒所の方にまわってみる。
町内神輿はこうして、テントの中。

専用の神輿蔵などを持っている町内もあるが
町の規模も小さい我が町は郊外に倉庫を借りて
直前に持ってきて、前日に組み立て、祭期間中は
こうして神酒所そばの路上のテントの中に
安置する。

神酒所(みきしょ)。

全国的にはこの名称ではないと思うが、
東京下町ではこういう。
祭は町単位で行われるわけだが、その町の祭本部
とでもいえばよいか。
なぜ神酒所というのであろうか。
お神酒を呑むところ?。
まあ、そうなのであろうが。
今度調べてみよう。

歯医者へいって、帰ってきてステーキを
焼いて、食う。

ハナマサのアンガスビーフ。
なぜだか、肉が食いたくなった。
ビールを呑んで、転寝。

内儀(かみ)さんが町内の神酒所で
町の手拭を買ってきた。

毎年図柄は一緒で、色違い。

中央に丸く、七軒。

この丸く七軒は、町内の揃いの半纏の背中にも
入っている。いいデザインではないか。

左隅に丸くあるのは鳥越神社の印(しるし)。
その下に、七軒睦。

「睦(むつみ)」というのは鳥越独特の言い方であるが、
町会の組織でありながら、鳥越神社の氏子の組織でもある。

祭自体の各種役職や、例えば正月の鳥越神社の初詣、小正月の
どんど焼き、その他、神社の諸行事に町会代表として参加し、働く。





つづく



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