断腸亭料理日記2017
9月9日(土)夜〜
さて、「江戸甘」、で、ある。
江戸・東京の伝統の味噌、
「江戸甘味噌」。
戦前までは、東京の味噌はほぼこれであったというが、
今はほんの少量しか作られていない。
どんなものか食べてみなければと、
前から課題にしていたのだが、先日通販で五反田の味噌やさんから
入手し、ぬた、ナスの油味噌、蜆の味噌汁を作ってみた。
味としては、八丁味噌と西京味噌を合わせた味。
以前から、私は、この赤味噌と白味噌の合わせをぬたや、
ふろ好き大根やらに使ってきた。
赤白の合わせは江戸料理の超老舗[八百善]のレシピに
江戸・東京の元来の味噌の味として書かれていたもの。
奇しくも「江戸甘」とはまったくこの味であったということが
判明した。
「江戸甘」はなにに使えばよいかというと、
書いたように、酢味噌和えのぬた。
あるいは、ナスやピーマンの油味噌、などの調味味噌として。
甘辛なので、なにも足さずにこのままで使える。
まあ、そんなところであった。
そして、東京の味噌はほぼこれだけであったというので、
であれば、味噌汁にもしていたのでは、と考え、蜆の味噌汁を
作ってみた。
蜆は江戸東京のごくごく庶民でも安く手に入る日常の
味噌汁の実であろうと決めた。
だが、これはちょいと失敗。
理由はよくわからぬが、蜆の味もぼやけ、味噌の味もぼやけ、
かなりイマイチなものであった。
そんなことであったのだが、今日は今まで行こう行こうと
思いながら、行けていなかった、浅草の[万久」という老舗味噌店に
行ってみたのである。
実のところ「江戸甘」はここで売っているのは知っていたのである。
なにも通販で五反田の味噌やさんから買わなくともよかったのだが
どうしたわけか、私は浅草をうろつくのは日曜ばかりで[万久]は日曜休みで、
気が付くといつも休みであった。
毎度書いているが、私の住む元浅草はちょうど上野と浅草の
真ん中にあって、買い物にしても、探索にしても、
なぜだか土曜は上野に行くことが多く、日曜は浅草に行くことが
多いのである。
[万久]の場所は、浅草寺二天門の馬道通りを挟んだ東側。
観光バスがたくさん停まっている産業貿易センターの裏あたり。
創業は文化元年(1804年)という。
まあ、楽に二百年を越えている。
建物は鉄筋のビルだが、いかにも老舗然とした雰囲気。
硝子戸を開けて店に入る。
店には眼鏡の女性。
私などと同年配くらいか。
女将さんであろうか。
店の中は昔の量り売りの味噌やの雰囲気。
プラスチックだが桶に入った様々な味噌が並んでいる。
あの、江戸味噌って、?。
あ、これです。
入った目の前にあった。
「江戸甘」。
1kg600円。
(安い。先日買ったものの半分だ。
いや、よく考えれば、あれは送料込で、同じか。)
じゃあ、これ1kgください。
(あ〜、まだこの前のがあるのに、まだ買うのか?!)
(ただ入ってきて、冷かして帰るわけにもいくまい。)
ぬた、ふろふき大根などに、と書いてある。
疑問をぶつけてみた。
これ、味噌汁にも使えますか?。
いや〜、味噌汁には甘すぎるでしょう。
あ、そうですか。
(え?、まじかよ。やっぱり!?。)
ん?、金山寺味噌もあった。
これは、我が家には必需品。
「万久特選」、江戸の味の金山寺?
どんなものか買ってみよう。
しかし、それにしても、戦前の東京にはこの味噌しかなかったのでは?。
であれば、先日の蜆の味噌汁はイマイチだったが、
庶民もこの味噌で味噌汁を作っていたはず、という仮説は
間違っていないと思うのだが。
その、江戸甘を扱う創業二百年の浅草の味噌やが、甘すぎるでしょ、
とは。いったいどういうことか。
以前は使っていたが、戦後信州味噌や仙台味噌が広まり、
東京人の味覚も変わってしまったということか。
依然として、疑問は解けないまま。
しかし、江戸甘を大量に入手してしまった。
消費せねば。
さしあたり、今日はぬただ。
吉池にまわって、まぐろの安い切り落としを買って帰る。
江戸甘と、金山寺。
まぐろぬた。
先日のものと多少でも味が違うのかと思ったら、
まったく同じ。
(それはそうであろう。)
そしてこれはリアルタイム昨日、9/11。
江戸甘を使った、米なすの田楽。
切れ目を入れて、フライパンで蒸し焼き。
江戸甘は酒と水で伸ばして、レンジ加熱。
まあ、これも江戸甘の使い道としては
想定内。
そして「万久特選」金山寺味噌でもろきゅう。
むろん、うまいが、特段、変わったところのない、
金山寺ではあった。
あとは、豆腐の田楽、、かなぁ〜。
しかし、味噌汁は依然として課題のままである。
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