断腸亭料理日記2017
引き続き、歌舞伎座團菊祭。
昼の部がはねて、入場。
これ。
劇場係員のお兄さん。
普段はスーツ姿なのだが、この半纏姿。
襟に音羽屋。
背中の写真は撮れなかったが、丸い鶴の印(しるし)。
音羽屋は尾上菊五郎家。
音羽屋の半纏なのであろう。
こんなのを見たのは初めてである。
團菊祭だが、なんであろう。
入ってプログラムを買って席に着く。
今日は中央ちょっと後ろ。
祝いの引幕。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
壽曽我対面
初 代坂東楽 善
九代目坂東彦三郎 襲名披露狂言
三代目坂東亀 蔵
六代目坂東亀三郎 初舞台
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一つ目の芝居、曽我は坂東彦三郎家の代替わりというのか
一家の襲名披露。
昼の部は、菊五郎孫の眞秀君の初お目見得が目玉であったが
夜はこの襲名披露が目玉である。
祝いの引幕の中央には、先ほどの音羽屋の半纏の背中にあった
丸い鶴の印。
これがどうも坂東彦三郎家の紋のようである。
プログラムで調べると、坂東彦三郎家の人々は、なんと
音羽屋。
うーん。
私のような素人にはさっぱりわからない。
菊五郎家の一門ということなのか。
また、この5月興行は「七世尾上梅幸二十三回忌追善」
「十七世市村羽左衛門十七回忌追善」という
サブタイトルもついている。
これもよくわからない。
七代目梅幸は、なぜ先代菊五郎ではないのか、
という疑問はあるが、菊五郎当代菊五郎の父ということ
なのでまだわかるか。
十七代目市村羽左衛門という名前は聞いたことがあるが、
この人はなに者か。
調べると十七世羽左衛門は今回襲名の九代目坂東彦三郎の
お祖父さんで八代目彦三郎のお父さん。
一先ず、なるほど。
だが、坂東彦三郎家がなぜ音羽屋なのか、
この疑問はまだ残る。
後でじっくり調べてみると、これがまたかなり複雑。
詳細はやめるが、ざっくりいうと、こんなこと。
元来、江戸の頃、やはり菊五郎家の弟子の坂東彦三郎があり
ここから彦三郎は音羽屋を名乗るようになっているようである。
その後、明治の頃大活躍した五代目菊五郎の三男が
六代目彦三郎として彦三郎家の養子になっており
血縁関係もできている。
やっぱり、一門、かつ血縁関係もあって
尾上菊五郎家と坂東彦三郎家はかなり深い関係。
こんなことも知らないと歌舞伎というのは理解できない
のである。
一先ず、こんなことで「壽曽我対面(ことぶきそがのたいめん )」。
これは襲名披露のための芝居といってよろしかろう。
国芳画 江戸市村座 初春寿曽我 弘化5年(1848年)
曽我五郎時宗:四代目市川小団次、曽我十郎祐成:八代目市川団十郎
工藤左衛門祐経:12代目市村羽左衛門、大磯の虎:初代坂東しうか
近江小藤太成家:四代目坂東三津五郎(五郎時宗は、現代は時至)
なん度か書いているが正月の芝居は曽我ものと
江戸の頃は決まっておりその代表例。
「寿曽我」は今もよく演られるので、私もなん度も観ている。
鎌倉時代、頼朝の頃。
曽我五郎、十郎兄弟と工藤祐経の仇討の話。
この対面は、工藤舘での祝いの席に曽我兄弟がお祝いといって
乗り込んでくるという場面。
舘の上段中央に工藤祐経。
これが座長格で、菊五郎。
一方の主人公が曽我五郎で襲名した九代目彦三郎。
血気にはやる五郎は隈取(くまどり)を入れた荒事の役で仇の工藤祐経に
立ち向かおうとするが兄の十郎はおとなしい和事の役で、まあまあと抑える。
一渉(わた)り芝居をして、襲名の口上。
昼の部の陰になってしまっているが
こちらも彦三郎家の孫侑汰君の初舞台。
口上だけでなく、侑汰君、六代目亀三郎は芝居にも
登場しちゃんと台詞もある。これを一ケ月毎日である。
3歳、4歳でこんなことができてしまうのは、やはり驚き。
長年こうしてきたのである。日本の伝統芸能おそるべし、ではないか。
とにもかくにも「寿曽我」という芝居も含めて
襲名まで、歌舞伎の様式をきれいに見せている。
これは、坂東彦三郎家をよく知らない者も
よくわかるし、なんだか気持ちがよい。
よいものをみせてもらった。
坂東彦三郎家も音羽屋であったこと、覚えておかねば。
つづく
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