断腸亭料理日記2017

五反田・路麺・讃岐うどんおにやんま

4月26日(水)朝

冷たい讃岐うどんの季節である。

讃岐うどんといえば、オフィスのある五反田の
[おにやんま]。

東京の讃岐うどんやというのは、むろん数々ある。

チェーンもあるが、一杯7〜800円、さらに1,000円近い
高級ともいえる店が主流であろう。

毎度書いている“趣味そば”というジャンルがあるが、
いわば“趣味さぬきうどん”とでもいえそうである。

“讃岐”はもはやブランドである。
とはいえ、うどんで一杯1,000円と近いというのは、
いかにも東京価格であろう。
本来、本場香川でも、いや、本場なら、そんな店は
成立しなかろう。

そう考えると、立ち喰い、路麺である五反田の[おにやんま]は
500円以下で食べられ、本来の讃岐うどんのポジションなら
このくらいが適正であろう。

店の内装や器など小洒落てなくともよい。
安くてうまい。
元来はそういうもののはずである。

朝、10分ほど早く出て、五反田の駅東口に降り立つ。

オフィスとは反対側に歩いて、ガードの通りの向かい側に渡る。

8時ちょいすぎ。
このくらいの時刻であれば、まだ十分すいている。

券売機の前に立つ。

冷たいもの、冷たいもの。

ぶっかけの、おろしがよいな。

ここの看板の鶏天もほしい。

鶏天とのおろし、というのは見当たらない。
単品でもらうことになるか。

ん!。

手書きの新しそうなメニューがある。
しらすおろし。

これはうまそう。
鶏天はカロリーも高そうだし、これにしてみるか。

券売機の横の入口から入って、奥のあいているスペースに立って、
券を置いて、待つ。

ほどなく、きた。

アップ。

しらすおろしに、オクラ、花がつお。

よくかき混ぜる。

ん?。

つゆがない!。

昨年の夏もこれにはまったことがあったんだった。

ここの冷たいうどんは、全部ぶっかけではなく、
つゆが入っていないものもあるのである。

あとで券売機を確認してみたら、おろし系はみな
しょうゆと書いてあり、これがつゆなし。

新ニューのしらすおろしも、この例で、
置いてあるしょうゆを自分でかけて食べるのであった。
(讃岐うどんでは、ぶっかけではなくつゆなしの“しょうゆ”
だけで食べるのも一般的なのであろう。)

むろん、これも十分うまい。
もしかすると、これは関東のただの濃口しょうゆでは
ないのかもしれぬ。

シコシコの腰のある讃岐うどんはやはり冷たいもので
本領発揮である。

うまかった。

ご馳走様ぁ〜、と店を出る。

いかがであろうか。
冷たいつゆの入ったおろし、つまりぶっかけのおろし、というのは
作ってもらえないのであろうか。
あるいは、おろしだけ別に頼めるようにしてもらってもよい。
明らかに、おろし=しょうゆというのが、ここの主張のようである。

さて。

讃岐うどん。
なぜ、うまいのか。ちょっと考えてみた。

うまさのポイントは、腰が強いということ。

しかし、よく考えると、腰の強いうどんというのは
なにも讃岐だけではない。
五反田にも一軒あるが、東京多摩地区や埼玉県で昔から
作られ、食べられてきた、かの武蔵野うどんも腰は
かなり強い。

だが、讃岐の方に軍配が上がる。

なぜであろうか。
武蔵野のうどんは、冷たい場合は、ざるで食べる。
ごれが主流であろう。
冷かけ、ぶっかけ、しょうゆ、という丼の食べ方は
伝統的には存在しない。

なぜか冷かけや、ぶっかけの方が、うまいのである。

温かいものの方はどうか。
武蔵野うどんは、温かいとむろんしょうゆの濃い
関東風のつゆ。

これと讃岐のいりこ系の色の薄いつゆとどちらが
うまいのか。

私など関東の濃口しょうゆで育ったので、うどんも
黒いつゆがむろんあたり前であったが、関西の色の薄い
つゆのうどんを食べるようになり、今客観的に
評価することができると思っている。

うどんの場合、関西の色の薄いつゆの方が、うまい。

淡泊な味のうどんには関西のつゆの方が合っているのでは
なかろうか。
反対にうどんに比べて香りや味がある蕎麦の方は、
関東の濃口しょうゆのつゆの方が合っている。

もう一度、冷たいうどんに戻ろう。
ざるよりも、冷かけ、ぶっかけの方が、うまい。
武蔵野うどんも、ぶっかけの方が、おそらくうまかかろう。
なぜであろうか。
また、武蔵野では冷かけ、ぶっかけは発達しなかった。
これもなぜであろうか。
蕎麦では、江戸、東京では冷かけは発達しなかったが
その影響であろうか。

今日、結論はないのだが、ちょいとおもしろいテーマであろう。

 


おにやんま
品川区西五反田1-6-3


 

 

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