10月26日(月)夜
京橋で仕事終了。
さて。
なにを食べようか。
京橋というと日本橋と銀座、あるいは東京駅前八重洲界隈に
はさまれて、これ、というところはあまり思い浮かばない。
やはり、日本橋まで歩いて、ということになるか。
むろん、10分もかからない。
今日は洋食の[たいめいけん]にしてみようか。
[たいめいけん]で「タンポポオムライス」で、ある。
元来私は、オムレツというものがあまり得意ではなく、
前回初めて、それまで敬遠していた「タンポポオムライス」を
初めて食べて、流石にうまいものだと、関心もし、また
食わず嫌いはいけないと、反省もしたのであった。
「タンポポオムライス」というのは、今からもう30年も前の
作品だが伊丹十三監督の映画「タンポポ」から生まれた
メニューである。
今はこの家の看板メニューといってよろしかろう。
日本橋の洋食や[たいめいけん]は昭和6年(1931年)の創業で
今年で84年。東京の洋食やのなかでもむろん、押しも押されぬ
老舗である。
私は“池波レシピ”と呼んでいるが、わが敬愛する
時代小説家池波正太郎先生も足繁く通われ、
エッセイにも書かれている。
カツレツやコロッケ、グラタン、カレーなど
オーソドックスな洋食もうまいのだが、ラーメンが
この店のメニューにあるのも特徴であろう。
オムライスももちろん映画「タンポポ」以前から
メニューにあったわけだが「タンポポオムライス」という
特別な名前が付いているのは、伊丹監督の依頼で
この映画のために作られたもの。
「タンンポポオムライス」、正確なメニューの名前は
「タンポポオムライス(伊丹十三風)」は
ケチャップライスの上にオムレツが載っている状態で
客に供される。
つまりオムレツとケチャップライスが当初は
分かれているのである。
お客は、オムレツを真っ直ぐ横にナイフで切り開く。
そうするとオムレツは半熟の表面を見せて上下に分かれ、
丸く広がり、ケチャップライスの上を覆う。
オムレツとケチャップライスは別々に出すべきではないか、
というのが、伊丹監督の発想であったようである。
それでこういうアクションのあるメニューが生まれた。
実際に映画の中に、このオムレツを切り開くシーンが登場し、
私も含め、観客の目を驚かせたものであった。
この映画の公開が1985年、池波先生が他界されたのが1990年。
先生は映画狂ともいえる映画好きで、新作の試写を観に
行かれるのを長年楽しみにしておられ、エッセイにも
多数映画のことを書かれている。
今、生憎、「タンポポ」について書かれているかどうか
私はわからないが、85年はまだ先生は62歳で、
まず観ておられたであろう。
しかし、先生がここで「タンポポオムライス」を
召し上がる機会があったのか。
先生はケチャップライス、チキンライスがそうとうな
好物であったことは書かれているが、オムライスのことは
あまり書かれていないように思う。
このアクションのあるオムライス、はたして
どう思われたのであろうか。
さて。そんなことで「タンポポオムライス」に決定。
京橋から中央通り沿いに日本橋へ向かう。
日本橋コレドの脇を入り[たいめいけん]到着。
窓際の席に案内される。
瓶ビールに、ボルシチ、タンポポオムライスを
頼む。
注文を取りにきたお姐さんに、コールスローは
よろしいですか?と聞き返されてしまった。
ボルシチもコールスローも¥50。
ボルシチというのは、キャベツやじゃがいもが入った
トマトスープ。まあ、いわゆるミネストローネである。
コールスローはキャベツのコールスロー。
ボルシチだけ頼んで、コールスローは頼まかったので
聞かれたのであろう。
私が頼まなかった理由は、オムライスについていると、
思ったのである。
ビールがきて、ボルシチ。
ボルシチを肴にビールを呑みながら、待つ。
きた。
これが「タンポポオムライス」。
前にも書いているが、オムレツの表面はきめこまかく、美しい。
あ、コールスローはついていなかった。
カツレツなどにはついていたのだが、そうであったか。
慌てて、頼む。
さて。気を取り直して、
ナイフで慎重に横に切れ目を入れ、開く。
ちょっと難しそうにも思われるかもしれぬが、
意外に、誰でも簡単にできる。
このオムレツ→オムライスの皮、は玉子以外に他にも
なにか入っているのでは、と、前回も思ったのだが、
これ、チーズではなかろうか。
うまい。
コールスローもきた。
ここのものは、マヨネーズではなくドレッシングであろう。
さっぱりしたもの。
うまかった、うまかった。
ご馳走様でした。
勘定をして、出る。
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