断腸亭料理日記2015
またまた、少し戻るが、
1月24日、先週の土曜日。
寒い日が続いているが、ちょっとこってりしたものが
食べたくなった。
なにかというと、沖縄風豚の角煮、ラフテー。
豚の角煮というのは、和食でもあるし、
中華だと東坡肉(とんぽうろう)。
ただ、沖縄のラフテーは泡盛で茹でる。
それで脂がとても食べやすくなる。
ラフテーは、羅火腿と書くらしい。
中国から伝わったものなのか、琉球宮廷料理で
あったらしく、漢字で書くのはその影響かもしれない。
沖縄というのは豚肉食文化で、ソーキなどと並んで
代表的なものであろう。
豚肉食文化は肉食を禁忌としていた日本でも鹿児島、薩摩、
あるいは南九州では古くからあり、江戸の頃にも
継続していたようである。
また、フィリピンなども基本豚肉食文化で
豚ばら角切りをしょうゆで煮込んだ同様の料理はあって、
おそらく、海を挟んで隣接するこれらの地域は
共有する食文化を持っているのであろう。
ラフテーのレシピを覚えて作り始めたのは15年以上前。
名古屋で単身赴任をしていた頃。
時間はかかるが、さほどむずかしいこともなくできるので
今でも思い出したように作っている。
中国の東坡肉もそうだが沖縄のラフテーでも皮付きの
豚ばら肉を使うようだが、そういうものは
手に入らないので、普通の豚バラ塊をハナマサで
買ってくる。
それから、焼酎。
むろん、泡盛を使うのがほんとうなのだが、
これで茹でるので、大量に必要である。
安いペットボトル入りの焼酎を買ってくる。
塊を四角く切る。
大きな鍋に切った肉を入れ、水と焼酎半々で
ヒタヒタにする。
圧力鍋であれば早く柔らかくはなるのであろうが
以前の反省、酒類をたくさん入れたものを圧力鍋で
煮るとアルコールが抜けないので、普通の鍋。
ふたをして煮立ったら弱火で茹でる。
柔らかくなるまでだが、1時間半から2時間。
ふたをしないとすぐに煮詰まるし、
部屋中アルコール臭で、ムンムンになる。
1時間半ほどたった。
だいぶ柔らかくなった。
もうよいであろう。
アルコールで茹でるというのはどういうことであろうか。
茹で汁を見ると、脂はあまり出ていないのである。
茹で汁は半分ほど捨てて、味付け。
肉が小さくなっているので、鍋も小さいものに替える。
煮汁の量が少なくてすむ。
しょうゆ、砂糖を入れて煮込む。
15分、20分。
肉に色が付いたら、仕上げ。
鰹削り節を入れ、さらに煮込む。
沖縄なのに、鰹削り節というのは、妙な感じもしなくはない。
ちょっと調べてみて、驚いた。
昆布は富山県に次いでNo.2の消費量というのは
知っていたのだが、なんと沖縄県の鰹節の消費量は
昆布どころではない、全国No.1だそうな。
昆布は歴史的に、蝦夷地の昆布が薩摩を中継して琉球に入り、
さらに中国へ輸出されていた。
それで琉球人も昆布をよく食べるようになったという
説明がされている。
(富山県は蝦夷からの北前船の中継地という関係。)
と、いうことは鰹節もある程度入ってきていたことも
十分想像される。
あるいは、歴史的には明治以降になるが、沖縄は宮古島を
中心にして鰹漁と鰹節加工が高知県などから移殖されて産業化
していた時期があった。(「かつお節と日本人」宮内 泰介 藤林泰
岩波新書)
こういう関係もあるのかもしれない。
削り節のよい香りがして、10分ほど。
これで出来上がり。
盛り付け。
ビールを抜いて、食べる。
和食の豚角煮も中華の東坡肉もやはり脂っこい。
しかし、このラフテーは見た目には脂がちゃんと残っているのだが、
まったく脂っこく感じないのがまったく不思議である。
脂がアルコールで茹でることでなんらか化学的に変化を
しているのであろうか。
いくらでも食べられるが、やはり食べすぎはいけなかろう。
沖縄風豚の角煮、ラフテー。
うまいもんである。
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