断腸亭料理日記2015
引き続き、浅草の老舗寿司屋[弁天山・美家古寿司]。
昨日はつまみ、三品まで。
我々の前は、若い六代目なのだが、五代目の親方は
もう一組の男女の方。
この30代ぐらいと思われる男女、最初は日本人かと思ったのだが
タイからきた方のよう。
(見た目ではわからないものである。)
こういうところにも海外からくる、というのは
驚きではある。
にぎり鮨や日本食は、欧米に限らず、今や中国、東南アジアでも
一般化しているのは聞いている。
日本の、いや東京の誇るにぎり鮨を
こういう江戸創業の家で食べてもらえるというのは
まったくありがたいことではある。
親方も英語で熱心に説明をしている。
ビールから燗酒にしてもらう。
銘柄は、奥多摩の酒、澤乃井。
にぎりの前にガリ。
ここのものは自家製であったと思う。
にぎり。まずは、平目。
昆布〆、ということ。
むろん、ニキリを塗って出される。
平目は厚めに切られている。
いつも気になるのは、酢飯と種のバランスのこと。
正しい江戸前は、というよりはうまいにぎり鮨は、
というべきだと思うが、そこそこの酢飯の量
が必要であるということ。
これでもとばかり酢飯の倍ぐらいの大きさの
魚をにぎるところがある。
これならば、刺身で食べればよい。
にぎり鮨というのは、酢飯と種を一緒ににぎる
ことによって別のうまさを出現させる料理である。
実際に、刺身で食べるのと、酢飯とにぎったものとは
味が違う。よりうまくなる。
一瞬にぎるだけでアミノ酸が増えるともいう。
次は、鯛。
やはり切り方は厚め。
この鯛は、昆布〆でもなく、湯引きの皮付きで
どこの鮨やでもやっている普通の仕事。
かじき。
これは昆布〆。
最近、個人的には金沢、富山へよく行くようになり
あちら、北陸ではかじきをよく食べることを知った。
昆布〆にもするので、私には最早馴染み深い。
小肌。
うまい。
〆具合などは強くもなく、浅くもなくノーマルであろう。
毎度書いているが小肌というのは、
最も江戸前のにぎり鮨らしい。
味もそうだが、この皮目のある姿が、江戸前のにぎりとしては
最も美しい。
次は。
ほっき貝、であったと思うのだが、写真を撮り忘れた。
(五代目があとから指摘してくれた。)
やはり、種は多少酢をくぐらせていたと思う。
海老。
六代目は、さいまき海老です、といって
出してくれた。
むろん車海老だが、東京では小さいものを
さいまき海老といっている。
口に入れると、、、
ん!。
おぼろをはさんでいる。
おぼろというのは、江戸前仕事で使う、芝海老で拵えた
そぼろ。小肌などにもはさんでにぎる。
海老もほんのり、甘酢の味。
漬けているのであろう。
六代目に言ってみると、気が付いてもらえると
ありがたいです、とのこと。
これはやはり、昔からの仕事。
冷蔵設備もなく今のような、我国のおそるべき
魚のサプライチェーンが出来ていなかった頃の
魚をもたせる工夫がいうところの江戸前鮨の仕事。
酢で〆る。
昆布で〆る。
煮る。
茹でる。
漬ける。
など。
理屈をこねると、現代において
これにこだわる意味はあるのか。
このことである。
結局、どちらがうまいのか、である。
にぎりの鮨に使うさいまき海老の場合、
新橋の[しみづ]などもそうだが、
今のそこそこ以上の東京の鮨やは、
茹でたてを少しさましてにぎる。
今、車海老は、吉池などにも置いているが、
これらは、活(い)けのものである。
こういうものが手に入るのであれば、
これを茹でて粗熱が取れたところで
にぎるのがみずみずしく、あまく、おそらく、
もっともうまい。
一方で茹でたものも出回っており、これを
使っている鮨やもある。
これはご存知の通りパサパサで論外ではある。
店の格、価格、その他を考慮し、
鮨職人はどういう海老のにぎりにするのかを
決めるのであろう。
理屈をこねるとそういうことになるのだが、
しかしまあ、甘酢に漬けて、おぼろを
はさんでいたという、昔の姿を残す
ということもむろん、意味はある。
これが[弁天山美家古寿司]ということなのであろう。
もう少し、つづく。
断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5
|
2004 リスト6
|2004
リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10
|
2004
リスト11 | 2004 リスト12
|2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005
リスト15
2005
リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20
|
2005
リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006
6月
2006 7月 |
2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006
12月
2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |
2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月
2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月
2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |
2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |
2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |
2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |
2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |
2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |
2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |
2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |
2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月
2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2013 9月 |
2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015
1月 | 2015 2月 |
(C)DANCHOUTEI 2015