断腸亭料理日記2015

肉吸い?

4月18日(土)夜

先日「牛ぬき?」なるものを書いた。

東京のそばやで、天ぬき、鴨ぬきといって、
天ぷらそばのそばぬき、同じく、鴨南蛮のそばぬきを
肴に酒を呑む。

これが好きで、蕎麦やではよく頼むし、
家でも作って呑んでいる。

それで、これを天ぷらや鴨ではなく、牛肉にしてみた
のが「牛ぬき?」であった。

結果としては、脂も少なく、今一つ、ではあった。

するとこれを読んだいただいた大阪の方から、
大阪には、肉吸いというものがあり、これは
肉うどんのうどんぬきで、大阪ではポピュラーな
メニューであるとのことであった。

ほう。
大阪にも、同じようなものがある、というのは
少し驚き。

大阪で肉といえば、牛肉を指す。
あちらで肉うどんを食べた記憶は定かではないが、
甘辛く煮たものではなかったか。

調べてみると、肉吸いというのは、大阪難波、千日前の
「千とせ」といううどんやで、吉本新喜劇の花紀京が
二日酔いで軽いものがほしいと作らせたのがはじまりとのこと。
(ウィキペディア)

なるほど。本来は酒の肴でもないようである。
また、この店では今は人気メニューで、これに
玉子かけご飯を頼むのが、定番になっているという。
文字通り、吸い物、汁物として食べられている。

と、いうことで、本物は食べたことはないが、
この肉吸いなるものを作ってみようかと、思い立った。

大阪のうどんのつゆというのは、昆布と鰹か。

大きな鍋に昆布を普段よりも多く入れ、
軽く火を入れて煮立つ前にとめておく。


これで数時間置いておく。

夕方、ゆでうどんと牛肉を買いに出る。

肉吸いの前に肉うどんも食べようということである。
大阪なので、うどんは讃岐うどんのような生の腰があるもの
ではなく、ゆでうどん。

そして、肉うどんの牛肉は、細切れという。

それから、関西風なので青いところが多いねぎ。
九条ねぎなども売ってはいたが、普通のわけぎでよかろう。
ぬたも作れる。

帰宅し、牛肉細切れを煮る。
買ってきたのは、ちょっと安いアメリカ産のもの。
やはり、脂が多めの方がうまかろうと、牛肉売場に置いてあった
脂(ヘッド)も二つほどもらってきた。

甘辛という推測のもと、酒、砂糖、関西風にと思い、
濃口しょうゆは使わずに、薄口とたまりしょうゆ、ヘッドも入れて
煮てみた。


出汁の方。

昆布だしは十分に出ているようなので、引き上げて、
軽く煮立て、鰹削り節を加え弱火で3分ほど。



火を止めて、置く。




30分ほど置いて、濾す。

ここに薄口しょうゆと塩。

味見をしながら、、。


こんなものであろうか。

大阪といえば、とにかく昆布。
意図とすれば、昆布を主として、鰹従のつゆをこしらえてみた。

しかし、薄口しょうゆというのはおもしろい。
ただ濃口の色が薄くなったというのではなく、濃口しょうゆにはない
独特の香りと味、あまみのようなものがあるように思う。
これが、濃口しょうゆに馴染んだ舌にはちょっともっさりした
印象を受けることもあるのだが、先に煮た牛肉のような
甘辛く佃煮風に煮るものでは、この香りが意識されて名古屋以西の
味になるような気がする。

ゆでうどんを湯通しし、ねぎの青いところも切って
肉うどんの出来上がり。


肉をどのくらい入れればそれらしいのか、多少戸惑ったのだが、
このくらい。

それなりに大阪風らしい昆布出汁の強いうどんができているか。

このつゆで酒を呑むというのもあり、であろう。


ということで、翌日、文字通りうどんぬきの肉吸いで
呑んでみた。

うどんが抜けたので、肉を多くし甘辛のつゆも少し
入れてみた。

肉吸い、という言葉は、肉の吸い物ということ
でよいのであろう。

東京の天ぬき、鴨ぬきは甘辛のつゆに
脂が加わったうまさがポイント。

肉吸いの方は吸い物の椀種に牛肉を使うという
位置付けでつゆの味と牛肉は密接な関係はない
ということになろうか。

ともあれ。

むろんB級なのであろうが、肉吸い、なかなかおもしろい
ものである。
今度千日前の[千とせ]へいってみなくては。



 


 

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