断腸亭料理日記2014

とろろとそぼろ

9月12日(金)夜〜

今日は大阪出張。

東京駅、朝6時、のぞみの始発で行って、
19時頃帰ってきた。

普段であればどこかに寄って、なにか食べようと考えるのだが
疲れているせいか、そんな気にもらない。
あまり食欲も感じない。

どうしようか。
このまま真っ直ぐ帰るか。

帰るにしてもなにを食べようか。

そうだ。
とろろ、などはどうであろうか。

食欲がなくともするすると入る。
むろん、酒の肴にもなる。

食べるものが決まると、不思議なもので、なんとなくまた
食欲が湧いてくる。

では、どんな、とろろか。
そう、池之端[藪蕎麦]の「すいとろ」という、酒の肴用のとろろが
好きなのだが、あんなのがよい。
 
いつも家でとろろを作る場合には安い長芋で、
これをおろして、濃いめに取った鰹出汁で割って全卵、酒、
しょうゆで仕上げる。

別段まずくはないのだが、藪蕎麦の「すいとろ」となると
ちょっと違う。
 
長芋ではなく、味が濃く粘りがある大和芋を使わねばならない
ように思われる。

出汁の方はどうか。
これは逆に[藪蕎麦]であるからそばつゆで割ればOKなのではなかろうか。
それならば、家にある「桃屋のつゆ」ですむぞ。
簡単ではないか。
(今までまったく考え付かなかったのが間抜けなくらいである。)

余談であるが「桃屋のつゆ」のこと。

いわゆる麺つゆというのは、拙亭では「桃屋のつゆ」に決めている。

麺つゆなど、にんべんでも、キッコーマンでも、ヤマサでも、
ヤマキでも、各社たくさん出ているが「桃屋」でなくてはいけない。

家で乾麺を茹でたざるそばのつゆでも、
天ぷらの天つゆでも、なんでも「桃屋のつゆ」一本。
東京下町の濃いつゆの味に限りなく近いように思うのである。

なぜであろうか。
キッコーマンもにんべんなども東京の老舗だが、
つゆに限っていえば圧倒的に「桃屋」がうまい。
味、香り、濃さ、、そのあたりが随分と違う。
家では他メーカーのものは、あり得ない。

つゆは、そんな存在だが、さらに余談だが、桃屋のこと。
桃屋といえば、三木のり平でお馴染み、
本来「江戸むらさき」「ごはんですよ」など
瓶詰の海苔の佃煮のメーカーであったと、思うのだが、
なにか不思議な存在というのか、ポジションが曖昧になった
ブランドではなかろうか。

今このあたりの海苔の佃煮なども、私も買わなくなっているし、
あまり店頭でも見なくなっているように思う。
また、その他にはお茶漬けに絶好だった、かなり塩気の強い
「いかの塩辛」。あるいは「メンマ」「ザーサイ」なども
よく食べていた記憶がある。
それから定番だった「花らっきょう」、忘れてはならないのは梅肉に
鰹節、昆布などが入った「梅ごのみ」。(ちょっとこれ、例の
「浦里」を彷彿とさせる。)これも好物であったが、やはり店頭であまり見かけない
のではなかろうか。

最近は「食べるラー油」なども出していたようだが、桃屋というのは
子供の頃、あるいはそれ以前から東京人が慣れ親しんだ味で、
祖父母の家の茶箪笥には「江戸むらさき」はきっと入っていたと
思うのである。
時代が変わっているということか。

ともあれ。

毎度のハナマサで、手のような形をした大和芋を買って帰宅。
 
長芋と大和芋はご存知の通り、ひょっとすると倍以上の値段の差がある。
しかし、粘りと味の濃さがまるで違う。

まずは表面の髭根をガスの炎で焼いて切る。

洗って、おろし金でおろす。
おろして受ける器は、あたり鉢。

粘りが強いので、長芋よりもなかなか骨、で、ある。

全部おろしたら、全卵を一つ割り入れて、よく混ぜる。

ここに味をみながら「桃屋のつゆ」を合わせる。

どうであろうか、この粘りの強さ。

味は、多少甘めに感じる。

かの、池之端の[藪蕎麦]の「すいとろ」の味がどうだったか。
もう少し甘味は少なかったようにも思われる。
(ただ、食べながら思い出していたのだが、
[藪蕎麦]の「すいとろ」はもっとゆるかったような気がしてきた。
これにさらに鰹出汁を入れるくらい、かもしれない。)

普段、自分で出汁を取って作っている長芋のとろろ汁も
よいのだが、味の濃いこれはこれで酒の肴には絶好。

いくらでも食べられる。

さて。

もう一つ。

日曜日の午後、やっぱり酒の肴に作った。
そぼろ。

卵黄を落としたのがポイント。


冷凍庫に凍っていた挽肉なので、詳(つまび)らかには
わからぬのだが、おそらく牛と豚の合挽きだと思われる。

解凍して、フライパンに入れ、酒、濃口しょうゆ、砂糖、さらに
今回は、佃煮系にはたまに使うが、たまりしょうゆも入れて、
煮詰める。

まあ、これだけ。

そぼろというのは、鶏あるいは、牛が一般的であろうが、
合挽きでも、豚のみでも私は好きである。

飯に掛けるにしても、生の卵黄をのせてからめて
食べるのがよい。

 

 

 


断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2013 9月 |

2014 10月 |






BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2014