断腸亭料理日記2014

高野豆腐

9月6日(土)

このところ、食べすぎ呑みすぎ。
(まあ、中身は仕事上のことなので、
ここに書くべきことは何もないのだが。)

なにを食べようか考えて、高野豆腐を
思い付いた。

高野豆腐というと、以前、まだ30代のころであろうか、
この日記にも書いた記憶があるのだが、なぜこんな食いものが
世の中にあるのかまるでわからぬ、と思っていた。

油っ気もなくて、それ自体では味もあるのだが
ないのだが、食感もスカスカしていて、
栄養もあるのかどうなのか。
(栄養は豆腐を干したものであるから、
それなりにはあるのであろうが。)

それが自ら食べようと考えたのは
我ながら驚きである。

そう回数が多いわけではないが、京会席料理
などを食べていると、芋茎(いもがら)であったり、
薄味の野菜の煮物などがあって、そういうものの
味も経験し、うまいものであると、わかるように
なったからなのであろう。

高野豆腐というのもそうだと思うが、
ポイントはまず、出汁(だし)ということになるのであろう。

高野豆腐を買いに出る。

高野豆腐というもの、見たことはあるが
買って料理をしたことは、そういうわけで
ほとんどなかったのだが、今は一口に切ったものが売られている。
袋入りのものを一つ。

作る。

まずは、出汁を取る。

とにかく濃い出汁であろう。

鍋に水を張り、水洗いをした昆布を三枚。
いつもの三倍である。

火をつけて沸騰する前にとめてしばらく置く。

30分ほど置いて、昆布は引き上げるが、
むろん捨てない。

佃煮というのか、塩昆布にする。

かたわらの小鍋に酢としょうゆを入れて
昆布は一口に切って、煮る。

柔らかくかつ、汁(つゆ)が煮詰まれば出来上がりである。
これがなかなかのよい酒の肴になる。

さて。

出汁の方。

昆布を引き上げたら、鰹削り節をこれも、
ドサッと、投入。

再点火してして沸騰したところで火をとめて
再びしばらく置く。

またまた30分ほど置いて、濾す。

さて、これで出汁が取れた。

金色のなかなか濃い色がついている。

買ってきた高野豆腐の作り方を読むと、
戻す必要はなく、乾燥しているものを、
そのまま煮ればよさそうである。

問題は、汁(つゆ)の味付けである。

京風に薄口しょうゆでもよいのだが、
やはりここは、東京風に濃口しょうゆの甘辛に
しよう。

日本橋弁松の例を引くまでもなく、
東京には東京の煮物の味の伝統はある。

あそこまで濃い甘辛でなくともやってみようか。
濃口しょうゆ、砂糖、酒で味付け。

煮立てて味見。

いつも作る煮物の味付けよりは、甘辛は薄め。
むろん、出汁が濃いのでこれで十分か。

高野豆腐を入れて、煮る。

なるほど、汁に入れるとすぐに戻る。

汁が染みればよいのであろう。

OK。

火をとめて置く。

さて。

これで出来上がりだが、やっぱり高野豆腐だけでは
さびしい。

この汁で、にんじんを煮ようか。
会席料理などではよくにんじんの煮たのは
添えられている。

この甘辛の濃い出汁でにんじんを煮れば
うまいのではなかろうか。

にんじんは皮をむいて早く煮えるように
薄めに切る。

会席風に花の形に飾り切りでもできればよいのだが、
そんな技はないので丸いまま。

高野豆腐を汁からあげて、にんじんを入れ煮る。

柔らかくなればよいだろう。

盛り付け。


彩りからすれば、これにさらに緑のきぬさやでもあると、
それなりに見えるのであろう。

食べてみる。

いや、これ、うまい。

やはり出汁の威力なのであろう。

甘辛はさほど濃い味にはしなかったと思うのだが、
驚くほどうまい。

にんじんもよい。

高野豆腐であるが、いくらでも食べられる。

ちょっと驚き、である。





 


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