断腸亭料理日記2014
9月23日(水)秋分の日 第一食
萩を見に行くや彼岸の渡し舟 子規
お彼岸である。
週に一回は栃木の工場へ行っているが、
あちらでは稲刈りが始まり、萩が紫色の花をつけている。
私など、生来風流など解さぬ人間で、
山吹といえば、落語の「道灌」。
萩といえば、花札で、イノシカチョウ、ぐらいしか
連想が働かなかった。
年を取り知識が増えたせいか、
萩の花が咲いているぐらいのことは、わかるように
なってきた。
冒頭の句は実際の場所はよくわからぬが、もしかすると
柴又から松戸へ渡る、矢切の渡し、あたりではなかろうか。
彼岸と舟が掛かっているのであろう。
なんとははなしに、しみじみとする句ではある。
私の住む浅草は寺町で春も秋もお彼岸の
中日には、墓参の人々が街中にあふれる。
しかしやっぱり私はというと、墓参りはさておいて、
今日もそうなのだが、お彼岸で涼しくなってくると、
毎年食べたくなるのは、マカロニグラタンなのである。
コンビニやスーパーでは9月に入ると、おでんや鍋物の
販促を始めたりするが、人間というものは不思議なもので本来は
冬食べるものではあるが、涼しくなった今頃、
こういものを食べたくなるものである。
レシピを調べていると、シェフのレシピというので
かの日本橋の老舗洋食店[たいめいけん]の若旦那のものが
見つかった。
これが斬新。
いや、プロの間では当たり前のものであったのか。
普通は小麦粉を炒めてベシャメルソースを作って、、
と、始まるのだが、そうではなく、先に具材を炒め、
ここに直(じか)に小麦粉を入れてしまう。
これが早くできるし、かつ、ダマにならないのだ、という。
他のものには転用はできないが、マカロニグラタンだけ作る分には
なんら問題はない。
買い出し。
鶏肉、冷凍海老、マカロニも切れていた。
リガトーニという太いものが安かったのでこれ。
牛乳と生クリーム。
帰宅。
冷凍海老は、若旦那のレシピでは塩水で解凍という。
水分が逃げないということか。やってみる。
次に玉ねぎを一つザクザク切る。
これをローリエとともに60gのバターで炒める。
分量は4人前。
珍しく、きちんと量(はか)る。
同時進行で牛乳400ccを温める。
(これは沸騰前にとめておく。)
玉ねぎがしんなりしてきたら、一口より小さ目に切った鶏肉、
解凍した小海老を入れる。
鶏肉に火が通ったら、ちょいと火を止めておく。
ここに、無謀にも小麦粉を入れる、のである。
(これでダマにならずできてしまうでのあれば、
一体今まで、乾煎りしたり、バターでサラサラになるまで
炒めていたのはなんであったのか、ということになるぞ!。)
小麦粉60g。
ふるって、用意。
再点火し、小麦粉を投入。
木べらで手早く混ぜる。
この時点では、むろん、ダマはあるぞ。
これでほんとうにダマにならないのか?。
「水分がなくなったら」温めた牛乳を「3回に分けて」
混ぜながら入れる。
混ざってはきたが、、、、。
牛乳を全部入れ、混ぜ終わったが、、、う〜む。
確かに、ダマにはなっていない。
さらに、生クリームを400cc。
牛乳と同量なのだが、買ってきたのは200cc入りなので
200ccは牛乳を再度温める。
引き続き、混ぜながら入れる。
なんだか、ダマもない具入りベシャメルソースが
できてしまった。
マカロニを茹でて、合わせ、塩胡椒をし、味見。
なんだか大丈夫そうである。
味を決め、耐熱皿に移す。
パン粉、パルメザンチーズ、バターをのせる。
あとはオーブントースターで焼くだけ。
まさか、これで焼いたら、小麦粉団子になってました、
なんという悪夢のようなことになるのではあるまいな。
(かなり初心の頃に、こんな経験もしている。)
高温で10分。
うまそうに、こんがりと、団子にもならず、焼き上がっている。
ビールを抜いて、食べる。
まったくもって、大丈夫。
うまいマカロニグラタン。
どうしてこれで、できるのだ。メカニズムは?
もしかして、知らなかったのは私だけ?!。
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