断腸亭料理日記2014
5月22日(木)夜
今日は一日、オフィス。
夕方から、なにを食べようか考えていて、
季節もよい、久しぶりに駒形のどぜうやへ行こうと思いついた。
決めたら、なんだかウキウキしてきた。
[駒形どぜう]は元浅草の拙亭から真っ直ぐ東、
隅田川の方へ歩いていけば、10分くらいであろうか。
この前の日曜日、三社祭の見物に行った時も
通りかかった。
店のそばへ行くと漂ってくる、あのしょうゆとねぎの匂い。
堪らないものがある。
大江戸線、拙亭最寄りの新御徒町から一駅先、
蔵前までいって、降りる。
地上に上がると、、、ウワッ、なんと、土砂降りの雨。
地下鉄に乗る数分前には妙な風は吹いていたが
まさかこんな土砂降りになるとは、思いも付かなかった。
大江戸線の蔵前駅から[駒形どぜう]までは
ものの五分である。
上がってすぐのコンビニでビニール傘を買って、歩き始める。
しかし、数10m歩く間に、もうだめ。
雨が激しいだけでなく、風も強い。
まさにバケツをひっくり返したような雨が
横殴りに叩きつけてくる。
蔵前通りの銀行のATMが開いていたので、
しばし、雨宿り。
5分ほど。これはとてもすぐにはおさまりそうにない。
[どぜう]は、もう目の前。
意を決して、出る。
うぉ〜〜〜。[どぜう]に駆け込む。
上着からズボンから、鞄からもうずぶ濡れ。
なんだか、どぜう決死隊といった、有様である。
下足のお兄さんも気の毒そうな様子。
ともあれ、たいへんなことになってしまったが、
なんとか[どぜう]にありつけそうである。
お膳がわりの桜の一枚板が並ぶ入れ込みの大座敷、
案内された場所に濡れてしまった上着を脱いで、
ズボンも濡れてしまって多少気持ちがわるいが、
まあ、それよりも[どぜう]の方が今は、大事。
座って、とにもかくにも、ビール。
それから、丸鍋、丸鍋。
もう、これしかない。
着物姿の若いお姐さん(お嬢さんか)に頼む。
(そう、この店はいつも皆、若いのである。)
すぐに、くる。
待ってました、丸鍋。
ここの品書き上の名前は、どぜうなべ。
丸のままなので、通称、丸鍋、なのであろう。
開いたものもあり、若い頃には丸の鍋は、
やはり苦手で、開いたものを食べていたのだが、
いつの頃からか、丸鍋でなければ、だめになった。
ねぎ。
もうこれを山盛り鍋に載せる。
どぜうを食べているのか、ねぎを食べているのか、
わからぬくらいだが、ここの割り下で煮たねぎは、
滅法うまいのである。
ねぎが煮えるのが待ちきれず、どぜうから。
わたしは、山椒も七味もかけない、そのまま。
ここのどぜうは、むろん下拵えが既にされており、
すぐにでも食べられる。
なんでも味噌で煮ているという。
ねぎも煮えてくる。
ここからは、ねぎ中心。
煮ては食べ、食べては煮る。
うまいうまい。
ビールはスーパードライ。
これもうまい。
一枚食べ終わると、お姐さんに、
丸鍋、お替り!。
そして、お酒も、冷で。
この猪口がよい。
かわいい将棋のこまの中に、どぜう。
駒形どぜう、の、洒落、であろう。
粋なものである。
どぜう、ねぎ、どぜう、ねぎ、どぜう、ねぎ。
まことにもって、堪えられないうまさ、で、ある。
食べ終わり、お勘定。
ここも座って勘定をする。
勘定をすると、下足札の裏が、代済、に、なる。
うまかった、うまかった。
ご馳走様でした。
お姐さん達が、ありがとうございます〜。
濡れ鼠になったことなど、すっかり忘れてしまった。
むろん、雨も嘘のようにやんでいる。
幸せな気分で、ぶらぶら帰宅。
台東区駒形1-7-12
TEL.03-3842-4001
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