断腸亭料理日記2014
7月27日(日)夜
隅田川の花火大会も終わって、
浅草も祭の後。
通りに多少のゴミも散らかる、少し静かで気怠い日曜日。
夜は、内義(かみ)さんが、[すぎ田]のロースソテーが
食べたい、というのでいくことにする。
[すぎ田]というのは浅草寿町にある、とんかつや。
まあ、有名店といってよろしかろう。
数年前に代替わりをして
今は若主人が頑張っている。
とんかつや、なのであるが内義さんはどういうわけか
ここでは、ロースソテーと決めている。
(むろん、ロースソテーもうまいのだが。)
6時半に予約し、15分ほど前に出る。
白いポロシャツに短パン、
足元は雪駄といういつもの格好。
[すぎ田]までは実際には徒歩で10分もかからない。
元浅草の拙亭から真っ直ぐに
東に歩き、新堀通りを越えて、
寿町、台東区の南部出張所の前を通って、国際通りに出る。
国際通りを向こうに渡って右、春日通り方向に国際通りを
歩いて、交差点の手前、左側。
黒基調の落ち着いた店内。
先客がカウンターに二組ほど。
名前をいうと、カウンターの真ん中へ案内される。
カウンターはとんかつやらしく、磨きこまれた、白木。
座って、瓶ビール。
いつも頼むものは結局同じ。
ロースのとんかつと、海老フライ、内儀さんのロースソテー。
ビールを呑みながら、待つ。
毎度書いているが有名なご主人の後を継いで
店をやっていく、と、いうのは、たいへんなことであろう。
そうだ。
違いというと、TV、がなくなっている。
カウンター中央の調理場側に大きな揚げ鍋が、
油の温度違いで二つあり、その向こうに若主人。
その背中側に、TVが壁に埋め込まれるようにして
あったのである。
先代の主人は時折それを視ていたし、むろん、
我々客も、視るとはなしに、視てはいた。
若主人になってからである。
そのTVがなくなって、TVがあったところは、
カーテンで覆われている。
代わりに店内には、JAZZのような音楽が控えめに
流されている。
ロースのとんかつから、きた。
そうそう。
これも若主人になって変わったことである。
一切れの切り方が、薄くなっているように思えるのである。
内儀さんに言ってみると、やっぱり同じような印象を持っている。
試みに、この日記で、写真が残っている、一番古いものを
捜してみた。
2006年、先代のもの。
いかがであろうか?。
目に見えて、違うかというとそうではないのだが、
それでも1mm程度は薄くなっているのではなかろうか。
切る方とすれば、薄い方が難しいのであろう。
しかし、もう少し厚くてもよいと私は思う。
肉の味をしっかり味わえるように思う。
実は、若主人の今の包丁の切れ味、切る技術は、先代の晩年と比べると
格段に鋭い、のである。
切り口鮮やか、シャープに切れているので
実際の寸法以上に薄く感じられる、ということは
あるように思われる。
海老フライ。
これは、若干、揚げすぎ?。
もう少し、プリっと感が欲しいと思うが
いかがであろうか。
内義さんのロースソテー。
ご飯ととん汁。
これは変わらずうまい。
ご馳走様でした。
お勘定をして出る。
段々に先代ではなく、若主人の店になっていく
のであろう。
先代の味、若主人の色。
どんな風になっていくのか。
今度いったら、気持ち厚く切ってって、
言ってみようかしら。
すぎ田
TEL03-3844-5529
台東区寿3丁目8−3
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