断腸亭料理日記2014
2月1日(土)第二食
さて。
肉じゃが、で、ある。
肉じゃが、なんというとおふくろの味の代表のように
いわれるが本当に皆、そんなことを思っているであろうか。
大体において、おふくろの味、と、いうもの、
なんとなく私にはしっくりこない。
子供の頃、私はまあ、身体も丈夫な方ではなく、
食も細く、痩せていた。
だからなのであろうか。
あまり食事をうまいと思って食べたことがなかった。
(原因と結果が逆かもしれぬが。)
また、成人してふり返って見て、私の母親という人は
料理が、下手、いや、あまり好きではなかったのでは
ないかと思われる。
だから、うまいと思うことがなかったのか、、、。
まあ、これはわからぬが、家の食卓に登った料理で
思い出すのは、どちらかといえば、父親や祖父母が
食べたいと言って母親が作った、小松菜の煮びたしだったり
東京下町の味である。
そんなことで、私にはおふくろの味というものが
ピンとこない。
高校を卒業して、筑波にある大学に行くので家を出たが
学生時代、むろんせざるを得ないのもあるが、それ以上に
自分の食べたいものを作ろうと考えて、料理は趣味になった。
母親が作ったものがうまくなかったから、自分で
料理をするようになった、といえるようにも思う。
ともあれ。
肉じゃがも、子供の頃にはあまり食べた記憶がない。
出てきたかどうかすら憶えていない。
さて。
肉じゃがというのはいつ頃からある料理なのか。
肉食が一般化したのは明治以降で、じゃがいも
(馬鈴薯)も一般化したのは、北海道の開拓とともに
栽培されるようになった明治以降。
必然的に肉じゃがを食べるようになったのは明治以降と
いうことになる。
一説には、もともとは海軍だったり、陸軍だったりの
軍隊食から始まっている、という。
また、一方で、明治になり牛鍋(後のすき焼き)が一般化する中で
ここにじゃがいもが入り、東日本では牛が安い豚に替わり、
肉じゃがになったという、いわば一般から始まった
という説もあるようで、定かではないようである。
また肉じゃがという名称も、明治や大正の頃は
“肉と馬鈴薯の甘煮”なんという名前であったようで、
一般化したのは、澁川
祐子氏によれば、
戦後、昭和40年代後半から50年代前半頃という。
私らの子供の頃ということになる。
この人の考察によれば、この頃ハンバーガーなどの
ファストフードが出始め、これに対して、おふくろの味、
なる言葉がいわれるようになったのもこの頃で、その代表として
同時に、肉じゃがという名前も一般化したのではないか、
ということである。
私が肉じゃがを意識して食べたのは内儀(かみ)さんと
結婚をしてからである。
うちの内儀さんは、北海道の出身で、当然じゃがいもには
馴染みが深く、今でも毎週のように肉じゃがを作っている。
肉じゃがは、関西では牛を使うが、東日本では豚を使う。
内儀さんも豚で、私が馴染みが深いのも豚、で、ある。
今日、昼下がり、なにか酒の肴を作ろうと思い立ち、
冷蔵庫をのぞくと、先週買った豚こま切れが余っており
そろそろアブナイ頃。
食べてしまおうというので、味を濃く作れる、
肉じゃがにしようかと考えた。
じゃがいもの皮をむいて、四つ程度に切る。
あとは豚肉と煮るだけ。
出汁などは取らない、水だけ。
しょうゆ酒、砂糖。
甘辛の濃いめ。
アルミホイルで落としぶたをして、じゃがいもに火が通れば
出来上がり。
煮え立てのほくほくした甘辛のじゃがいもはうまいもの、
である。
昼間っからビールでこの皿に二杯食べてしまった。
基本、コツもなにもなく、誰が作っても、砂糖と塩を間違える
くらいのことをしなければ、食べられるものができる。
濃い薄いの味付けは、むろん各自の好み。
野菜では、玉ねぎ、にんじんを入れる、
すき焼きからの流れなのであろう、白滝などを入れる
というものもあるかもしれない。
私の好みとしては豚肉とじゃがいもだけで十分。
しかし、考えてみると、肉じゃがというのは、
意外に完成されている料理なのかもしれない。
芋は、里芋でもさつま芋でもなく、じゃがいもでなければ
ここまでうまくはなさそうである。
肉(牛でも豚でも)とじゃがいもの、煮込んだ場合の相性がよいの
かもしれない。(カレーもそうであるし、イタリア風にじゃがいもを
挽肉、トマトで煮込んでもいける。また、以前に鶏もも肉とじゃがいもを
白ワインで煮込んだことがあるが、これもうまい。
じゃがいもは煮込み料理に合って、油(脂)との相性がよいということ
かもしれない。)
簡単で、誰でもそれなりにうまいものが作れて、
飯のおかずはむろん、酒の肴にしてもわるくない。
嫌いという人も少ないであろう。
おふくろの味かどうかはわからぬが、
ごく平均的な日本人の普通の食卓のうまい超定番簡単料理、
ということであろう。
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