断腸亭料理日記2014
4月8日(火)夜
さて。
火曜日。
昨日は長ねぎでぬたを作ったが、ここからの連想で
俄(にわ)かに“のびる”で、ぬた(酢味噌和え)が食べたくなった。
“のびる”というのはご存知であろうか。
山菜というよりは、野草といった方がよいか。
小さいが、味はエシャロットにかなり近い。
私が子供の頃には、まだ東京でも土手のようなところで
よく採れたものであった。
祖母もいた家であったからか採ってきたものが食卓に並んでいた。
“のびる”は年中食べられるようではあるが、時期はやはり今頃、
食べていた記憶がある。
(ひょっとすると、今でも探せばあるのかもしれぬ。)
少し前に秋田のものをデパートで見つけ、やはり酢味噌で食べている。
野草、山菜というと、ふきのとうも時期である。
甘い味噌で煮たもの。
これも、子供の頃、同様にこの時期食卓に登っており、
懐かしい味、で、ある。
ふきのとうも探してみるか。
帰り道、上野の松坂屋に寄ってみる。
う〜ん、ふきのとうはあるが、さすがに、ピンポイントで
のびる、というのは置いていない。
が、代わりに、島らっきょう。
島らっきょうは沖縄のものだが、最近は東京でも
見かけるようになった。
らっきょうという言葉が名前に入っているが、
やはりのびるぐらいの大きさで、かなり近いものである。
のびるのかわりとして、これで十分であろう。
ふきのとうもあった。
やはりこちらは、春の山菜とすれば一般的なものであろう。
ぬたに入れる魚介類は、ほたるいかがよさそうだ。
購入。
御徒町駅前から錦糸町行のバスに乗って帰宅。
泥も付いているのできれいに洗って、
ひげ根を切り取り、枯れかけた葉っぱも取る。
けっこうな量があって、手間である。
こんな感じ。
全部ではさすがに多かろう。
半分。
生でもむろんよいのだが、やはり少し辛く、ヘビーである。
湯通しをしよう。
薬缶でお湯を沸かす。
長いので、半分ほどに切り、根本部分と葉っぱ部分に分け、
根本部分からざるに入れ、沸騰したお湯をかける。
ある程度かけたら葉っぱ部分もざるに加え、さらに熱湯をかける。
手で触りながら、火の通り具合をみる。
よいものは冷水へ。
硬く熱の通りの足らないものは、再度お湯をかけ、冷水へ。
OK。
ざるにあげておく。
ふきのとうは洗って色のわるい葉を取る。
薬缶の湯が余っていたので、鍋に入れ、ふきのとうを湯がく。
色が変わったら、あげて冷水に放し粗熱を取り、
細かく切る。
芯の堅そうなところは取り除いておく。
鍋に切ったふきのとうを入れ、酒、味噌、この味噌は
普通の信州味噌、砂糖を加える。
ふきのとうはご存知の苦味があるので、砂糖は少し多め。
料理とすれば、なめ味噌の類に入ると思うが、
甘めの仕上がりがよかろう。
軽く煮詰め、味見。
これも水が出てくるので、適当にやめる。
ぬたの酢味噌。
今日は、信州味噌と八丁味噌を合わせたものにする。
島らっきょうが“野”のものなので、強い味がよかろう。
白味噌の酢味噌の場合は砂糖は入れないが、この組み合わせには
砂糖が必要である。
ほたるいかは洗って水を切る。
盛り付け。
島らっきょうとほたるいかのぬた。
ふきのとうの甘味噌煮。
この二品、なんといったらよいのであろうか。
むろん最初から意図して作った二品だが、どちらも
かなりのクセがある。
島らっきょうは湯通ししているが、辛みと独特の刺激性の香り。
ふきのとうはなんともいえない、苦味にエグミを加えたような
あの味に加えて、鼻に抜けるような香り。
むろんたくさん食べるものではない。
この量でも多いくらい。
まさに大人の味。
野の、味。
酒の肴としてもかなり上級ではなかろうか。
子供の好きなものではないし、なぜこんな妙な味のものを
食べるのか、とも思えるが、大人になり酒を呑むようになると
こういうものが食べられるようになり、クセになり、
さらには、時として、食べたくなってくる。
不思議といえば、不思議。
奇怪至極(きっかいしごく)であろう。
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