断腸亭料理日記2014

上野・“洋食”・ぽん多本家

4月9日(水)夜

さて。

今日は、上野の[ぽん多本家]へいく。

[ぽん多本家]といえば、明治38年の創業で、
上野のとんかつご三家の一角。

池波レシピでもあり、
むろん私もなん度もきているが、
今日は、とんかつが目当てではない。

この前のアド街にも出ていた。
ここはもちろんとんかつが有名だが、
洋食や、を標榜しており、
ビーフシチューだったり、揚げ物以外も数は多くないが、
メニューにはある。とんかつも、メニューの名前はカツレツ、
で、ある。

また、魚介のフライもなん種かあり、
イカフライなどは有名である。

で、今日は蛤。

以前にきたときに、お通しに蛤のフライがうまかった
覚えがあった。
ただ、メニューにはフライはなく、
「バタヤキ」。

今日はこれを食べにいこうというのである。

フライもうまかったが、
バタヤキにするくらいであるから、そこそこ以上の
大きさの蛤なのであろう。

大きな蛤、と、いうだけでちょっと
私は食べてみたくなる。

大江戸線を上野御徒町で降りて、
松坂屋前を南に下り、中央通りを渡って、松坂屋の一本先を
左に入って、左側。

木製の重い扉を開けて入る。

入るとちょっとアンダーな照明ですぐに
カウンターがあって、その向こうは調理場。

二階はテーブル席。

一人、と、いって、開いていたカウンターの
真ん中に座る。

やっぱりビール。

そして、はまぐりバタヤキ、3240円也、を頼む。

キリンの中瓶。


お通しは、いか下足と菜の花の辛子じょうゆ。

このいか下足は、すみいか、あるいは、もんごういか
のものか。

いかのフライがうまいと書いたが、
その下足かもしれぬ。

目の前は調理場なのだが、調理場との間の仕切りは
少し高く、座っていると、料理をしている手元は見えない。
あえてそういう造りにしているのであろう。

ただ、カツレツを揚げているのは音が聞こえてくるので
わかる。

やはりほとんどの注文はカツレツのようである。

そう。
ここは静かである。

調理場には3人。

むろん無駄話をするわけもないが、
浅草六区の洋食や[ヨシカミ]だったり、活気があって、
フライパンを振る音などでにぎやかなところも
あるが、ここの調理場はとても、もの静か。

と、いったところで、バタヤキがきた。


ほう、こういうものか。

カツレツはむろんつけ合わせはキャベツの千切りだが、
これはレタス。

はまぐりバタヤキは六個並んでいる。

味は?。

ん!。

これはこれは、うまいぞ。

なにか、小麦粉であろうか、粉をふって焼いてあるような食感。

バターとしょうゆであろうか、濃厚な味付け。

そして蛤自体は、中は半生。

まったく初めての味である。

蛤というのは、意外にも思えるのだが、旨みは
濃厚で、バタの濃厚な味と調和して、得も言われぬ。

食べ終わってしまうのがまったく惜しい。

ビールを呑みながら、レタスをつまみ、
蛤バタヤキをじっくりと味わう。

しかし、バタヤキというメニューの名前もまた、
よいではないか。

我々の子供の頃は、まだ、あった言葉である。
確か、人形町の洋食や[小春軒]にもカジキバタヤキなどがあったっけ。


うまかった、うまかった。

蛤をバターで焼いたものを食べたのは
初めて、で、あるが、私自身、近年食べたものの中でも
これは記憶に残る味、で、ある。
間違いなく。

これだけの大きさの蛤、安くはないが、
ちょっと他にはない、うまい料理である。

ご馳走様でした。


台東区上野3-23-3
03-3831-2351

 

 



 


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