断腸亭料理日記2013

すみいかと中トロのにぎり鮨

その2

9月16日(月)第二食

引き続き、すみいかのにぎり鮨。

酢飯の粗熱が取れたら、握り始める。

あまり知られていないことかもしれないが、
にぎりの鮨、というのは、冷えたものではなくて、
ほんのり温かい酢飯でにぎるのがほんとうである。

にぎりが温かいといって、文句をいっている若い人を
見たことがあるが、酢飯は人肌程度の温かさのあるものなのである。

今でも江戸前を標榜する東京の鮨やでは、
酢飯を入れたおひつを藁(わら)で編んだ保温用の
ふた付きの籠のようなもの

(これはワラビツ、ワライズミ、フゴ、イイヅメ、ツグラなど
地方によって呼び名が違うよう。つまり以前は一般の家庭でも使われていたもの。
東京ではワラビツ(藁櫃)が一般的か。)

に入れているところが少なからずある。

完全に冷えてしまうとにぎれないということもあろう。

種も冷蔵ケースから出してすぐ冷たいままにぎるのではなくて、
常温にしばらく置いてにぎるところもある。

温かすぎるのもいけなかろうが、にぎりにするには、
ほんのり人肌がベスト。

にぎる前に準備。

種、わさび。

それから手を湿らせるための酢を用意。

今までは水で湿らせていたが、先日、日本橋吉野鮨で、親方の手元を
見ていたら、小さなボールに入れた酢らしきもの、で手を
湿らせているように見えた。

水を使うと、水気が酢飯に移って水っぽい感じになっていたのである。

手をきれいに洗い、酢を少し手につけ、酢飯を左手のひらにのせる。

この時、手に取る酢飯の量が問題。
今日の切ったすみいかの大きさに合わせたにぎり一つ分の量。

むろん一回でちょうどよい量にはならないので、なん度か調整。
これを一度、軽くにぎって形にする。

形になった酢飯の上にわさびを塗ったすみいかをのせ、再度にぎる。

酢飯を手に取る前に、種にはわさびを、塗っておかなければ、
ならない。でなければ、一度にぎった酢飯を置かなければならなくなる。

まあ、文章で書くとこういうことだが、実際にはどうしてどうして、
そうそうきれいににぎれるものではない。

まあ、私のようなものがそう簡単ににぎれてしまえば、
鮨職人などいらなくなってしまうが。

プロのにぎり方そのものも、本手返し、縦返し、小手返しなど
いろいろあるようで凝れば難しそうである。

また、表面をかためて中はふんわり、というのがベストで、
こうにぎれると、口に入れた時に、酢飯がほどけて種と渾然一体となり、
うまいにぎりずしになる、という。
(なんというのも、トウシロウの芸当ではない。)

一先ず4個にぎって皿にのせる。

まあ、こんな感じ。

どうしても飯粒が凸凹になり、きれいな表面にならない。

急いで中トロもにぎる。

すみいかから食べる。

おお、これはこれは、うまいぞ。

すみいかの表面に歯が当たるとサクッと入り、
その後、柔らかくかみ切れる。
うま味というのか、あまみも十分。

8月あたりに出てくる、もっと小さい新いかといわれるものだと
最初の歯あたりがもっと柔らかく、また、ほんのり、独特の
香りがある。

そこまではいかないが、十二分にうまい子供のすみいか。

そして、なによりやはり、すみいかは、酢飯との相性である。
魚介類はなんでもかんでも、にぎり鮨にしてうまいかといえば、
そうでもない。
刺身で食べた方がうまいものもあるし、酢飯とにぎった方がうまい
ものもあるし、また、どちらもうまいものもある。
(人によって好みがあるので、なんともいえないが、例えば
私は、鰹などは、にぎるよりも刺身の方がうまいと思われる。)

すみいかの場合は、やはり、刺身で食べるよりも
にぎりの方が断然うまい。
酢飯との相性がよい種であろう。(穴子、小肌などもそうだと思われる。)

中トロ。

これもなかなか。

切りもせず、にぎっただけだが、うまい。

中トロというのはそのまま刺身で食べてもうまいが、
にぎりにしてもやっぱりうまい。
(細かくいえば、にぎりはまた別の味になり、うまいのだが。)

[吉池]のマグロはやはり、なかなかうまい。

さて、
おまけ。

この日食べたもの。

もうそろそろ、季節も終わりか、谷中。


枝豆。


じゃこ天。

これ、好物かもしれない。
[吉池]で買ったが、青魚などで作った黒っぽいさつま揚げ。
静岡だと(なぜか)黒はんぺん、四国、九州にも近いものがあり、
こちらは、じゃこ天という。
オーブントースターで軽く炙って、しょうゆかけて。

かんぱちのアラの塩焼、たっぷりの大根おろしで。


かんぱちのアラも、脂がある。
やっぱり[吉池]のものだが、安くて、ばかうま。

台風一過、今日は、充実の食卓、で、ある。

 

 







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